「冷徹なステイサム」キャッシュトラック bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
冷徹なステイサム
ジェイソン・ステイサムとガイ・リッチー監督がタッグを組み、フランス映画『ブルー・レクイエム』をリメイクしたクライム・サスペンス。ロスを舞台に、通称『H』を演じるステイサムが、キャッシュ・トラック(現金輸送車)を襲う謎の武装集団の正体を暴き、派手な撃ち合いを繰り広げるガン・アクションとしても楽しめる作品。
冒頭、現金輸送警備会社のキャッシュ・トラックが襲われ、金が強奪され、警備員も殺されるショッキングなシーンから始まる。その警備開会社の厳しい実技試験に、ギリギリで合格した『H』が新入りとして採用される。ある日、その『H』が担当していた輸送車を襲った強盗団を、驚異の戦闘能力で撃ち殺し、周囲はその対応に驚く。また、ある時は、彼の顔を観ただけで、強盗団が逃げてしまうこともあった。
次第に『H』に対して不信感を抱く者が出で来るが、そんな中で、大金が動くブラック・フライディに、現金が集まる警備会社自体を襲う計画が進んでいく。そこに立ち塞がるのが『H』だった。
ストーリーは、時系列が前後して進むが、4つの章立てがされているため、混乱することも無く、5か月前の悲劇が、武装集団と『H』が対峙する因縁となったことも、後半になって明らかになる。また、その武装集団と凄腕の殺し屋のスキルを持つ『H』自身の正体も、意外な展開となって明らかになっていく。
本作は、最初から最後まで、全く遊びの部分が無く、ハード・ボイルド一色に仕上げられている。主演のステイサムも、常に冷静で、且つ残忍で、猛禽類の様な目で、目障りな敵を、躊躇なく狩っていくが、そこには強い復讐心も合わせて描かれていく。また、これまでどちらかと言えば、一匹狼的なイメージが強いステイサムだが、今回は手下を持つボスとしての威厳と冷徹さも兼ね備えている。
今回は、ガン・アクションに偏っており、ステイサムの魅力である、拳法アクションが封印されていたのは、少し残念だった。しかし、リッチ監督が、ステイサムのハードな魅力を全面に引き出し、ステイサムによるステイサムの為の作品として描いている。