劇場公開日 2022年2月4日

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「沖縄ロックのレジェンドに対するリスペクトはかなり薄め」ミラクルシティコザ カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)

2.5沖縄ロックのレジェンドに対するリスペクトはかなり薄め

2022年2月14日
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1975年の「紫」の8・8 Rock Dayでの本土デビューは衝撃的だった。
ファーストアルバム「紫」とセカンドアルバム「Impact」を引っ張り出して来た。当時2300円のLPレコード。評論家の植草甚一と新譜ジャーナルの編集長だった岩永文夫が紹介文を寄せている。ファーストアルバムのジャケットの表は爆撃機、裏は長崎に投下されたファットマン。セカンドアルバムには硫黄島の星条旗のモニュメントのパロディで旭日旗の真ん中に紫のロゴが入った旗をメンバーが建てているイラストが入っていた。平和ボケのシラケ世代の本土人からすると、違和感が強いジャケットだった。友達からは「ダサい」と言われた。しかし、日本でもアメリカでもない沖縄で朝鮮戦争、ベトナム戦争を経て、サバイバルしてきた混血の彼らにとって、本土の音楽プロデューサーが仕掛けたデビューアルバムのジャケットのデザインなどどうでもよかっただろう。中身では負けない自信があっただろうし。
沖縄返還前の1960年後半から米兵相手にクラブ、ディスコで演奏してきた彼ら。単なるディープパープルの柔なコピーバンドなんかではない。
ファーストアルバムの Lazy 以外はみなオリジナル曲で、インスト曲もある。リーダーのジョージ紫はずっと謎のベールに包まれていた。ジョン・ロードばりのハモンド奏者。先ほどウィキペディアを見てあぁやっぱり。相当なインテリだった。
映画では二枚のアルバムのトップナンバーの Double Dealing Woman と Doomsday、さらにバラード調の Mother Nature's Plight が流れた。城間兄弟(双子)の曲。歌詞もすぐに思い出せ、歌いたくなった🤭
今はきのうなに食べたかも思い出せないのに、 当時はかなりヘビーローテーションで聴いていて、ギターリフをコピーしたりしていたからね。
本土のロックとは比べ物にならないほど、ハードで、タフで、ワイルドだった。ドラムの宮永英一は沖縄で最も人気の高いコンディション・グリーンと紫を行ったり来たりの引っ張りダコ。袖を落としたジーンズのジャケットを着て、鍛え上げられた腕を自慢げに組んでニヒルな表情を作っていた。
「ワイルドだろ~」のスギちゃんの何倍もワイルドだったのよ。まだ現役!不動産会社の社長なんかじゃない。
酔っ払って喧嘩する兵隊はヘボい演奏にも容赦ない。マネージャーを気取って搾取しようとするヤクザから自分たちのハコを守らなくてならなかった。フィリピンバンドは強力なライバル。コザのセンター通りで揉め事があるとMPはすぐにマシンガンをぶっぱなしたし、住民もついに米軍にたいして暴動を起こした。そうした時代をくぐり抜けてきた沖縄ロックのレジェンド達に対するリスペクトは薄かった感じ。監督若いから、世代感覚の違い?
タフな時代の描写にもおおいに不満を感じたが、低予算だから仕方ない。プロデューサー逹に少ない予算からさらにみかじめ料を持っていかれたかもしれないしね。
でも、コザのロックじじいたちは古稀を過ぎてもパワフルにやっていることが最後に確認できたので、よし。
タイムスリップファンタジームービーだからね。
ストーリーもマーミー役の細い美人さんにあんなことさせちゃう?と思いましたけど、検閲済みのハンコの手紙のシーンはよかったです。

カールⅢ世