前科者のレビュー・感想・評価
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保護司と殺人前科者の人間ドラマ
・復讐(更なる殺人の可能性)によるスリリングな展開
・警察捜査による真実の追及、謎解きサスペンスの要素
・隠された恋愛/禁断の恋愛の可能性(保護司と警官/保護司と殺人者)
・殺人者の正当性論理(法と情)の問いかけ
・更生とは?の問いかけ
・ネガティブポイント
保護司の越権行為が多く、リアリティをなくしてしまっている。
弁護士が身元調査なしで刑事事件を引き受けるわけがない。
上手い役者、森田剛
連続ドラマも観ていたので、今回の対象者は?と興味深く鑑賞。工藤誠と弟の育った環境は気の毒であり、弟の復讐したい気持ちもよくわかるが、やはり殺人は罪。後2週間なのに、弟を見捨てられない兄誠も結局犯罪者に逆戻り。辛い。でも鼻水垂らして泣いている様子や、全ての場面で、森田剛の演技に引き込まれる。元アイドルとは思えない、素晴らしい役者さんです。
今回の映画で、佳代ちゃんの中学時代が明らかになったが、真司くんのお父さんに命を助けられて、その真司くんと再会。真司くんとしたら、大事な父親が殺されてしまい、佳代ちゃんを恨むのは間違っているとは思いながらも、佳代ちゃんの好きな本にあんな走り書きを残してしまうほど辛かったと思うし、それを見つけてしまった佳代ちゃんも辛かっただろう。自分は刑事になり、再会した佳代ちゃんは犯罪者の更生を手伝う保護司、複雑な心境だろう。なのに、佳代ちゃんの家であんな雰囲気になるだろうか?ちょっと疑問。
みどりさんとの関係が、映画のみ観た人には分かりにくいのでは?もう少しみどりさんとの事が描かれていても良かったのかも。
重厚な出来
一言「重厚!」。
あと2週間で保護観察が終わる、元受刑者。
そこに起こった事件を、保護師はどう受け止め行動するのか。
それぞれの過去を織り込みながら進む話に、目が離せません。
一番重く心に刺さった言葉。「(子供だから)仕方ないよねえ」。
元受刑者の心の傷を、そんな簡単に突き放し処理した大人たち。
「法律や福祉だけでは、助けられない」こと。
それが寄り添う心。世の大人たちよ、忘れているんじゃない?。
有村さんと、森田剛さんが出演以外は知らなかったので。
結構豪華な共演陣、話を濃くしてました。
どこかに自分もその中にいるような、痛みも感じました。
PG12ではありますが、一度見てほしいです。
そして保護司さんの活動のことも、知ってほしい。
⭐️今日のマーカーワード⭐️
「弱いから、いいんだ」
更生
犯罪を犯した人の更生。
そしてそれをサポートする保護司の物語。
有村架純演じる保護司の阿川が本当にまっすぐで良い人だった。
弁護士も、警察も、それぞれの信念で動いている。
被害者たちに悪いところはあったけど、それぞれに家族がいて、その死を悲しむ人たちがいることだろう。
メインの流れは救いのないストーリーで観ていて辛くはあったけれど、最後、復讐を止められて良かったなあと、それは救いだった。ラーメンを一緒に食べてほしい。
しかし、保護司が無償で働いているということは知らなかった……。お金を出すべきなのでは……。
保護司の覚悟
有村架純扮する阿川佳代は、コンビニ勤めのかたわら保護司をしていた。仮釈放の前科者がちゃんと更生するか保護観察する中で犯罪を予防する仕事で、非常勤の国家公務員だが報酬はないそうだ。
自宅を事務所としながら解放し厳しさが必要な保護司も大変だが、保護観察が終わったら社員にするかどうかと気をもむ身元引受人も大変だね。しかし有村架純の様な若い女性も保護司なんて務まるのかな。人を助けると言う事は生活を犠牲にしなきゃならないし、襲われそうな環境もあるし。世の中いろんなやつがいるから恐いよね。普通は触りたくないよな。前科者の周りにはやっぱりやばいやつらがいるもんね。それと警察官にもいろいろいるって事もあるか。前科者が貶められる環境はいくらでもあるんだろうな。最後まで緊張感ある展開だったが、これでは保護司は身がもたんな。保護司の覚悟は相当なものだね。
前科者の更生に全力で、しかも無報酬で取り組む姿にただただ感動。 い...
