かそけきサンカヨウのレビュー・感想・評価
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現実的には思えない空気に渋さを覚える、役者は安定感アリ
インフルワクチンを打った後だからか、眠くなってしまった自分に凹む。子供が苦手なので導入にのれず…。家族の形を誰かに投影してみる美しさは感じられた。
今泉力哉監督の作品は好きだから本作も観たのだが、自分は引き込まれるような会話とそこにある明瞭な心模様が好き。本作はその空白を長回しすることで家族だからこそという温度を感じさせてくれる。だが、そこが眠くなってしまって…。
しかも、割と序盤にすれ違いの修復が終わったこともあって、何か優しい家族像をぬくぬく味わう程度に感じた。まだ若いから、なんて言うとあれだけど、凄く経験をしてきた人が観る景色に写った。つまり、渋いのである。
志田彩良の魅力を知っている今泉力哉監督だからこそ、凄く瞬間的な熱量を引き出していると感じる。彼女が主役ではあるんだけど、鈴鹿央士から見る家族像も何か掴めそうで掴みにくい。複雑が故に届かない「好き」は自分の未熟さから共感へと形を変えていった。
つい数日前にこの監督さんからブロックされていることを知り、ちゃんと真っ向から観れたのかもビミョー。だが、やはり刺さらなかった部分があった訳で、この評価になるのも仕方ないのだと思う。
一番言いたいことが言えないって、好きってことじゃないの?大切だから言えないんじゃないの?
こういうのって、やはり今泉監督だなあって思いながら観ていた。
か弱さ。はかなさ。いじらしさ。思いやり。気遣い、、、、。人として、およそ"優しさ"と形容される感情が、いっぱいつまっている。それはこの中に出てくる誰にも。たまに人間関係が煮詰まってしまうけど、それは優しさと優しさが喧嘩してしまう時だから。だから、胸がぎゅっと締め付けられる。そっと抱きしめたくなる。柔らかく背中をとんとんしてあげたくなる。
その中心に陽がいる。時に弱々しい困り顔で、時に強い意志を持った硬い顔で、時にあどけなく、時に大人びて。透明ではかないサンカヨウ、その姿そのものじゃないか。その陽を演じた志田彩良の存在感の確かさ。この子の前に立ったら、身を律せねばと思わせるくらいの屈強なる純真さ。そのくせ、まだ成熟しきれていない脆さをもチラリとのぞかせる演技巧者。今後、期待大。
なお、「かそけき」とは、幽けき(または、幽き)。今にも消えてしまいそうなほど、薄い、淡い、あるいは仄かな様子を表す語、と辞書にある。
「かそけきサンカヨウ」かあ。はじめただの記号にしか見えなかったタイトルが、抜群にお似合いのタイトルであったことに気づかされた今、暖かい気持ちになっている。
この独特なテンポ感は個人的に好きでした。 感情の機微とかも丁寧に描...
この独特なテンポ感は個人的に好きでした。
感情の機微とかも丁寧に描かれていて、良かったし、
それぞれのキャラクターに愛着がわくというのは
今泉監督らしさなのかなと思った。
サンカヨウに見る母の記憶
幼い時に母親が家を出て行き、父子家庭で育った陽は高校生になった。
ある日父親は、「付き合っている人がおり、その人と再婚する」と言う。
突然始まった、父と新しい母と彼女の連れ子(義妹)との生活。
産みの母親について複雑な想いを抱えながら、陽は“好き”な幼馴染の陸と時を共にする。
非常に幽けき作品だった。
一つずつ問題が解決してもなお、募り続けるモヤモヤ。
主題も問題点も移り変わり、はっきりとしない。
それは幸せか、不幸せか。
今にも消えてしまいそうな、親との思い出、人を好きな気持ち、そして自分の存在。
少年少女は少しずつ大人になっていく。
期待しすぎた自分のせいかもしれないけれど、今回はあまりハマらなかった。
世界観や映像の雰囲気は問答無用で好きだけど、幽けきすぎるというか何というか。
特徴的な登場人物がいるわけでもない、何か事件が起きるわけでもない、やり場のない空虚な空気感はこの作品に合っているんだけれど、それ故になんだか少し物足りない気がして。
