そして、バトンは渡されたのレビュー・感想・評価
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子どもを想う親の愛が溢れる映画
他の方も書いていますが予備知識なしで観た方が楽しめる構成になってます。
私は原作は未読なのですが大まかなあらすじは知った状態で鑑賞しました。
原作通りなのか、映画での演出なのか?
みぃたんと優子の2人それぞれを中心として2つの軸で物語が進みます。
早くに母親を亡くして父子家庭のみぃたん。
そんなみぃたんに梨花という新しい母親ができます。
梨花は血のつながらないみぃたんに沢山の愛情を注いでいきます。
優子も血のつながらない森宮という父親と2人暮らし。
血のつながりはなくとも、森宮も優子を大切にし深く想っています。
そして2つの物語は1つに繋がっていきます。
普通より多い親それぞれに大切にされ愛を注がれて成長した背景を知る展開に涙が止まりませんでした。
自分の欲しいもののためには手段を選ばない梨花に振り回されたみぃたん。
梨花は見方によっては自分勝手で傲慢にも思えるかもしれませんが、全てはみぃたんへの深い愛だったんだなと思いました。
梨花の想いを受け止めた優子の気持ちにまた泣きました。
でも2人にはやっぱり再会して欲しかったなぁと思います。
そして、森宮の優子を想う気持ちが深くて、彼の泣き顔にはこっちもつられて泣いてしまいました。
血がつながらなくとも深く想い合っている森宮親子がとても素敵でした。
2人の母と3人の父が繋いで育んだ愛とタイトルが繋がって、2人の幸せを願いながらとても優しい気持ちになれる映画でした。
何度見ても私は号泣すると思います(笑)
キャスティングに尽きる
なんと言っても、ヒロインの永野芽郁に高まる。
彼女の笑顔は確かに救われる。
あんな娘を持ったら、そりゃ親だったら尽くしたくなる。
また、何年経とうが、美貌が変わらない石原さとみだからこそ、通じる映像トリックだろう。
奔放な血の繋がりの無い母の謎が
苗字が何度も変わってきた少女の物語でしたが、
途中まで不思議だったのは、少女との血の繋がりの無い再婚で母となった女性の奔放さ。
そしてせっかく再婚して奥さんになったのに、夫がブラジルに行くとなった時、勿論遠すぎるし相談なく決められたのはあるけど、夫の連れ子と2人で貧乏暮らしでも母子家庭として何故そこまで頑張れるのか、
何故そこまで血の繋がりの無い少女を苦労して育てられるんだろうか、という疑問がずっとありましたが、
最後に全て語られて腑に落ちました。
また、過去に複雑な状況を体験すると、身を護る手段の1つとしてやたら笑ったり愛想よくしてしまう子ども時代になってしまうのもよく分かりました。自分の状況がどうも周りの同級生達と違う、と分かってもいちいち干渉されたくない、何か普段の家の状況を説明して「えぇっ?あなたいつもそうなの?!!」みたいに驚かれるのももう鬱陶しい。なるべく中休み昼休みは友達に話題を振って自分は頷く係に徹し自分に極力話題が振られることのないように気を付けるのが常態化しますから、
おそらくここを脱却出来るのは学生時代が終わり、大人になってから。そして自分とは異なるけれどやはり難しい家庭環境に悩んだり苦しんだり反発したりして苦労してる人に出会ってようやく「私の場合は親との関係性はこんなふうだったよ」と、吐露出来るようになって、色々なことが昇華されて、ようやく普通に生きていけます。そこの描写はよく出来ていて、共感しやすかったです。
3人もの父親達が穏やかに娘の結婚式で顔を合わせるなんて、なかなかなり得ない幸せな状況だと思いました。
実の父親ではなくとも、田中圭さんのお父さんぶりがとても好感の持てるとても良い演技でした!
ヒノマルソウルでは元エリートスキージャンパーにしか見えなかったのに、今度はちょっと冴えないけれど真面目な優しいお父さんにしか見えなくて、俳優さんて凄いな、と思いました。
彼のバトンが無事に渡せて良かった。
途中自然に涙が溢れる良い映画でした。。!