前科者の更生に全力で、しかも無報酬で取り組む姿にただただ感動。
いや、無報酬はあり得ないでしょう。
普段は物静かな主人公・有村が時に感情を爆発させるシーンが見どころ。
病院でペンぐりぐり、怖ない?
あのシーン怖すぎない?
んでこいつらも悪者だったんかい〜って思ったらそれは違うんかい…
牛丼とラーメンが食べたくなる映画。
言い方悪いけど低所得?の象徴なのかなあ。
終盤。病院で補聴器を外して高音が響く場面。緊張が高まる。入り込みました。
「これ以上被害者を産んではいけない
これ以上加害者を産んではいけない」
はっとさせられるセリフ。
本の落書きを消しゴムで消したあと。
『友達』を驚かせたときに初めてでる阿川の満面の笑みにどこか安心しました。
ストーリー 84点
配役 93点
音楽・映像 82点
全体 87点
加害者も被害者も生まないために。坂道を転げ落ちないように支え、踏ん張る存在。
本作は前科者に寄り添うことを信条とし、奮闘する若き女性保護司の物語だ。
保護対象者の更正の為、真正面から体当たりし、お節介が過ぎる様は少し心配になるほど。
そんな彼女が新たに担当するのは殺人罪で仮釈放中の受刑者。
あと少しで刑期を終えるという矢先に彼と関わりの深い人物を狙った連続殺人事件が起こり、
彼自身も失踪。容疑者として警察にマークされてしまう。
保護司として何もできないという葛藤の中、それでも彼女は保護対象者の更正のため、奮闘する。
「正しく」あり続けるということは勾配を落ちないように踏ん張ることだ。
人によって斜面の角度が急だったり、掴むものがなかったり、滑りやすかったり、蹴落とされたり、、
それを「止めているもの」があるから、何とか一線を越えずに踏みとどまれているにすぎない。
本作を見て、登場人物の言葉を聴き、そんな事を考えてしまった。
世間の目とか法律や道徳なんてものは抑止力として実に心もとないのだと。
感情にかられ、自分自身が呻き苦しみ泣き叫んでいる声が聞こえなくなった時が一番危うい。
見せ方によっては、、
保護司。初めて知りました。
フィクションもあるだろうけど、
生計はコンビニバイトのみ。
無償でこんなにも人のために?しかも犯罪者のために時間や時には(食費とか交通費)お金を使う仕事、、。すごいですね。
もし再犯してしまったらその責任を負うかもしれないのに。。。普通の人じゃ到底できないですね。
見せ方によっては、『弟』の存在を最後まで隠して引っ張ればどんでん返し系のストーリーになりそう。
職場で殺したのもきっと、弟なんじゃないの?と思ったし、兄は弟に利用されてた。(弟が精神的におかしかった、とか兄が自分より可愛がられてたから、とか理由なんていくらでも付けられそう)なんて。。
でもきっとこの映画は、それをしたいわけじゃなくて
保護司の仕事を見てほしかったんでしょうね。
それにしても森田くんはヒメアノ〜ルで役者として、衝撃を受けましたが、今回もスゴイ。
本物みたい。無口で、話す間や表情が怖い、、、
当然人殺しは決していけないことだけど、
じゃあ、あの警官や、児童相談所の対応は?