志田彩良はとても良かった。
今泉監督のゆったりと流れるけど、説得力のある世界観にぴったりのヒロイン。
ただ、登場人物で1番好きなのは友人の鈴木沙樹。
他の登場人物が優しさで溢れる中、彼女だけはどこか危うさを秘めていた。
ただ決して嫌な奴ではなく、1番人間らしく年相応の難しさと純粋さがある。
タイトル通り、ぼんやりとして印象が薄かったので、もう一度観たい。
その中でも1番印象深かったのは、果物のデッサンに緑の色を入れるシーンと、崎山蒼志さんの歌う主題歌『幽けき』。
暗号のようなタイトルには初め困惑し、かそけきもサンカヨウも初耳だったが、意味を知り納得。やけにしっくり来るようになった。
日本語って素晴らしいよね。
余談:劇中の入院土産のプリンを見て、無性にプリンが食べたくなったので帰りにコンビニで買って食べました。
美味しかったです。
なんかあまりにも・・・でもなんか分かる
なんか色んなことがあまりにもきれいすぎるし、あまりに泣かそうという内容なので、できれば見ないでやり過ごしたかった作品。決して悪い作品ではありません。むしろ、悪いのはこの擦れまっくてしまっている自分の性根であり、この映画は汚れもなく、輝いておりました。だからこそ、映画の中の出来事をパクるわけではありませんが・・・この真っ直ぐな作品に距離感を感じてしまうような─よくわかんないけど・・・
まぁ人の美しい部分をメインにして、多少悪い部分も入れながら、より一層その美しい部分を光り輝かせていた、といった印象の映画でした。
優しさで溢れてる作品。
起承転結ははっきりしない。けれど、若者、とくに10代の複雑な内面を上手く表現できている作品だった。
登場人物みんなが優しくて、良い人で、見終わったあとは自分も良い人間になったような気分に。
疲れた時に見ると心が救われそう。
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高校生は自分が将来どうなりたいのか、進路はどうするのか考える時期。それと同時に、今までよくわかっていなかった家族のこと、今回の作品中だったら父の単身赴任、嫁姑問題などが見えてきてしまい、家族についても悩みを抱えてしまう時期でもあると思う。
そんな若者の葛藤と、それを乗り越える姿を描いた作品だった。
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高校生役の2人、主演の志田彩良と鈴鹿央士のとにかく眩しくて...
デートに誘うシーンとか、告白に対してわからないって答えるシーンとか、めちゃめちゃリアルだなって。
自分も高校生のときは自分のことなのに、「わからない」が多かったことを思い出して甘酸っぱい気持ちになりました...🥺💕
家族と自己肯定感の相関関係
原作は読了済。
自己肯定感ってとても大事。友人関係、恋愛、仕事といろんなものに影響を与える。人間は最初に自己肯定感を与えてくれるはずの家族から愛されていないと感じてしまうといろいろとこじらせてしまう気がする。
本作では、幼い頃に母が自分を捨てたと思う陽と、自分は何も持っていないと思う陸が登場する。2人ともとても控えめ。彼らが家族との関係の中でどのように自己肯定感を上げていくかの表現がよかった。
実の親であっても離れて暮らす陸と、血の繋がっていない人たちと家族を始めた陽。とても対照的だ。家族って血の繋がりに寄りかからずに家族であろうとすること、家族としての思いやりを持つことの大切さを感じた。
陽と陸を演じる俳優は、ドラマ「ドラゴン桜」のイメージが強く残っている2人。志田彩良の違和感はあまりないが、鈴鹿央士は雰囲気の違う役で驚いた。彼は「蜜蜂と遠雷」でも違う雰囲気の役だったことを覚えている。映画の終盤にはドラゴン桜のイメージなんて思い浮かばないくらいに陽と陸だった。素晴らしい。
サンカヨウの花の透明度をそのままに感じられる、純粋で繊細なお話。 ...