安心して鑑賞できる映画
過去と現在を同時進行させ、後半で一つにつなぐストーリーが多いですね。
こちらは、二つのストーリーが一つなんだと分かりやすく、伏線のはり方と回収も分かりやすい。変に頭を使わないで済むので、登場人物やストーリーを素直に受け入れられる。ラストも意外性は少ないが、心優しい気持ちになれる映画。
キャスティングの勝利
悪人のいない、全て愛に埋め尽くされた世界。
テレビ画面っぽさが漂っていて、リアリティが薄いシナリオにかなりの無理を感じなくもないのですが、全てオッケーとしてしまう説得力を石原さとみさがもたらしていて、配役の勝利でしたね。
バトンの意味がわかるラストには、場内のあちこちからすすり泣きが。
最近は「1,900円払って失敗したくない、外したくない」ってユーザー心理を突いて、感情を揺らすのが効果的って狙いで「泣ける」「感動する」などを宣伝のキャッチに入れ込むことが多いけど。
個人的には泣かせにくるあざとさが鼻につき、「自分の感情は自分に任せて決めつけるな」って思って斜に身構えてしまい逆効果。
キャッチコピーと予告編が、ミステリー的な展開となるはずの母の失踪理由も観る前に予想できてしまう素材として機能してしまい。
そのせいでうっすら涙ぐみつつも、「なんだ、娘視点の和製『マンマ・ミーヤ』はお涙頂戴かよ」「予想の範疇を超えず意外性がない」と、否定的な気分が心の半分くらいを支配してしまい、もったいなく思いました。
めちゃくちゃ面白"そう"な映画
今月1番楽しみにしていた映画。
予告はめちゃくちゃ面白そう、演者も完璧、「こんな夜更けにバナナかよ」の監督だし、こりゃ間違いないだろう!と期待大で鑑賞。公開日に楽しみな映画を見れる幸せ。最高ですね。
...あ、あぁ...。どうしてこうなった。
面白そうだったのに。決して面白くない訳では無い。かといって、面白いとも言えない。面白そう止まりなのだこの映画。
名字が4回も変わった高校三年生の優子(永野芽郁)は、料理上手な義理の父・森宮さん(田中圭)と2人暮らし。卒業式の伴奏をすることになった優子は必死に練習しながらも、料理人になるために受験勉強に勤しんでいた。
これはもうわざわざ言うほどでもないのかもしれないけど、素晴らしい配役と最高の演技でした。
永野芽郁はとにかく可愛いし、ピアノ実際に弾いているのかな?すごく上手かった。泣いている姿も笑っている姿も美しく、やっぱり彼女が主演だと雰囲気が良くなるなぁとつぐつぐ感じる。
田中圭もあまり好きな俳優ではないけれど、今作は超適役で結構好きになった。不器用で女心分かっていないお父さん役を見事に演じ、くしゃっと笑う姿や崩れるように泣く姿には引き付けられ、個人的にはこの作品で一番好きな登場人物だった。
石原さとみもお母さん役とても良かったし、大森南朋も市村正親もいい味出していてまとまりがあった。
登場人物一人一人丁寧に描かれていたためか、役者も完璧になりきっており、演者に関しては文句のつけ所のなかった。
そして美術が素晴らしい。
家全体に広がる寂しさと虚しさが美術を通して描かれており、登場人物のファッションもかなりこだわりがあるようで非常に良かった。特に、永野芽郁の服装は常に可愛くてファンとしては最高だった。個人的にはスパゲティを食べている時の服装が1番好きです。
ラスト2.30分の伏線回収には驚いた。
意外な展開が待っており、そういうことかの連続。なるほどなるほど、と見ているとジーンと来た。想像できるっちゃできるのだけど、あのシーンはずるいや。まさかこうだとは思わないもんね...。令和最大のベストセラーなだけあります。
ただ、冗長で退屈だった。
140分近くあるのにも関わらず、そこまで大それた内容ではないしそこまで長くある必要はなかった。出だしのせいか引きが弱く、話に乗れないまま進んでいくため全然楽しめない。雑な部分も多く見られ、丁寧なようにみせかけて全くもって丁寧じゃない。雰囲気に騙されているような気分で、「んー、なんだかな」という展開が続き飽きそうになった。