未だに児童相談所が訪問に来ていたけど、子供が殺された、というニュースは、時々ありますが
DV被害者や子供にとって頼みの綱があれじゃ、ある意味殺人に加担してることになりませんかね。
ごめんなさい、じゃ済まないよ。
警官の鈴木さんが病棟で警官に怒ってくれて、少し救われました。
保護司は、やったことに否定はしませんでした。
だって、どうしようもないから。否定も肯定もできない。
ただただ、待つ事と、信じる事だけしかできません。
保護司の過去も、蓋を開ければ全然深くなくてあの立場なら逆に犯罪者を憎んだりしそうだなぁと。。。恋愛要素は本当に要らなかった、、
あの兄弟に焦点を当てるか、保護司に焦点を当てるかで映画の印象が変わってくる映画でした。
(個人的には、保護司はほとんど要らなくて兄弟の救われないノンフィクション、ドロドロの映画の方が好みだなぁ。)
森田剛の演技力
森田剛はV6で歌ったり、バラエティに出演しているアイドルのイメージしかなかったけれど、ラストの演技力が俳優として素晴らしかった。
無防備に何人も銃殺したり、リリーフランキー演じる元受刑者と有村架純が演じる保護司が簡単に接触できたり、不自然な展開だと思う点もあるけれど、このストーリーは保護司という職業にスポットがあたることに意義があるので、鑑賞する価値はあった。
現実には、森田剛兄弟の生い立ちのように同情できる背景のある元受刑者ばかりではないと思うので、より大変な職業だと思う。ボランティアだというのなら尚更だ。
キャストがとてもいい。
ストーリー展開は、とても重いけど、
有村架純さん演ずるキャラクターに救われる。
役柄に説得力を持たせる有村さんの演技力が、
すごくよくて、本当に保護司にしか見えない。
森田さんの出演シーンと有村さんの出演シーンのバランスが
よくて、暗くなりすぎる事なく、最後までしっかり観られる。
こんなに有村架純さんって良い女優さんだったんだと
認識した作品でした。
やっぱ凄いわ、森田剛
ヒメアノ〜ルに続き本当に演技が凄いよ森田剛
あんな鼻水出そうと思っても出せないよ 本当に素晴らしい
深く重い内容だったけどかなり観る価値がある
本当に頑張ってる人の前に現れる不幸が、観ていて自分の事のように苦しくて辛い
ps.佳代と真司のキスシーンはいらなかったと思う
岸義幸監督による社会派ヒューマンドラマの佳作
この映画を観たのは、あの『あゝ荒野』の岸義幸監督作品だったからだが、仮釈放者の更生をサポートする保護司の女性を描きながら、彼女の成長物語であり、社会における人間の在り方をも描いた社会派映画の佳作であった。
コンビニ店員として働きながら保護司の仕事も懸命に行う阿川佳代(有村架純)は、前科者のために奔走する日々を送っていた。
その中の一人、工藤という男は順調に更生していくように見えた。そんな工藤だったが、保護観察終了直前に姿を消してしまう。
そんな時、交番の警官が襲われて拳銃を盗まれる事件が起こる。
そして……と物語は続いていくのだが、序盤は「こうした保護司の姿を描いていくのかな?」と思っていると、警官の拳銃強奪事件から次々と殺人事件が起こって、俄然盛り上がる展開はさすが!
犯罪を犯してしまう人間、被害者となってしまう人間、そして保護司となった女性、誰もにそこへ至るキッカケや動機があるということを、過去の回想シーン含めて描くあたりも見事である。
出演者も、主演の有村架純だけでなく、磯村勇斗、宇野祥平、石橋静香、リリー・フランキー、木村多江など豪華メンバーは、岸義幸監督作品だからか…。
見応えのある社会派ヒューマンドラマであった。
公開2022年の作品。
<映倫No.122646>
出川「鼻水はダイヤモンド」
映画館で観たかった
初鑑賞
U-NEXTでも良かったがやはりDVDで
原作未読
WOWOWのテレビドラマ未鑑賞
監督と脚本は『二重生活』『あゝ荒野』の岸善幸
保護司と仮出所中の受刑者の交流
ほのぼのとした展開も実が警官から拳銃を強奪し発砲してから様相が変わる
福祉課の職員に児童福祉養護施設の内科医
実は母の死に関わった人々を次々に殺害
誠は同行し自首しろと説得するが実は拒否
実を庇うため誠は小細工で警察を撹乱
警察はまんまとハマり誠を殺人犯として捜査を進める
有村架純が好演
代表作