サンカヨウの花の透明度をそのままに感じられる、純粋で繊細なお話。
スルッと人数が増えて賑やかになる。
その変化に向き合う陽が愛おしく儚いものを見る様な気持ちでしたが、原作と違う後半で随分と大人びてしっかりした印象に変化するのは、映画で膨らんだ良い展開でした。
新しい家族、会った事のない母親、好きな人、それらがぐるぐると渦を巻いている自分でも気づかない緊張感、心が溶ける様子にウルっときて清々しい気持ちに。
映画に魔法を吹き込む術でもあるのかなぁ
今泉力哉監督の静かな快進撃が止まらない。
父と二人で暮らす女子高生の陽。父の再婚を機に始まった義母や連れ子との新しい生活、同級生との恋、幼い頃に家を出た母親との再会などなど、さほど興味がないエピソードのはずなのだが。
愛おしい時間だった。
ずっと観ていたかった。
また魔法にかかってしまった。
長回し。
かそけきという言葉もサンカヨウという花も知らなかったので、一応下調べして鑑賞。
今泉力哉監督作品はここ最近毎回見てるので、今回も期待。
この映画は多くのシーンが1対1の対話で出来ている。父と娘、新しい母と娘、友人同士などなど。
そのほとんどが独特の長回しで、会話の間にある感情みたいなのを読み取るような構成だった。
その対話の中で、そこにいない誰かのことを思いやったり、常にその対話には誰かを思いやるような感情があって、鑑賞が終わってから「なるほどサンカヨウってそういうことなのかな」と感心。
とても優しい映画だと思う。個人的に喫茶店でアルバイトしている子の本心を語らず、しかし気持ちを押し殺さず、みたいな中井友望さんが良い味出していたと思う。
父役を演じた井浦新さんも彼の人柄そのままのような優しい人。
ただ、正直長回しが多くて、皆の話し方も優しいので、後半ちょっと退屈してしまった。そんなに長時間映画でないのに、長く感じてしまった。内容的に悪いとかではないが、みんな優しすぎるから子守歌とか絵本みたいに自分には感じてしまった。これは自分の感性の問題かもしれないが。
その時のコンディションや心情で違う見方をしてしまうから映画と言うのは難しい。
作ったことないのに偉そうなことを言うが、本当制作するという事は凄いことだと思う。
自分も通ってきた時代だろうけど
今泉監督というだけでざわつき、期待の高まりを感じます
親や同級生、異性の友人など、どこか共感できる似た体験を思い出せそうな、観ていて懐かしさ、つらさ、残酷さ、入り交じった思いがありました
自分で選ぶことのできない親子や家族関係の中で、よその家庭が自分のところとは違うことを知り、その与えられた環境の中で折り合いをつけて生きていく、主人公の陽の父との二人暮らしも、いなくなった母親とのことも、思うことはあったろうに彼女なりに折り合いをつけていたであろう
それが父の再婚を機に、新たな家族を作っていく過程の中で、悩み苦しみ、そして同級生陸への思いとも重なって、前向きに生きていこうとする陽の姿に、娘を持つ自身としては自分の幼かった過去と親として子を見る思いを重ねていました 原作は未読ですが、原作と違うところがあったとしても、志田さん鈴鹿さんの気持ちの揺れは、年取った今の私が観ても時めくものがありました
他の方も指摘されている同級生役の中井さん、ああいった役回りもほろ苦く感じるものでありました (10月21日 京都シネマにて鑑賞)
小さな温もりの芽生え
心で向き合う長回しの対話、その画に漂うは否定のない理解の気持ち。いつも、単調に内面の変容を描くことに優れている、それを今作でも引出していた。単純なようで複雑、逆も然りな日常。明快な結論など求めずに互いを受け入れてみたときに、咲く花がきっとあるはずだ。
かそけき=幽けき
見終わった感想は
ストーリーの展開に拙速さがなく
焦らずじっくり進めていく
演出に自信があるからこそできる
今泉監督の貫禄が印象的でした
無駄な音楽がなく
会話劇と絶妙な間を
恐れずに使い
反対に音楽がないことを
わざとらしく見せないのも
好印象でした
細かい演出には
少しだけ疑問があったかな
例えば
スマホがある時代なら
サンカヨウをわざわざ喫茶店の本で見る必要ないし
サキとの会話劇でも、ミュージックのない喫茶店って
なにか不自然だった
高校生って、もっとこうバカっぽい会話するかな
そんな事も思ったりしましたが
それらはご愛嬌の範疇で
全体のバランスやテンポが終始保たれた
良作だったと
しみじみ感じます
かそけき=幽けき
無学の私には初見の言葉でした
勉強になりました
あと義母役の菊池亜希子さんが
以前にも増して長澤まさみさんに似ていて
一瞬見間違えるほどでした
小さな美しい映画
現実の生活の中にある空白の時間の様なもの
長い人生のほんの一瞬 青春の淡い恋
生い立ちに引きずられる事のないよう自分の内心で解決するたくましさと凛々しさ
家族の変遷との向き合いと慈しみにほっこりする
志田彩良という女神が君臨!
