「足踏む恋」かそけきサンカヨウ ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
足踏む恋
今回も今泉監督がやってくれました。この淡い雰囲気がとっても好きです。
幼馴染が喫茶店に集まって話す様子、ここだけでも羨ましいなと思いました。自分自身喫茶店に行くことがないので、こういう何気ないシーンも心地が良いです。
父子家庭の主人公・陽。家事を一手に担うあたり、大人にならざるを得なかった子供の感じを醸し出していました。自然体で物語がスッと胸の中に入ってきました。父と娘の関係も良好で、些細な会話にもニコニコしてしまいました。
父親から恋人ができ、その人と結婚すると言われたらさすがに動揺してしまいます。伝える雰囲気も井浦さんの優しい言葉遣いもあり、何とも言えない空気になります。父と恋人が出会う流れも映画関連の仕事で会うっていうのも中々良い出会い方だなと思いました。映画の音楽と翻訳・通訳、どっちも映画にとっては大切なものなので、そこが繋がるというのも映画とリンクしていて面白かったです。小さな妹・ひなたの侵略はまるで怪獣の様で、あっという間に父親も虜になり、陽は少し置いてけぼりにされます。ひなたを見つめる視線も嫉妬心が詰め込まれてて、とても歯痒かったです。
ひなたの自由奔放さは思春期の陽にとっては騒がしく、鬱陶しいものと感じていたのだと思います。おにぎりを食べた手でスカートを触られるのも汚れてしまうし、気に障ってしまうものだなと思いました。自分も子供とふれあう時に汚れを気にしてしまうこともあるので、すっごく共感してしまいました。ひなたが本を破いてしまい、陽が怒るシーンも意味がしっかり込められており、ちゃんと2人が謝り、本を修復していくシーンは家族を形成していく形とも取れて素敵でした。
友情の描き方も上手で、陸との恋愛ととってもいいか分からないシーンがモヤモヤするけどとっても可愛らしいものになっていました。陸の行動がイチイチ可愛くて、超鈍感だけれどとっても優しい人間で、嫌味が全くない素敵な人間です。心臓に病を抱えており、夢を諦めざるを得なかった陸は同情以上に人を想っており、沙希の日常での悩みにも寄り添っていて本当に理想的な男です。沙希もかなり人を疑う子なのですが、陸と陽をひとつ繋げる架け橋になっていました。すごい上手い人物配置だったと思います。
父親が映画に音楽をつける作業を陽に見せているシーンにもある通り、色々な人の恋愛、友情はその場その場で描かれるもので構築されているんだなと思いました。
相変わらず素敵な映画でした。可愛いが凝縮された美しい映画でした。志田彩良さんや鈴鹿央士さんを長いカットで観れる贅沢なショットにも心打たれました。役者陣の落ち着いた演技に思わずホッコリしてしまいました。今泉監督、ついていきます!
鑑賞日 10/16
鑑賞時間 12:55〜15:00
座席 D-7