劇場公開日 2021年11月12日

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「【梅のタイトルから考えられること】」梅切らぬバカ ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【梅のタイトルから考えられること】

2021年11月23日
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僕の実家では、干さないで梅漬けを作っていた。梅酒も作っていた。

実家に梅の木はなかったが、亡くなった父が毎年大量の梅を、どこからか調達してきていた。

お花見と云えば、現代は桜の花見のことだが、奈良時代までは中国から伝わった梅が主流で、平安時代から徐々に桜に置き換わったと言われている。

実をつけることを目的に品種改良されたのを「実梅」、お花を観賞するための梅を「花梅」と一般的には呼ぶが、前者は、効率的な実の付き方を、後者は、古木としてごつごつした肌合いの老成感と長寿感を独特の枝ぶりで味会うことを目的に剪定するのが当たり前になっている。今でも日本各地に梅の名所はあって、花だけではなく、梅のごつごつした木肌や枝ぶりも鑑賞してみてください。

この作品のタイトルは「桜切るバカ、梅切らぬバカ」からとったものだと思うが、人間の成長は、どっか厳しくしつけたりしながらするものだということを示唆し、この映画ならではの皮肉のようなものなのだろうか。ただ、花梅のこと考えると、珠子さんのことを示唆しているのかもなんて考えたりもした。

映画では、梅の枝は剪定されなかった。

前に、港区青山に児童養護施設が建設されることが決まった時に、この映画のように、地域の地価が下がると言って反対する人が説明会に来て、抗議するのをテレビで見たことがある。

ただ、ふと思ったのが、おそらく地域に暮らす人のほとんどが、実は、その集会には来ておらず、一部の、いわゆるノイジーマイノリティが騒ぎ立てているのではないかと。

ただ、こうした抗議の声は、受ける側にとっては厳しく、ひどい言葉が投げかけられることも多い。

ネットの誹謗中傷とある意味似ている。

だが、行政は、方針を変更しなかった。

僕は、適切な判断だったと思っている。

映画のタイトルは、効率的な実のりに、子供の将来の地位や稼ぎが例えてちょっと皮肉っているのかもしれないが、地域社会にも過度な剪定は必要ないような気がする。

幼稚園や保育園の建設に対する反対もそうだが、コミュニティは社会全体の縮図なのだから、一部の人間の好みで剪定する必要は全くないと思うし、剪定などせず、自由に個性を伸ばせる社会の方が素敵なような気がする。

剪定する、しないは、ケースバイケース、個性を見極めてやれば良い。切らない方がいい場合も、切る方がいい場合もあって、騒ぎ立てるより、見極める力をつける方が、実は、効率的なんじゃないかと強く思う。

ワンコ