鼻水垂らす森田の熱演も高く評価したい
保護司は非常勤の国家公務員
報酬無し
ボランティアだ
自分はその事実が信じられない
ネット掲示板に政府寄りの書き込みをしただけでお金が貰えると思い込んでいる人なら尚更だろう
髪型で印象が変わる
原作に寄せたのか知らないけど森田の髪型が変だ
モップを被ったような若葉もなかなか
石橋も石橋と気づかなかった
有村と磯村のソフトな濡れ場にはちょっとドキドキしたけどあの場面は必要なかったと思う
一番残念なのは実が拳銃自殺するシーン
雑すぎてびっくりした
あまりにも無理がある
日本の警察はそこまで無能じゃない
安倍晋三元総理を守れなかったとはいえ
だいぶ前に地元で2人を殺害した中年女性が拘置所で看守の目を盗んで自殺したことがあったがそれならあり得る
「なぜお前は生きている」
学校の図書室に落書きを消した本を返すラストは印象的
「惚れんなよ」
コンビニで働いている保護司の阿川佳代に有村架純
殺人で服役し仮出所後に自動車修理工場で働く保護観察中の工藤誠に森田剛
佳代が働くコンビニの店長・松山友樹に宇野祥平
保護観察官の高松直治に北村有起哉
佳代の幼馴染で刑事の滝本真司に磯村勇斗
滝本と組んで捜査をする刑事の鈴木充にマキタスポーツ
かつて佳代が担当した暴行と恐喝の前科がある斉藤みどりに石橋静河
工藤誠の弟・実に若葉竜也
実に拳銃を奪われた交番勤務の警察官金田に戸田昌宏
パン工場で働く工藤の元同僚・山崎和夫に山本浩司
福祉課の元同僚で殺された田辺の裏の顔についてよく知る森山聡美に広岡由里子
佳代が担当している詐欺罪で服役し今は鉄屑屋で働く田村修に正名僕蔵
工藤誠の母親を殺害した工藤誠の義父・遠山史雄にリリー・フランキー
遠山の担当弁護士・宮口エマに木村多江
ありきたりだけど「諦めるな」って凄く勇気を貰えるコトバですよね。 ...
ありきたりだけど「諦めるな」って凄く勇気を貰えるコトバですよね。
有村架純と森田剛の二人の演技に心揺さぶられた素敵な映画でした。
俳優・森田剛は裏切らないな。
寄り添う者
犯罪や非行を犯した人たちの更正や社会復帰をサポートする“保護司”。
本作と同時期に公開された『ノイズ』でもチラッと登場したものの、すぐ殺される散々な扱いだった為、本作が作られて良かったと本当に思う。
ここまで真っ正面から題材にした作品は多くなく、仕事内容や保護司そのものについても漠然としか知らず、詳しくは知らない。本作で初めて存在を知った人も多いとか。
一応は国家公務員。が、非常勤で、何と無給! ボランティアに等しく、二足のわらじで生計を立てなければならない。
信じられなかった。こんなにも大変で、こんなにも稀有な存在が無給だなんて…。
もっと陽の目が当たっていい存在だし、お金の事ばかり言って恐縮だが、報酬は出てもいいし、国は見直すべき。
でも、ただお金が目的だったら務まらないだろう。ベタで臭い言い方だが、お金には代えられないもの。
だから、もう一度言おう。本作を作ってくれた事に感謝。本作を見れて良かった。
同名コミックの映画化。前日譚に当たるTVドラマがWOWOWで放送された事も知っていた。(未見)
本作を見たかった理由は幾つかあった。
題材は勿論の事、
『あゝ、荒野』の岸善幸監督作。
近年飛ぶ鳥を落とす勢いで、女優としてますます目が離せない有村架純主演。
衝撃的だった『ヒメアノ~ル』以来の映画出演となる森田剛。
期待に違わぬ見応え。力作であり、秀作。
WOWOWドラマは新人保護司としての奮闘と、“前科者”との向き合いや関係に焦点が当てられているよう。
映画版を作るに当たって悩んだだろう。勿論それらを描きつつ、それだけだったらドラマ版の二番煎じになってしまう。
そこで並行して描かれるのは、事件サスペンス。
保護司・阿川佳代。コンビニでバイトしつつ、前科者の更正の為に熱心に取り組む日々。
彼女の保護観察対象の前科者に、元受刑者の工藤誠。職場のいじめが原因で同僚を殺し、服役。仮釈放され、車の修理店で働く。物静かだが実直な態度で、社会復帰間近だった。
社会復帰したら、工藤が好きなラーメン屋でお祝いを考えていた。
そんなある日、警官の銃が奪われ、その銃による連続殺傷事件が発生。
と同時に、工藤が姿を消す。工藤は何か事件に関わっているのか…?
工藤は犯人なのか…?
