「それなりに満足」スパイラル ソウ オールリセット ろびんさんの映画レビュー(感想・評価)
それなりに満足
「ソウ」シリーズといえば、作品を追うごとにグロテスクさを増すスプラッタ表現、作中に散りばめられた伏線をラストシーンで一気に回収する巧妙さ、ジグソウやその意思を継ぐ者たちの思想と背景の3点が作品の魅力だと考えている。
今回はその3点について自分なりの感想を述べていきたい。
まず、作品の代名詞でもあるスプラッタ表現について。
このシリーズの特徴はジグソウの思想に基づいて(シリーズを通して守られてはいないが)、様々な装置を使用することによって被害者が犯してきた過ちを断罪するために究極の選択を強いるものである。
その点に関しては非常に良くできていたと思う。元々ジグソウの思想から外れて理不尽な拷問を行うようになっていたシリーズにおいて、原点に帰ってきたかのような、まさに究極の選択であった。生きるために払わなければならない大きすぎる代償がグロテスクさを肉体的にも精神的にも加速させ、観る側は目を覆いたくなるような描写となっていた。非常に満足。
次に、作中に散りばめられた伏線についてだが、これはこれまでのシリーズの中でもクオリティは低いと感じた。ラストシーンを前に犯人が誰なのか分かってしまうほど違和感のあるシーンがあり、ラストシーンでの伏線回収でも「あー、あのシーンはそういうことね」というくらいの盛り上がりだった。
思わず始めて「ソウ」「ソウ 2」を観たときに頭を抱えて驚いた自分を振り返ってしまった。
最後に犯人の思想や背景について、これはうまくまとめられていたと思う。犯人の動機は真っ当(ジグソウを基準として)であった。
しかし、残る疑問は犯人がなぜジグソウを模倣したのか、という点である。なにかしらの接点があったのだろうか?次回作で語られるのだろうか?ワクワクする。
以上の3点を踏まえて言えるのは、鑑賞後に非常に満足感を得られたということだ。少々物足りない内容ではあったものの、一瞬も暇な時間はなく、映画を見るのではなく「観る」ことができた。1時間半あまりの上映時間の中で頭をフル回転させながら観ることのできる映画は多くない。それがシリーズの魅力であり、人を惹きつける理由だからだ。先述の疑問を踏まえて、次回作が出た際は、必ず映画館に足を運びたい。