場所はいつも旅先だった

劇場公開日:

場所はいつも旅先だった

解説・あらすじ

文筆家、書店オーナー、雑誌「暮しの手帖」の元編集長などさまざまな肩書きを持つ松浦弥太郎が初監督したドキュメンタリー。サンフランシスコ(アメリカ)、シギリア(スリランカ)、マルセイユ(フランス)、メルボルン(スペイン)、台北および台南(台湾)と、世界5カ国・6都市を旅した松浦が、各地で体験した出会いとかけがえのない日々を、飾らない言葉でエッセイ集のようにつづっていく。朗読を脚本家・演出家の小林賢太郎、主題歌をアン・サリーが担当。

2021年製作/78分/G/日本
配給:ポルトレ
劇場公開日:2021年10月29日

スタッフ・キャスト

監督
プロデューサー
石原弘之
撮影
七咲友梨
録音
丹雄二
編集
内田俊太郎
朗読
小林賢太郎
主題歌
アン・サリー
監督補
山若マサヤ
制作進行
門嶋博文
デザイン
澁谷萌夏
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(C)Mercury Inspired Films LLP

映画レビュー

2.5「世界ふれあい街歩き」と「世界の車窓から」を足して割って水で薄めて調味料をドバドバ足した作品。

2024年9月21日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

〇作品全体
…なんてタイトルにしちゃったけど、画面に映る写真や映像は素晴らしいものがあった。
街が動きだす前の静けさや明るさの切り取り方がすごく絶妙で、たまに早起きして出かけたときの、普段とは少し違う光の差し方、空気感、街の雰囲気…そういったものの点描が美しかった。冒頭5分くらいで言えば、本当に素晴らしかった。

でもその後がイマイチ。夜明け前や夜更けを映すアイデアはすごく好みだったんだけれど、それ以外は旅番組の薄い模倣に感じた。街の人とやりとりしたり、街の風景を切り取る場面は「世界ふれあい街歩き」っぽい。ただ、「世界ふれあい街歩き」は(やらせとはいえ)相手の言葉を相手の言葉として映していて、撮影者との対話を感じる。
でもこの作品はすべてをナレーションにしてしまっていて、相手との会話ではなく、自分自身の都合の良い解釈を延々垂れ流す、みたいな印象を受ける。人とのふれあいを主としたいのか、自分の価値観を語りたいのかが非常にあいまいに感じた。
街にいる人の背景を語る部分は「世界の車窓から」っぽい。その人のちょっとした「これまで」を知るのは確かに楽しい。でも、映される画面がすごく流動的で、ナレーションで語っている人物とは違う人物を映していたり、街の風景を映し続けたりしていて、全然その人物のことが入ってこない。

あとは「夜明け前や夜更けの街を撮る」ならいいんだけど、「その時間にいる人々を映す」となったときに自分の都合の良い解釈を垂れ流すのは、街に居る人たちに無関心過ぎやしないか。
深夜のドーナツ屋のカウンターチェアで首を垂れて寝ているおじいさんに「きっと楽しい夢でも見ているのだろう」というナレーションを添えるのはヤバすぎる。絶対そうじゃないとは言い切れないけど、その状況を幸福なものと捉えるのは無理がある。飲食店で働く人たちを映して、ほぼ初対面の人間に話す上っ面の言葉だけを鵜呑みにしたナレーションも、いろいろな旅先で一期一会を味わっている自分自身への自己陶酔に近い。普通であれば眠りにつく時間に街で働く人々を出汁に、上っ面なコミュニケーションだけを基に旅の幸福を味わってしまって、本当に良いのだろうか。
何度もナレーションで語る旅の良さはわかる。わかるんだけど、その自己陶酔の着色として深夜に働く人たちに一方的なナレーションを添えるのは、かなりグロテスクだった。

一番しんどかったのはナレーションの多さ。画面を見ればわかることをずっとしゃべってる。「無舗装の道を進んでいく」とか「朝の陽ざしが眩しい」とかいちいちしゃべってた。街に浸りたいし、浸れる風景がたくさん映っているのに、ずっとなんかしゃべってた。
なんでこんなにしゃべるんだろうと思ってたら、一番最後にこの作品を見ているあなたへ送る、というような言葉で締めくくられ、ラジカセを止めるような音で終わっていた。そうか、これは作者の精神世界を旅するものではなくて、旅の魅力を伝える記録映像なのか、と気づいた。であれば、口数も増えるか…とは納得したけれど、納得しただけで、それは作品の良さではないと思う。

旅番組の色々な要素は感じられるけれど、どれも薄味だった。そしてその上からナレーションという調味料が大量にかけられ、その味に困らされるような作品だった。写真や映像という素材本来の味をもっと味わいたかった。