…いや、犯人はすぐ判明する。
ある日、工藤の前に現れた青年。工藤の弟、実。
この兄弟、壮絶な過去を持つ。
幼い頃、DV義父が母親を殺す場を目の前で目撃。以来、施設での虐待、職場でのいじめ、この社会も決して手を差し伸べる事無く、陽の当たらぬ人生を歩んできた。
実が殺傷した人物には、共通点が。
殺される前助けを求めるも、何もしてくれなかった警官。
相談するも、力になってくれなかった福祉職員。
虐待した施設職員。
動機は、母親や自分たちを苦しめた者たちへの復讐。
実はもう一人、復讐をしようとしていた。その人物とは…。
実の犯行にショックを受ける工藤。弟の犯行を止めようとするが、その人物を見て…。
前科者はまた罪を重ねてしまうのか…? 真に更正は困難なのか…?
ならば、保護司の存在は…? 救う事は出来ないのか…?
事件捜査サスペンスとして、粗や難も目立つ。
事件を追っているように見えて、結構ご都合主義。
工藤ばかりマークして、もう一人(=弟)の存在に誰も気付かなかったのか。
撃たれた警官から過去の経緯を聞き出す為に、オイオイ!…の暴力。昭和のTVの刑事かよ!
事件を追うベテランと若手の刑事コンビ。若い刑事の滝本は、佳代の中学時代の同級生で、元恋人。思わぬ再会を果たし…って、何かちょっとチープ。
二人の過去にはある“影”があるものの、その設定って絶対的に必要…? あの唐突のラブシーン、いる…?
不満点が多くなってしまったが、決して否定レビューではない。寧ろ、絶賛レビュー。
サスペンス・パートもエンタメ性があり、お陰で物語に引き込まれた。
ドラマ性も充実。
佳代は何故、こんなにも前科者の為に奔走するのか…? それにはある“過去”が…。彼女自身も壮絶な過去があり、保護司を目指した理由も語られる。
前科者の更正は『すばらしき世界』。社会的弱者の苦しみは『護られなかった者たちへ』。それらと通じる点あり。
同じテーマなどではない。我々が何度も何度も、向き合わなければならないテーマなのである。
岸善幸監督の演出は『あゝ、荒野』ほどKO級ではなかったものの、真摯にドラマを語っていく。
やはり特筆すべきは、キャストの演技。
有村架純はいつからこんなに巧くなったのだろう。
…いや、元々巧かった。それがさらに増して、最近は絶頂期もしくは円熟期にいる。
本作での、真っ直ぐで、ユーモアを交えつつ、苦悩をも抱えた熱演。そこから滲み出る、前科者との触れ合い、時には母性。あるシーンのビンタは、見ているこちらの目をも覚まさせ、気付かせてくれるほど。
“可愛い”から、絶対的な信頼ある女優へ。次は一体、どんな魅力や演技を魅せてくれるだろう。「惚れんなよ」なんて言ってたが、惚れてしまう!
そして、森田剛。
私が“役者”としての森田剛に衝撃を受けたのは、『ヒメアノ~ル』一本。それ以前にもTVドラマや舞台で活動していたようだが、ほとんど見ていない。V6時代もよく知らない。
ミーハーと思われてもいいが、あの『ヒメアノ~ル』一本で森田剛の実力を知るに充分だった。そして本作で、それは確信を得た。
前科者としての悲しみ、苦しみ、弱さ、怒り、人としての本来の優しさ…。それらを有無を言わさぬ圧倒的な演技力で体現。しかもそれを、台詞は少なめに、表情や佇まいで体現。
相当な複雑難演だったろう。かなりの演技巧者しか出来ない。
舞台で鍛え上げられた賜物か、役者として秀でた実力あったのか。
岡田准一は演技力ありつつ主演スターの華と風格だが、森田剛は凄みと存在感ある演技派。
他キャストでは…
若葉竜也の危うい雰囲気、今にも壊れそうな弱さ。
マキタスポーツのベテラン刑事のハマりっぷり。
宇野祥平のユーモア、人の良さ。
リリー・フランキーのさすがのインパクト。
中でも、石橋静河。重たいテーマの中で、あっけらかんとした癒し。さすがは名優夫婦の娘。TVドラマからの続投で、佳代と彼女の出会いが綴られているとか。機会があったら見たい。
役の必要性があまり感じられなかった為か、磯村勇斗だけ一人浮いてた気がする。決して大根役者ではないのだが。
実が復讐しようとしていたのは、義父。この兄弟の転落の元凶。
義父は刑期を終え、社会復帰している。
工藤はまだ社会復帰果たしていないというのに…。実に至っては未ださ迷い、苦しみ続けているというのに…。
いや何より、母親を殺しといて、自分だけのうのうと生きている。
勿論決してこの義父も恵まれた生活は送っていない。義父も“前科者”として苦難はあった事だろう。犯した罪への後悔や反省も感じているだろう。
が、犯した罪の“余波”。自分が原因で息子が今殺傷事件を起こしているとは、そこまで思わなかったようだ。
銃を突き付けた息子と“再会”した時の表情がそれを物語る。
愚かであり、哀れでもあった。
それは義父以上に、この兄弟。
復讐でしか悲しみや苦しみを晴らす事は出来ないのか。
結局、実を救う事は出来なかった。あまりにも残酷過ぎる。
ならば、工藤は…?
