「良くも悪くも水谷監督の映画」太陽とボレロ kmさんの映画レビュー(感想・評価)
良くも悪くも水谷監督の映画
クラシック好きで西本智実さんに惹かれたのと、長野には縁があることと、応援している方が出るからという理由で見てきました。
まず、西本さんが素晴らしかった。指揮する姿の迫力たるや。
子育てとコロナで長期間生演奏を聞けていない身に染み渡りました。
ストーリーや設定等には所々に違和感を覚えるところもありましたが、深くリサーチや考証をして詰め切れない(あるいは、ご自身の感性を重視してあえて詰めない)というのもまた監督の選択なのだろうと思いました。
全体的にはユーモアと優しさあふれる作品だと思います。
ただ、それだけに、お別れ演奏会で参加できないメンバーを作ったところは賛同できません。
リアルな世界ではプロと一緒に演奏する場合はアマチュアからは選抜メンバーになるということは知っています。ですから、プロオケと一緒に選抜メンバーが演奏するのではく、アマチュアオケメンバーを西本さんが指揮する形でのラストコンサートにしてほしかった。(それだとオケの技量的に西本指揮を堪能しきれなくなってしまうのですが、それはそれとして。)
オケは人数が揃わないと演奏できません。よって、お別れ演奏会に参加できない人はおそらく大半はそのまま演奏生活が終わってしまいます。選ばれなかったメンバーは、下手だからラストに参加する資格がないと言われるようなものです。これでは楽団が終わりに向けて一つにまとまるのは、心理的に難しかったのではと思います。
兄弟が客席で並んで鑑賞することで二人の確執が緩和したように見せるという表現を優先するために怪我までさせて演奏の機会を奪っていたのも後味が悪く感じました。
こう感じるのは私自身が一人ではできない合唱を下手ながら愛し長くやっていたためだと思います。
おそらく水谷監督はそういうアマチュアの「うまくはないが愛はある」メンバーの気持ちや技量から来る内部の確執までは想像できなかったのだろうな、と感じてしまいました。
映し出される緑あふれる風景は素晴らしかったですし、演奏内容も素晴らしかったことなども加味して、全体としては☆3とさせていただきました。