「もちろんカンバーバッチをはじめとした俳優陣は素晴らしいが、一番称賛すべきは本作をちゃんと大作としてまとめ上げたライミ監督、という一作。」ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0もちろんカンバーバッチをはじめとした俳優陣は素晴らしいが、一番称賛すべきは本作をちゃんと大作としてまとめ上げたライミ監督、という一作。

2022年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

サム・ライミ監督が久しぶりにマーベル作品に復帰した本作。実は自身が監督した作品以外にあまりマーベル作品に詳しくないというライミ監督だけど、たとえドクター・ストレンジとワンダ・マキシモフ(スカーレット・ウィッチ)との関係をよく知らない観客が観ても、ちゃんと楽しめるように作り上げています。

「マルチバース」についての小難しい説明は極力省いて、とにかく別世界を行ったり来たりできる、という舞台装置にまで削りきった思い切りの良さ。クリストファー・ノーランだったら超絶CG技法を使っての世界観の説明だけで2時間はかけたところでしょうね。マーベル作品の全体像(MCU)自体がマルチバース的であるため、設定そのものはすんなり理解できるんだけど、裏返してみれば「マルチバース」を標榜するほどの独自性が本作にあるのか、といえば、ちょっとうーん、となるかも。『スパイダーマン:ノーウェイ・ホーム』もまた、マルチバース的だったし、おなじスパイダーマン作品としては『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)もまたマルチバース的世界観。さらにいくつかの場面が『シャン・チー』(2021)を彷彿とさせるのも、さらに既視感を強めるのでした…。

ただこれは、制作過程で監督交代などの混乱があり、急遽登板したライミ監督の手腕で何とか完成にこぎ着けた、という経緯を踏まえると、ここまで手堅くまとめた、どころか第一級の大作として高い完成度を持たせたことに驚嘆の思いです。

劇中のワンダの振る舞いには賛否両論あるようだけど、残忍さと脆さを兼ね備えた人物としてエリザベス・オルセンが非常に見事に演じている点は特筆に値します。

yui