劇場公開日 2021年10月8日

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「一体、何と戦っていたのか」ONODA 一万夜を越えて 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0一体、何と戦っていたのか

2022年1月11日
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鑑賞方法:映画館

フィリピン・ルパング島のジャングルで30年間も潜伏していた小野田少尉の物語を、フランス人監督が、日本人俳優と日本語で映画化。3時間近い作品だが、全く飽きさせない。
小野田少尉が発見されたニュースは、小学生の頃に見たが、そこに至る経緯などは知らなかった。その前にグアムで発見された横井さんに続いて、日本の敗戦を知らずに生き残っている兵士がまだいたのかと驚いたが、特にその時の軍服を着てこわばった表情で敬礼している姿が強く印象に残っている。
映画化にあたって、アラル監督は、史実をベースに物語を再構築したようだが、もし日本人が作ったら、もっとウエットで、大和魂や武士道精神といった色が付きそうなところを、極めて淡々と、冷酷に描いている。
陸軍中野学校での上官からの命令を守り、ゲリラ戦を遂行するためだけに、田畑や家畜を襲い、時には住民を殺害して、とにかく生き延びようとする。父親からの呼びかけも謀略とみなし、逆に、秘密の暗号伝達かと考えて解読しようとする。
彼らは、一体、何と戦っていたのだろうか。
戦争の悲惨さ、不条理さというより、一つのことを信じ切った人間の恐ろしさ、凄まじさ、そして虚しさが、この作品のテーマであるように思う。不寛容、断絶が広がる現代社会に共通するテーマとして、日本人ではなくとも、この稀有な題材に惹かれたのだろう。ラスト、日本人の記憶にある敬礼姿ではなく、茫然自失とした姿で描かれているのも、そのことを強く感じさせる。
小野田少尉役の遠藤雄弥、津田寛治をはじめ、役者陣はみな良い。特に、イッセー尾形、仲野太賀は、他の役者では考えられないほど。
2012年は、MINAMATAとこの作品が公開された年としても記憶されるだろう。

山の手ロック