「異色のヒーローに異色のストーリー」ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス 悶さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0異色のヒーローに異色のストーリー

2022年5月25日
PCから投稿

【鑑賞のきっかけ】
先日鑑賞した、スパイダーマンシリーズの一応の完結編とも呼べる「ノー・ウェイ・ホーム」。
そこに重要人物として登場するのが、本作品の主人公である、「ドクター・ストレンジ」。
劇映画としては、2016年の作品に続く第2作ですが、この「ノー・ウェイ・ホーム」の続編とも呼べる点に興味を引かれ、鑑賞。

【率直な感想】
<マルチバース>
「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」と本作品との間を結ぶのは、「マルチバース」という、「多元宇宙」や「並行宇宙」と訳される概念。
「スパイダーマン」では、ドクター・ストレンジが「マルチバース」を使った魔術がきっかけで、世界中に混乱をきたして、「スパイダーマン」がその混乱を収拾するという物語でした。
今回は、この「マルチバース」を行き来できる少女が現われ、そこから起こる世界の危機を救う物語(スパイダーマンは登場しません)。
この「マルチバース」ですが。
偶然なのですけど、レビューを執筆している2022年5月現在、ヒット中の日本製のあるSF映画にも同じ言葉が登場します。

これは偶然の一致ではなく、「マルチバース」は、物理学の一分野である「量子力学」の用語です。
マーベル・スタジオの造語ではないです。

かねてから、映画の世界で、SFの分野に属するものは、その時代の最先端を行く科学を題材に取り入れてきました。
20世紀の作品だと、「相対性理論」。そこから導かれる、「タイムトラベル」や「ブラックホール」が題材として取り上げられてきました。
21世紀は、この同じ物理学でも、急激に研究が進歩している「量子力学」が取り上げられることが多くなりました。
もともと、ドクター・ストレンジは、1960年代に誕生したヒーローですが、この科学の最先端である「マルチバース」という概念を、彼が得意とする「魔術」とミックスして、作品を構成しているところがとても現代的で評価したい部分です。

<サム・ライミ監督の新作!>
マーベル作品としての前作は、「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」。
「スパーダーマン」シリーズは、3つのシリーズがあって、その第1シリーズ3作品を監督したのが、サム・ライミ監督でした。
「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」があるのは、この最初の3作品がいずれも大ヒットしたお陰といっても過言ではありません。
だから、「スパイダーマン」を引継ぐ本作品の監督に抜擢されたのかな、と思っていました。
確かに、その側面はあるかもしれません。
でも、もうひとつの要素があるのではないでしょうか。

サム・ライミ監督が映画界で有名になったのは、1980年代の「死霊のはらわた」というホラー作品がきっかけです。
彼は「スパイダーマン」を手掛けた時、その「ホラー」要素は取り入れなかった。
もし取り入れていたなら、一般受けはせず、「大ヒット」とまではならなかったと思われます。

そして、本作品。
物語は、「マーベル・スタジオ」らしいヒーローものの展開が続きます。
ところが。
後半に来て、なんと「死霊のはらわた」風な映像表現になっていくのです。
もちろん、本格的に、「死霊のはらわた」にしてしまうと、子どもが鑑賞できない作品になるため、ホラーの要素薄めですが、私にとっては、「死霊のはらわた」が盛り込まれているじゃない、凄いね、となりました。
サム・ライミ監督は、これがやりたかったのかな、と。
アメコミヒーローものに、「死霊のはらわた」の作風を取り入れるということ。
「スパイダーマン」では出来なかったけれど、今回、「マーベル」は彼の功績を称えて、この作風を取り入れ、監督にオファーしたのではないでしょうか。

【全体評価】
本作品は、もうひとつ特徴的なことがあって、本当の敵が、いわゆるヴィランではないのです。
「量子力学」という最先端科学に、「魔術」の要素を取り入れ、ヴィランではない敵と闘う。
ドクター・ストレンジという異色のヒーローにぴったりな、異色な作風とストーリー展開に満足した作品でした。

悶
玉川上水の亀さんのコメント
2022年5月28日

こんにちは悶さん、フォローして頂きまして有難う😆💕✨ございます。
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玉川上水の亀