劇場公開日 2021年9月23日

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「再びの黒船来航」MINAMATA ミナマタ くーにー62さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0再びの黒船来航

2021年10月10日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

「アウシュヴィッツ・レポート」に続けて観たヘビーなテーマの作品。こちらも人間の尊厳を守るために戦った人々、主人公は言わずと知れたユージン・スミスの物語。史実にどれだけ沿っているのかはわからないが、被告企業チッソがそのまま登場していて好印象。被害者支援団体の内紛、警察権力の介入といったエピソードも挟む一方、悪人顔の國村隼社長が自ら札びら切るとか、LIFE誌が出てすぐに補償を決めるっていうわかりやすい展開は、まあ映画だからしゃあないね。
しかし全体としてよくできた映画だと思う。人間性の回復という重いテーマを扱いながら、ちゃんとエンターテイメントとして成立してる。抑制された演出とカメラ、美術も素晴らしい。音楽は、ラスト・エンペラーが飛び出して驚いたけど、いい感じに坂本教授の味。
「アウシュヴィッツ〜」もそうだけど、今も続いてるぞというエンドロールのメッセージが効いた。そっとしておいてほしい、という声は今も水俣にあるそうだが、世界の耳目を集めたのはユージン・スミスだし、再び光を当てたのはジョニー・デップだし、やはり外圧に弱い日本は黒船が来ないと動けないのかね。

くーにー62