劇場公開日 2021年9月23日

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「もう少し重厚感がほしかった」MINAMATA ミナマタ pekeさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5もう少し重厚感がほしかった

2021年10月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「映画は面白ければ、それでいいのだ」といつも言っている僕ですが、この作品はちょっとそれだけではすまされないような気がします。
その理由は、言うまでもなく、本作が、現在も継続している、ひじょうに重い、センシティブな問題を扱ったものだからです。

たしかに面白かった。いや、面白かったと言えば語弊があるな。
とにかくエンターテインメント作品としては、よくできていたと思います。

それでいいといえばいいのかもしれないけれど、でも、肝心なテーマの重さがいまひとつ伝わってこなかったようにも思う。ストーリーがテンポよく進むのはいいのですが、その分、テーマじたいの深刻さが薄れているような印象を受けたというか……。もう少し重厚感がほしかった。それに、これほどシリアスな題材なのに、全体的にイマイチ緊張感に欠けるようにも感じました。

要するに、うまくまとめすぎてない? という気がしたのです。「ユージン&水俣についてのダイジェスト版」みたいだなぁ、と。
まあ「事実に基づいたフィクション」なんだから仕方ないのでしょうが、その一方で、これでいいのだろうか? と僕はいささか懐疑的なものを感じてしまいました。このテーマは、そんなに簡単にまとめられるものではないはずであり、まとめてはいけないものだと思うからです。

タイトルを、『EUGENE SMITH』ではなく、『MINAMATA』にしたんだから、そこのところをもっと突き詰めるべきではないのか? 本当なら上映時間を3時間くらいにして、ユージンが地元の人々との関係をじょじょに築いてゆく様子などを、もっとじっくりと丁寧に描いてもよかったのではないか? などと思ったりもした。

今回もまたいろいろとケチをつけて申し訳ないのですが、ついでだから、そのほかに気になったことを以下に記します。

◇水俣の人々の「生活」にリアリティーが感じられない。これには、画面から湿度や匂いがまったく感じられないということも原因していると思う。季節を夏に設定して、「汗」を映し出したほうが効果的だったのではないか。
◇エキストラの地元住民たちから、辛酸を舐め尽くしている人々の雰囲気が感じとれない。手を使って、体をつかって働いている人の顔ではない。「頭の人」の顔が多すぎる。エキストラ選びにもこだわってほしい。
◇当時の水俣に、あんなリゾート地のコテージのような民家があったのか?
◇民家の内部にも違和感がある。とくに照明器具がお洒落すぎる。

などなど――。

それから、この映画を観た、水俣の人々、チッソの元社員、現社員たちはどんな思いを抱いたのか、そのあたりのことも大いに気になった。というか、それがいちばん気になりました。

ネガティブな意見を並べましたが、本作が、水俣をはじめとする環境問題に希望をもたらす契機のひとつとなることを期待しております。

追記
中盤、ユージンが奮起するところで流れる音楽が『ラスト・エンペラー』で使用された曲に酷似していると思ったら、この映画の音楽も坂本龍一なのね。教授、あれいくらなんでも似すぎでしょ。

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peke