劇場公開日 2021年11月19日

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「最後まで楽しく鑑賞できるケッサクなコメディ」聖地X 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5最後まで楽しく鑑賞できるケッサクなコメディ

2021年11月21日
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鑑賞方法:映画館

 面白かった。期待のハードルが低かったのかもしれないが、予想しなかった展開に心が踊ったことが大きい。作品のジャンルは言うなればパラサイコロジカルコメディ、日本語だと超心理学喜劇とでもなるのだろうか。

 岡田将生は2019年に舞台をふたつ観た。Bunkamuraシアターコクーンでの「ハムレット」と、シアタークリエでの「ブラッケン・ムーア 荒野の亡霊」である。実物は背が高くて足が長くて顔が小さくて整っていて、見栄えがとてもよろしい。あれほど容姿に恵まれた俳優はいないと思った。それが三枚目を演じるところがいい。映画「CUBE 一度入ったら、最後」でも一番かっこいい彼が一番情けない役を演じたところに好感が持てた。本作品でも強引に押しかけた妹を相手にオロオロするところがとても上手だ。
 その自分勝手な妹の要(かなめ)を演じた川口春奈は、華がなくて、婀娜っぽさも女の優しさも感じさせない女優だが、そこが本作品に丁度よかったと思う。要に女としての魅力がないから、別れようとしている夫の風俗通いにも共感できるし、夫が要を好きだと言い張ることには逆に全く共感できない。つまり夫にはまったく感情移入できないのだが、本作品では観客が夫に感情移入してはいけない展開になっている。だから丁度よかったのだ。
 真木よう子はテレビドラマではちょっと変わった役が多い気がするが、本作品ではごく普通のOLを演じている。当方は、変わった人を演じるよりもごく普通の人を演じるほうが難しいと思っているので、本作品での演技に感心した。こういう演技ができるほど、真木よう子の演技の幅は広がっている訳だ。

 ストーリーについてはネタバレになるので書けないが、笑える場面があちこちに散りばめられている。韓国人のお手伝いさんが二人いるのだが、どちらも演技が達者である。喜劇のポイントをきちんと押さえていて、笑えるシーンでちゃんと笑わせてくれる。ホラーだと思って観ると腹が立つかもしれないが、事前情報なしで観たらケッサクなコメディで、最後まで楽しく鑑賞できた。

耶馬英彦