「写真は撮る者の魂をも奪う だから本気で撮る」MINAMATA ミナマタ 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
写真は撮る者の魂をも奪う だから本気で撮る
1971年、アメリカを代表する写真家のユージン・スミスが、日本の水俣病を世界に知らしめようと身を削って写真を撮り続けた実話に基づく物語。
お恥ずかしながら存じ上げなかった。
こんなにも志を持ち、水俣病と日本に身を投げ出して寄り添おうとした外国人がいたなんて。
水俣病のことも、どこかで知っているようで知らなかったことがあり、日本人として恥ずかしい限り。
安倍前首相が水俣病克服発言をしていたことすら知らなかった(多分忘れていた)。
本当に自分の無知が恥ずかしい。
映画本編は非常に静かにかつ美しく、時に残酷に。
静けさが訴えかけてくる現実にどんどん引き込まれる。
坂本龍一の音楽の中で日本の風景や人々を美しく温かみを持って描いてくれた点、本気で水俣病を描こうとしてくれた点には感謝しかない。
ジョニー・デップが誰か分からないほど本人にビジュアルを寄せていて、演技も素晴らしい。
美波、真田広之、加瀬亮、浅野忠信、國村隼など海外でも活躍する日本人キャストも流石。
個人的には、スミスを慕う水俣病罹患者の少年を演じた青木柚、そしてスミスともう1人の功労者である編集者ボブ役のビル・ナイも良かった。
一つだけ不満点としては、多少説明不足だった点。
静かなものの引き込まれる作品なのだから、もう少し長くても良かったのでは。
スミス氏はアイリーンと結婚し、チッソ工場での暴行による後遺症を拗らせて亡くなった。
晩年は(映画でも少し描かれていたが)、後遺症による神経障害と視力低下でシャッターを切ることやピントを合わせることも難しくなっていたらしい。
それでも、日本や日本人を恨むことなく59歳の若さで亡くなった。
第二次世界大戦での負傷や飲酒が多少関係しているかもしれないが、命をかけて「MINAMATA」の真実を撮ろうとする姿勢には、映画を超えてグッとくるものがあった。
エンドロールに挙げられていたように、世界にもまだまだ沢山の公害があり、その苦しみが絶えることはない。
明確に対象となる害悪は被害者を出来る限り救済し、我々はもっと多くの真実を知り続けるべきだと改めて実感した。
はじめまして 琥珀糖と言います。
ご挨拶が後になって失礼いたしました。
不躾にフォローしてしまいました。
唐揚げさんの無駄のない美しい文章と内容の的確さ。
頭の良い方だと、少し臆した気持ちになっています。
フォローして下さってありがとうございます。
元気と無鉄砲、大雑把、テキトーな人間ですが、
誠実に・・・それだけは心しています。
よろしくお願いします。