独特の“間”と空気感、そして包み込んでくれるような優しさと温かさを持つ今泉力哉ワールド!今作も力哉イズムが炸裂です。
大人の階段を昇る多感な時期での父の再婚と新たな家族、実母との再会に淡い恋‥、陽が想いを寄せる陸も自身の病気のことや父親不在と、嫁姑問題などが絡むなど、いっけんポジティブ要素が少ない(問題が多くなりがちな)テーマをまさかの円満かつポジティブに描き出しているところに今泉監督の優しさが溢れている(原作読んでないのでどの程度脚色されてるのかわかりませんが)。
キャスト達には監督作品にお馴染みの顔がちらほらと見られたところにもファンとしては嬉しい限り。
にしても、志田彩良の圧倒的な透明感と瑞々しさよ。なんて可愛いんだ!!
特に最後の方の西田尚美と鈴鹿央士がテーブルを挟んでのシーンにグッときて、ほろっときた。
この作品を観た後、無性にレコードが聴きたくなったよ。
迷ってるなら是非観て欲しい!
こんなに静かに進行する映画は珍しい
「キャッシュトラック」「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」「サウンド・オブ・メタル」「クライモリ」と騒がしい映画を観続けていると、この作品は静かでほっとする。日本映画にも「孤狼の血」のような暴力的な映画があり、それはそれで決して悪いわけではないが、やはりこのような落ち着いた映画が日本らしいように思う。先日観た「光を追いかけて」も素晴らしい青春映画だと思ったが、この作品はそれ以上だろう。カメラもほとんど動かすことがなく、ストレスを感じさせることがない。井浦新と志田彩良が演じる親子の長い場面は長回しで見ごたえがあるが、役者としては難しいシーンだったろう。
そんななかで、私が一番いいと思ったのは鈴鹿央士と中井友望が演じたバスケット場でのシーンである。中井が演じる少女の気持ちが何ともいじらしい。
志田とともに中井にも女優としての成長を期待したい。
会話の間が絶妙
今泉監督は、演者の素の魅力を引き出すのがうまいよね。途中から志田彩良が初恋の女の子に感じてしまってドキドキ感が止まらなくなってしまった。このまま魔法が解けませんように。
それと、会話の間が絶妙なんだよね。次の言葉がちょっと待たされる感があって、待っている方は、非言語情報から相手の気持ちを無意識のうちに探ってしまう。その様子がうまく切り取られていて、登場人物の心情とシンクロできる。
小雨の中、公園で沙樹が陸に言ったセリフが切れ味すごくて、すごく印象に残った。その後のバスケットゴールのシーンは、なんでもないシーンなんだけどすごく切なくなった。今泉マジックだよね。
大作のラッシュ続きで、目立っていないけど、ロングランになるといいな。
永遠の未完成
3歳の頃に母親が出ていき父親と二人暮らしだったが、父親の再婚によって新たな母親と4歳の妹を迎え4人家族となった女子高生の話。
別に疎ましく思っている訳ではないけれど、自分の居場所がしっくり来ず、母親の水彩画の個展を訪れて…。
主人公のみならず、仲良しボーイは父親が海外を駆け回っていて母親と父方の祖母との3人暮らしだし、他にも母子家庭の娘がいたり、今はこういう家庭多いですからね。
どれとも少し違うけど自分が育った環境も家族が揃っていなかったからかな、自分の性格や考え方は登場人物とは全然違う(と思う)けれど、共感できるところとか、共感とはいかずとも気持ちは察しやすいところとかが多くて、機微の幽かなところもある作品だけど面白かった。
全てが上手く行ったり、思い通りに行く訳ではないけれど、みんなそれぞれ考えて、みんなそれぞれ努力して、そしてみんな人に優しい、こういう映画も良いもんだ。
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