登場人物の描きはしっかりとしているものの、ストーリーを進めていく様が非常にもどかしく、遠回りで、中身が無い。感情移入なんて出来たもんじゃない。後ろの人めちゃくちゃ泣いてたけど、どこでそんなに泣けたの?と疑問。キャラクターが単体でしか動いていないように見え、主人公の周りをぐるっと囲んでいるものの触れることを恐れているような、変に気を使っているような感じがした。その結果、思い出が薄っぺらくて人物同士の絡みに弱さを見受けられた。
いまいちハマれずに進んでいく前半、友情や愛情の表現が粗すぎる中盤、どこで泣けるか分からない後半、違和感しかない結末。なーんにも考えずにみたらもしかしたら意見が変わったのかもしれないけど、個人的には大筋と登場人物以外に面白みを感じず、ずっと説明っぽく離しているのが窮屈で、小説だったらすごく面白いんなろうなぁと思いながら見てました。
予告が面白そうであればあるほど面白くない。
ポスターに赤色が多く使われている映画は面白くない。(例:樹海村、竜とそばかすの姫、CUBE、燃えよ剣など)(例外もあり。東京リベンジャーズめっちゃおもろいし)
田中圭の出演する映画で当たり滅多にない。
92.8%が泣いた!系映画は残りの7.2%になりがち
という訳で、すごく楽しみにしていただけにすごく残念でした。話としては面白いので、これは小説を買って読みたいと思います。映画があんまし面白くない時こそ、原作を読むべきだと私は思いますよ。
涙腺崩壊…
涙腺崩壊…まではいかなかったけれど。
原作未読、映画の宣伝で何度となく聞いた
「謎」「秘密」が気になって鑑賞することに。
配役がピッタリだと思いました。
配役がピッタリというより俳優の皆さんが
その役に本当になりきっていたと言った方が
良いかもしれない。
ストーリー、映像の中に
時々みえる伏線…
伏線回収のラストに、なるほど
そういうことなのかと、思いながら
他の方法、選択肢はなかったのかという想いに
駆られました。
でも、この選択をした梨花の気持ちもわかる。
でも、やっぱりこの選択をしなくても!とも思う。
人の気持ちはその人にしか分からないけれど
分からないなりに寄り添っていこうと理解しようと
する人たちに、また納得もしたという感じでした。
「バトン」って何?と思い観ていましたが
森宮さんが語ってくれて、よくわかりました。
梨花の懸命さ、懸命だけどとても不器用で
でも、懸命だからこそ、心を動かされる。
懸命だから「謎」「秘密」はずっと守られた。
でもでもやっぱり、気付くタイミング
いっぱいあったのにぃ〜!っと
登場人物たちに教えたい気分でした。
小説…表紙の絵がどうも好みではなく
手に取ることがなく、映画を観ましたが
原作と映画はラストが違うそうなので
小説も機会があったら拝読しようと思います。
人の気持ちと想いに涙が出そうになった良作でした。
改変は仕方ない
原作既読で大好きな作品です。
ラストが大きく異なりますが、二組の親子という見せ方を採用したことから、もう仕方なかったんでしょうね。
中盤の卒業式にすべてを持ってくるシナリオは映画的に良かったんでしょう。
永野芽郁ちゃんの涙がキレイでもうそれだけでいい。
岡田健史くんの大きな手で芽郁ちゃんの手を取るシーンが何度か出てくるが、これがまた素敵だ。
読んでから観ても、観てから読んでも、とにかく泣けます
優子の母親になることは明日がふたつになるということ。自分よりたくさんの可能性と未来を含んだ明日がやってくるということ。未来が二倍以上になること。
それが梨花の思いの原点。
原作は本屋大賞受賞直後にすぐに読み、映画化が決まってからも2回読んでます。
その思い入れと期待を抱きながら公開初日の最終上映に駆けつけました。
映画化する場合、尺の問題もあるので、当然改編はつきものですが、幾つかの変更プランのうち、満場一致で、これしかないでしょう、と選ばれたと思うほど素晴らしい感動作に仕上っていました。
原作の第一章(高校卒業まで)に当たる部分での比較では、いくつか違和感はありました。たとえば、①優子にとっての自然体は、意地の悪いクラスメイトをおとなしくさせるだけの強さを秘めていることの背景描写②ブラジル行きを巡る父と梨花のやり取り③担任の向井先生と音楽の美人教師、などが不必要にずれているのでは、と思いましたが、原作より長く描かれた第二章(高校卒業後)に当たる部分の描写がかなり丁寧で、監督(脚本)が描きたかったのはこちらだったのか、ということがよく分かると同時に、ある程度、違和感と思っていた部分が伏線の回収という形で解消されたので納得できました。
