劇場公開日 2021年7月10日

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「ここのところ、日本の入管行政のまずさが指摘されることが多いが、何も...」東京クルド 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ここのところ、日本の入管行政のまずさが指摘されることが多いが、何も...

2021年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ここのところ、日本の入管行政のまずさが指摘されることが多いが、何も昨日今日ひどくなったのではない。日本の難民認定は昔から1%以下だった。
多くの人、は難民のことをつい最近日本に逃れてきた人々のことだと思うかもしれない。もちろん、最近になって日本にやってきた人もいるが、日本の入管が国外に追い出そうとしているのは、何もそういう人たちばかりではない。幼い頃に家族とともに母国での迫害を逃れるために日本にやってきて、幼少期から青年期までこの地で過ごして、文化的にも生活の基盤も日本にあるような人々をも追い出そうとしているのである。
本作の2人の主人公はまさにそういう人だ。難民申請を続け、仮放免許可書を持つが、それはこの国で働けるわけではなく、ただ「いるだけ」の状態に留め置かれている。日本で育った彼らに対して、入館職員が「帰ればいいんだよ。他の国行ってよ」と吐き捨てるように言う。多感な時期を日本で過ごして日本に染まった人に対して、どこに帰れというのか。
そんな状況に1人は絶望し、1人はまだ希望を捨てずに進学の夢を追いかける。2人はすでにこの国で生活する僕らの仲間ではないのか。仲間を見捨てるような国にしてはいけないのだと強く思う。

杉本穂高