〇その他
・監督がライターだと知って納得した。映像ではなく言葉を信頼しているような作品作りだったと思う。

・一番意味わかんなかったのは漁師の人のシーン。「僕にも漁師になれますか」なんてまったく意味のない質問をするのも意味わかんないし、案の定お世辞まみれの回答を語った後に漁師のすり切れた指を映していた。仕事の過酷さを語る指を撮っておきながらなんでそんなやりとりを残してしまうんだ…。過酷な仕事にも関わらず優しく返してくれた漁師の気持ちを映したかったのかもしれないけど、漁師の人全然カメラ見ないから気持ちが推し量れないし、そもそもそんなに漁師の人掘り下げてないし、なにより指から語られる過酷さが凄すぎて、吞気な質問とのギャップが怖すぎた。
自分が幸せだから周りも明るく見えてくるのはすごくわかるんだけど、それを実際の街の人々で、しかも深夜や夜明け前といういろんな環境の人が入り乱れてる時間帯でやっちゃうのはサイコパシー感あってヤバかった。

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すっかん

4.0カフェでぼんやりしている時のような優しい時間

2025年2月13日
PCから投稿

特に何かを訴えかけてくるようなストーリーではないのだが、観ていてとても心地のいい作品。カフェの窓際の席でカフェラテを飲んでいる時のような、やんわりとした時間が流れる。疲れた時に何度も見返したくなる作品だと感じた。
センスがかなりいいのだが、一体誰が作ったんだろう?と調べたところ、「暮しの手帖」元編集長の松浦弥太郎さんという方が監督だそうな。また素晴らしい日本語のプロフェッショナルを見つけてしまったではないか!松浦さんのエッセイもぜひ読みたい!!
1つマイナスなのは、語り手の声が少しくぐもっていて聞き取りづらかったという点。できれば音量上げずとも聞こえるナレーションが良かったな。

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共感した! 0件)
ぽぽ

4.0歩くのがお好きなら どうぞこのムービー、召し上がれ

2025年1月16日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

松浦弥太郎の旅のエッセイを
小林賢太郎が いい声でナレーションする。
こんないい声の人が語ってくれて
旅の案内人が松浦さんならば
ついつい夜通し彼らにくっついて
知らない街を一緒に歩きたくなる。

昼が終わって夜も更け、そして次の朝を迎えるまでの「世界の裏側の時間」。
そこで人々はどんな顔で生きているのか
生来の人好きなのだろう、松浦は初対面の人や通行人の表情をひとつひとつ、自身の言葉で拾っていく。

日本の深夜労働者も、統計によると600万人なのだそうだ。
かなりの数ではないか。

ふと覗いた「Yahoo知恵袋」でこんな質問があった ―
「住んでいるアパートの別室で真夜中のとんでもない時間に住人が出入りしているが、どうしてあんな時間に料理をしたり、食事をしたり、話声を外に響かせたりするんでしょうか?」と。
一人暮らしの女性からの質問だった。
「600万人の存在」を知らなければ、彼女が怪訝に思うのも仕方ない。

紀行ものの映画はいくらでもあるけれど、「夜更け」や「夜明け」の時間帯に絞ってその街と人々を紹介するコンセプトは、これは変わってて面白かった。

ただし、夜勤を30年やっている僕としては、「朝」は一番辛い時間なのだ。疲労がピークの、身体が泥のように重たくなる時間。
朝日がキツくって、一刻も早く遮光カーテンを閉め切って床に入りたい魔の刻。
だからLAのドラッグクイーンが疲れた表情でつけまつ毛を剥がし、メイクを落とすシーンが一番心に沁みる。

宵っ張りで、早起き鳥の松浦弥太郎の当てどもない歩き旅。
自分が進めば世界が向こうから僕らに近づくってことだ。
月や太陽と歩調を合わせるってことだ。

【メモ】
夜のFM「ジェットストリーム」で、福山雅治がこのエッセイを朗読していたので、今回サブスクで本作を鑑賞してみたわけだが。
そもそもが活字で表された旅なのだから、著作を誰かが朗読する所までは原本にほど近くても、この映画化となると、今度はさらに赤の他人が映像を付けるわけで
原作からは少し乖離してしまうのはしょうがない。
夜間の長距離トラックの運転手だから、(そもそも活字の朗読劇なら) 僕には映像なんかまったく無くても良いのだ。
声に9割集中する。
映像はモニターを流し見しながら1割程度の関心で鑑賞。
映像なんか無くても、ハンドルを握るラジオ派の僕にはどうでも良いからね。

【追記】2025.1.17.
どうやら松浦氏が自ら撮影して、その映像に自分で説明文をつけていたらしい事をあとから知った。
道理でちょっと、くどく感じたわけだ。
星ひとつ減らしました。

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きりん

4.0世界の車窓から的な

2024年11月14日
スマートフォンから投稿

幸せ

飾り気のないシンプルなドキュメンタリー。
変に脚色されていないので単調といえば単調だけど、それが良い。
疲れてアニメを観るのすら億劫な日、心にじんわり染み渡った。

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はりぷ