みぃたんも優子も本当に、明日が二倍以上になるんだ、という思いを実感させてくれる最高のキャスティング。
永野芽郁さんは、朝ドラなどで既にキャリアを相当に積んでいるのに、他者からの愛情を惹き付けてしまう強力な磁力を帯びた〝原石ぶり〟を自然体のように、見事に表現していました。
石原さとみさんは、自分の命を削りながら愛情と笑顔を降り注ぐ、見かけは派手な花火のようなのに実は線香花火(言動からはそう見えないけれど)のような儚い人を熱演。
田中圭さんは、アレ?これは『総理の夫』だっけ?と勘違いさせる、ちょっと世間ズレしている優しい東大卒。
いま、思いつくだけでも、親子とは何かを問いかける映画がけっこうあります。
万引き家族、朝が来る、かそけきサンカヨウ…。
実の親子とか本当の親子、というものの要件を語るときに、『血の繋がり』は生物学的な意味はあっても、絶対条件ではなくなったということなのだと思います。
(蛇足な追記)
『わたしのグランパ』という大好きな作品があります。
筒井康隆さん原作、菅原文太さんがグランパ、そして、石原さとみさんが中学生の孫娘を演じます。
30代の浅野忠信さんもひょこっといい役で出てきます。
DVDの特典映像では、ホリプロスカウトキャラバンでグランプリを獲得した本名:石神国子、のちの石原さとみさんの初々しい姿も拝見できます。プレゼンターは深田恭子さん、なかなか貴重な映像です。
石原さとみさんのデビュー作にして代表作のひとつ。
だと私は思います。機会があれば、是非ご覧になり、読んでいただきたい作品です。
"旅立ちの日に"が強すぎた
2021年劇場鑑賞29本目 秀作 69点
永野芽郁思ってたより演技上手だなと思った作品
随分と前から上映前予告やメディアへの告知の宣伝が多めかつ大きいなぁと思ったら、案の定日テレ制作で、映画業界は制作費とほぼ同じくらいの資金を広告費にも当てると効くので、豪華俳優陣のギャラももちろん、告知にも相当力いれていたんだなぁと思った。
令和最大のヒットと称された小説は未読ですが、恐らく2時間クオリティながらよく作られたのではないかなぁと推測します。
話の本筋は鑑賞前からの想像通りで、お涙頂きパートも例に漏れずうぉんうぉん涙が止まらない。(関東の上映開始日のお昼で2/3くらい埋まっていたがみんな鼻啜ったりマスクおろして涙拭いてた)
岡田健史くんが高校野球部引退後のひょんな出来事から役1年で中学生日記に抜擢され、そこからの役者へのとんとん拍子の様といったらもうほんと凄まじいし羨ましい。
わたくしの涙腺は終始やってくる旅立ちの日にに全然歯が立たなかったです、、。
是非。
だから‼️バトンを受け取れる‼️❓
予告編を観たら、我慢できずに、原作を最後少し前まで読んで、前のめりで観た。
原作は、微妙にそれぞれの想いに違和感を感じながら、キャスティングのベストマッチに奇跡を感じながら、映画を鑑賞。
どうして、みーたん、優子に捨て身の愛情が注げるのか、映画では、自然に感情移入ができた。
死を意識して、みーたん、優子に、縋る、石原さとみの凄まじき、感情には鬼気迫るものを感じた。
永野芽郁が鼻汁垂らして泣く姿に、もらい泣きがとまらん。
原作読んでるから、みーたん、よく見つけたなぁ、奇跡。
何より、早瀬を演じた俳優の存在感は、奇跡としか、思えない。
よく2時間で詰め込んだのも奇跡。
奇跡の連続で、人間の無限の可能性を信じさせる、最高の映画を、是非。
観終わってみればベタな話、しかし…
原作未読。
観終わってみれば、特にハッとする真新しいなにかがあるわけでもないストーリーであるのに、とにもかくにもキャラクターたちの人柄、空気感、見せ方で引き込まれた。
ミスリードを誘ってみたり、ミステリーのような角度で見せてみたり、と、あの手この手でたっぷりと楽しませてくれた。
途中からは永野芽郁さん演じる「優子」の親になったような気分になり、こちらまで泣いたり笑ったりしてしまった。