彼自身は、この事件に直接的に関わっていない。
が、少なからず加担し、罪は免れない。せっかく培ってきた更正と社会復帰の道をフイに…。
どうする事も出来なかった。が、同情はするが、“仕方ない”では済まされず、それは自分の愚かさと弱さでもある。
真に更正は困難なのか…?
自分の弱さや社会の不条理に呑み込まれたら、それはそれは困難だろう。
…一人では。
自分の力で努力しろ! 社会や他人に甘えるな!…と言う人もいるだろう。
ならば聞きたい。そう言う人は、誰の何の助けも無く、人生を歩んできたのだろうか…?
そういう人はほとんど居ない。
人は必ず、助けられて、助け合って、支えて、支え合って生きている。
前科者でなくとも、前科者であっても。
手は平等に差し伸べられる。
助けを求める相手も重要だ。
偉そうな権力者、事務的な職員…そんな世間の“代表面”は断じてお断りだ。かえってイライラを助長させるだけ。でもほとんどが、そういうのしか居ない現実…。
私も苦い経験ある。『護られなかった者たちへ』のレビュー参照。
全てが全員が、そうではない筈だ。
この救いの無い社会の中にも、きっと、必ずいる。
同じ目線になってくれる人。
時に親身になって叱り、自分の事以上に心配してくれる人。
牛丼やラーメンを一緒に食べてくれるような人。
自らも傷付き、悩み、懸命に向き合ってくれる人。
佳代が保護司を目指した理由。
中学生の頃、暴漢に襲われそうになった。
その時ある人物が助けてくれたものの、その人は刃に倒れた。
(その人物こそ滝本の父親なのだが、赤の他人でも成り立っていたと思う)
以来、トラウマに。
そんなある日、かつての暴漢のようなフラフラの男を目撃する。
一人の女性が手を差し伸べる。後で知った事だが、その女性は保護司。
その時女性が言った言葉が忘れられない。まるで、自分に言った言葉に聞こえた。
保護司という存在が居て、加害者は立ち直れる。犯罪だって止められる。
被害者も救われる。あの時の自分のように。
そうありたい。そうなりたい。
自分が救われたように。
今度は自分が手を差し伸べる。
人は過ちを犯す。が、それを悔い、やり直す事が出来る。
その助けになりたい。
人の為に。
それを“偽善”と呼ぶ輩も社会にいる。
いつか必ず恥じ、感謝するだろう。
“偽善”と貶していた“善意”に救われる事を。
人が人の為になるシンプルで尊い行為を、どうして社会は素直に受け止められないのだろう。
そういう社会や人間関係であって欲しくない。
理想的かもしれないが、理想的な社会や人間関係であって欲しい。
当初は“前科者”というタイトルに違和感を感じた。
保護司を題材にしているのだから、“保護司”の方が合っているのでは…?
だが、見ていて気付いた。
前科者の更正。あくまで保護司はそのサポートをする。
広く知られていない。報酬も無い。日陰のような存在。
だが、居なくてはならない尊い存在。この社会と人々の為に。
劇中で度々“先生”と呼ばれているが、そんな大層な存在じゃない。
弱くもあり、真っ直ぐな信念を持った温もりを持った人。“友達”のような。
寄り添う者。
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