「マルチバース(なんでもあり)は諸刃の剣」ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)
マルチバース(なんでもあり)は諸刃の剣
予告編を観た時からMCU好きの私でも少し嫌な予感があったのだけれど、かなり的中してしまいました。
その嫌な予感というのは二つあり一つは“マルチバース”という発想です。
『スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム』でこれが成功し、世の中はどうやら柳の下のどじょう狙いの方向性に向かった様です。
しかし多用することに対してのリスクを考えると連続しない方が良いと思うのですが、どうにも流れは止められないみたいですね。
まあ、MCU世界の統一性を図る為にもその方向性で舵を取ったのでしょうが、『スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム』の成功は、スパイダーマンファンの夢を叶える意味もあり、本編以外のゲストに対して強い敬意や愛があり、ヒーローに対してだけではなくヴィランに対してもそれがあったので、多くのスパイダーマンファンはあの作品によりカタルシスを感じたのだと思います。
しかし、本作ではもう既にそれが感じられず、例えば本作でも他作品からの様々なゲストキャラが登場しましたが、私には上記作品ほどの敬意や愛は感じられず、もうザコキャラに近い扱いだった様な気がしました。
それぞれのキャラファンの観客も多くいたと思いますが、こうなると当然その人達はあまりいい気分はしなかったと思います。
作品の出来の話ではなく、作品に対する印象がそれにより下がってしまった人はかなりいたと思いますよ。
確かに“マルチバース”は映画ファンにとって色んな夢が膨らむ道具でもありますが、使い方によっては全く逆効果になる諸刃の剣である気がします。
あと、マーベル作品に関しては、量子世界やタイムワープなどもマルチバースと同様に、なんでもありの作風になりがちなので、このままこれらを乱用すると複雑化し過ぎてかなりコアなマニアしかついて行けなくなり、まだ映画は面白さを保っているがアメコミの様にマニア御用達のメディアになってしまう可能性も見えてきましたね。
それと、もう一つの嫌な予感ですが、それはDisney+配信ドラマとの世界観の共有であり、もうそこまではカバー出来ないという観客の方が現時点ではまだ圧倒的に多いでしょう。
映画だけでもカバーし切れないのに更に配信ドラマまで観とけってやり方になると、これも観客に対するフィルターになってしまうのでしょうね。
まあ今のところ、マーベル映画ファンならカンが働くので本作まではギリギリ楽しめても、このやり方が進むと完全に客層が絞られてしまうので、この方向性って私には疑問しか残りません。
なんにしてもこの作品は、これからのマーベル映画の転換点になる作品の様に感じてしまいました。