すべての登場人物たちが、欠点はあれど善人で、優しく、あたたかい。
この人々だからこそ辿り着いた結末が泣かせてくる。
開演前はなんとなくザワザワしていた客席も、どんどん集中していく空気がわかった。
あたたかな気持ちになりたい人にはおすすめの映画です。
良い映画
劇中ずっとバトンの意味を考えていましたが、なるほどそういう事だったんですね。
最初は二つの物語が同時に進行し、どこかで繋がるのは容易に想像できましたが、結末までは想像できませんでした。最初のほうに保険金の話が出たのでもしかして保険金殺人の悪女系の映画?と思いましたが全然違いました。涙まで出ませんでしたが、余韻が残るなかなか良い映画でした。
よかった
話は出来すぎる感ありますが。
そもそも映画の話なんて出来すぎるくらいじゃないとおもしろくないと思うので。
非常に良かったです。
俳優のみなさんも、ストーリーも感動的に仕上がってるかと。
ただ、伏線の張り方が非常にわかりやすかったので、色々詮索せず素直にみたほうがよいとおもいます。
後半の湿り気以外はめちゃ面白い
親の都合で名字や環境変わることなんて、かなり重たいことだが、それをカラッとあっけらかんと見せてしまう前半部はスクリューボールコメディっぽく見えた。あまり観たことがない時間軸でのクロスカッティングにも驚かされた。
改変が劇的な効果を見せた見事な脚本と演出
原作は 2019 年度本屋大賞を受賞した瀬尾まいこの小説である。あり得ないほど心を揺さぶられる小説であったが、映画も全く負けていなかった。ラストが改変されていたことにより、原作を読んでいてもサプライズ感が半端なかった。予備知識一切なしで見たほうが楽しめたかも知れない。
悪人が一人も出てこない話である。と言うより、信じられないレベルの善人が沢山出てきて、こんな人が本当にいるだろうかという疑問が終始頭から離れなかった。次々に結婚相手を見つけては再婚を繰り返すというのは、とかくドロドロした話になりがちであり、相手に対する執着が大きいほど目も当てられない状況に陥りやすいはずである。
BS 放送で「猫のしっぽ カエルの手」という番組に出演していた英国出身のハーブ研究家ベニシア・スタンリー・スミスさんの母親というのが、英国貴族の生まれで生活の苦労など味わったこともなく、常に誰かと恋愛をしていなければ気が済まないような人で、実際に結婚と離婚を繰り返したため、ベニシアさんには複数の父親がいるらしい。この映画を見ている間、昔ベニシアさんの講演を聞きに行って教えられた実母の驚嘆すべき行状が思い出された。
ベニシアさんの場合と違って、この映画の親子はもっと複雑である。物語は時系列に並んでおらず、現在と過去を行ったり来たりするので、最初は誰が誰なのかと戸惑いを覚えるほどであったが、終盤になってそれらが一本に繋がると、とんでもない全体像が見えて来る。その状況を引き起こした当人の深い覚悟と、彼女に振り回される男たちが見せる誠実さには本当に感服させられた。特に大森南朋の辛さを思うとやり切れない思いに潰されそうになった。
終盤になると館内の啜り泣きが半端ない勢いとなり、一種異様な雰囲気に放り込まれたような感覚を味わった。この映画の作り方は、必ずしもあざとい泣かせ方ではないのだが、本当に泣けてしまって困った。時系列の切り取り方が実に秀逸であったことによる手柄であると思った。
永野芽郁も岡田健史もピアノの演奏シーンは見応えがあった。岡田健史は「青天を衝け」の渋沢平九郎役でも記憶に残る演技を見せてくれたが、この役どころでも非常に見応えがあった。田中圭は天然記念物級の善人を好演していた。石原さとみは文句なしのはまり役だと思った。一見いい加減に見えながら、全ては娘を思っての行動だったことには深く胸を打たれた。
客観性を重視した演出は好ましく、石原さとみの髪を徐々に見えなくしていくという変化に込めたメッセージ性なども見事だった。ただ、岡田健史のピアノの凄さを見せるために「英雄ポロネーズ」だけ音量を5割増にしていたのはちょっとあざとかった。
(映像5+脚本5+役者5+音楽3+演出5)×4= 92 点
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