劇場公開日 2021年10月15日

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「間や余韻のなかに何を感じるかの物語」かそけきサンカヨウ 映画野郎officialさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0間や余韻のなかに何を感じるかの物語

2021年11月17日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

お恥ずかしながら「かそけき」という形容詞も「サンカヨウ」という花も初めて聞いたため、最初タイトルが全く入ってこなかったが、映画を通してそこに込められた意味がじんわりと染み渡ってきた。

「幽けき」と書く通り、幽霊のように今にも消えてしまいそうな薄い、淡い、仄かな様子のこと。
「サンカヨウ」は成長が早熟で水に濡れると透明になる花。そして、花言葉は「親愛の情」だった。

原作があるからか今泉力哉監督らしい恋愛群像劇は見られなかったが、自然体のやりとりで間を巧みに使い余白を残すことで観る者に多くを想像させる優しい演出は健在。
役者たちの表情の機微で魅せる。カットがかかるまでの余韻を上手く使っている気がした。

やりたいことを実現する、家族や大好きな人と一緒に暮らす…人生において何が正解かではなく、その人にとってどうすることが幸せなのかを見つめ直すことが大切。
価値観は人それぞれ。状況や心境によっても変わるもの。

自分では何も持ってないと思っていても、誰かにとっては力になったり必要とされる存在だったりする。
何者かになろうとしなくても、想いを明確に決めなくても、流れに身を任せることも大事。
一方で生き続けることが幸せではないこともある。

そんな、あまり多くを語らず答えをしっかりと出さない、でも外側からふんわり包み込んでくれるような作品。

もの語りたがり屋