「【平和な島に現れた”ノイズ”が、島に内在していた多数の”ノイズ”を表面化させていく様をミステリアスでサスペンスフルに描いた作品である。”真の底知れぬ恐ろしさを秘めたノイズ”は、何であったか・・。】」ノイズ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【平和な島に現れた”ノイズ”が、島に内在していた多数の”ノイズ”を表面化させていく様をミステリアスでサスペンスフルに描いた作品である。”真の底知れぬ恐ろしさを秘めたノイズ”は、何であったか・・。】
ー 島の復興を託された男、圭太(藤原竜也)が栽培する、黒イチジク畑に現れた人間の屑(渡辺大知:こういう狂気的な役もそつなくこなすなあ)。
彼は、自らの保護司を殺害し、あてもなく島を彷徨う。
屑が辿り着いたのは、圭太の黒イチジクのビニールハウス。
そして、偶発的に起きてしまった殺人。
それに関与した、親を台風で亡くした、圭太、純(松山ケンイチ)、真一郎(神木隆之介)の幼馴染の三人。
ノイズは、徐々に、不穏に、音もなく、島全体に広がって行く・・。-
◆感想
・”犯罪など起きた事がない”と、誇らしげに言う猪狩島町長(余貴美子)。
彼女は黒イチジクにより国の交付金5億円を島の復興のために当てにしている、ワンマン町長である。
- 彼女が、部下に対する接し方。完全なパワハラである。島に内在していた”ノイズ”の一つである。-
・偶発的に起きてしまった殺人の際に、”正当防衛”として自主しようと言った、夢であった島の駐在員真一郎を止めたのは誰であったか・・。
ー 状況的には、正当防衛が適用され、圭太は傷害致死で実刑が付くが、執行猶予も付き、刑務所に行くことは無かった筈と、私は判断した。それを殺人を隠蔽してしまった事で、圭太の罪は重くなる・・。-
・島民たちが、県警の畠山(永瀬正敏)と青木(伊藤歩)に反感を持っていく過程の中、圭太が死体を運ぶさまを見てしまった庄吉とその一家も隠蔽に加担していく。
ー ”ノイズ”の二つ目である。閉塞した空間に生まれがちな”ノイズ”である。-
・息子の真一郎を溺愛する、母(鶴田真由)。呵責の念で、悩んでいく真一郎。そして・・。
ー ”ノイズ”の三つ目である。無自覚に、人を追い込んで行ってしまう、哀しき”ノイズ”である。-
・危機的な瞬間に、常に圭太にアドバイスをしていたのは、誰であったか。躊躇なく町長をスコップで殴り殺したのは誰であったか・・。
ー 中学生時代に、現在の圭太の妻加奈(黒木華)を勇気づけていたのは、誰であったか・・。そして、その姿を遠目に見ていたのは、誰であったか・・。ー
<内在していた最大の”ノイズ”が明らかになるシーンのインパクトは大きい。
壁面に多数貼られていた加奈の写真の部屋で、パソコンを操作していたのは・・。
原作未読であったが、途中で”誰が圭太を、陥れたか・・”が分かってしまった作品。
それでも、ミステリアスでサスペンスフルな展開に、魅入られた作品である。>
■今作の島のモデルになった愛知県の篠島は、本当に良き所です。コロナ禍が、終息したら足を運んでみては、如何でしょうか・・。(観光課職員ではありません・・。)
NOBU様コメントありがとうございます。いや更新頻度が上がったのは理由がありまして・・・
ドライブ・マイ・カーを観てから色々考えてしまい、払拭しようとインプット、アウトプットしている次第です。今年のアカデミー賞は楽しみですね。
NOBUさん、情景が目に浮かび、香りまで伝わってくるお心優しいコメントありがとうございます。
残念がら私は、海、山共に縁がなく、たまに眺めるのは夕暮れの東京湾程度です。でも美しいですよ。
私は淀川長治氏を敬愛しており、淀川氏は映画を悪く言ったことがないんです。どうみてもつまらない
作品を、役者さんの演技、カメラアングル、音声、カット割を褒め称えたりする素晴らしい解説者でした。
幼少の頃本気で弟子入りしようと思ったくらいです。私には到底無理なはなしですが、どんな作品でも
敬意を忘れてはいけないと、思ってはいるのですが、難しいですね。
NOBUさんの深い考察力に、ただただ感心するばかりです。思わず唸ってしまいました。
ネタバレにはなっていないので、詳しく私見は述べられませんが、素晴らしいレビュー
です。
愛知県篠島ですか。劇中でも美しいところだと思っていました。機会があれば、一度
行ってみたいですね。