「あくまでも静謐な月下の物語」ムーンライト・シャドウ Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
あくまでも静謐な月下の物語
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目に見えない流れ
原作は未読です。
奇跡の仕組みの話から始まる。偶然と偶然が微妙に重ならないと、奇跡は起こらない。それは至極、当たり前なのだが、要するに奇跡は、起きてからおもむろに気がつけばよいと言うことでしょうか。
前半は「流れ」がテーマで進む。ドミノの不規則な流れ。地下の水の隠れた流れ。体内を巡る音の微かな流れ。「流れ」の道筋は、私たちが気づかないだけで、奇跡の種子かも知れない。
我らが生も、あるところ意思とは関わりなく見えない流れで営まれている。それでさつきは等に出会い、柊とゆみこにも出会う。
月の光の中で
等とゆみこの突然の死からが、物語の後半。出会いで紡がれた生が、死の別離で流れを堰き止められてしまう。
放り出されたさつきと柊の悲哀は、口にすることも出来ない大きなもの。しかし、麗と言う不思議な女性との触れ合いの中で、穏やかに変わっていきました。
作中の表現としては、麗は死の世界にも身を置いている非日常の存在だが、そこでさつきも柊も次第に日常を取り戻していく。
さつきと柊がパンを食べるシーンの、温かい溜息が出るような安堵感!
キャラバンは無言で進む
月下、柊はゆみこと再会し、一方でさつきは等の想い出と再会したように、私には見えたのですが。
作品の進行や人物の存在感が静かで、そこに身を委ねつつ、一つ一つのシーンを眺めていました。答えが分からずともよい……みたいで、それが心地良くもありました。いずれにせよ、哀しみはそう容易に消えるものではないです。
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