「こんなお母さん最高。」そして、バトンは渡された せつこんさんの映画レビュー(感想・評価)
こんなお母さん最高。
苗字が何度も変わり、今は義理の父親と暮らしている高校生の優子の話と、自由に生きながらも結婚相手の子供のみぃたんを大事に大事に育てる莉子の話。
普通の人がどのくらい先が読めるか分からないけれど、「ママは死なない?」みたいなシーンが出てきた時に何となく先の展開は見える。でもこれ、結末見えてた方が梨花とみぃたんの暮らす姿がより尊く見えるし、その後出てくる人達がいかに温かくて善意に満ちた人なのか分かって終始泣ける。
後はもう梨花が石原さとみさんピッタリすぎて。華やかで底抜けの明るさで美しくて最高のお母さん像。まさにさとみのための役。
でも、梨花が全くみぃたんに怒りをぶつけたり怒ったりするシーンがないのは、いくら梨花の事情を考えても不自然だと思う。どんなに子供を愛してても親は完璧じゃないから。無意識のうちに「親は子供を無償に愛すことができる」という神話が刷り込まれてしまう。今年は『哀愁しんでれら』『 明日の食卓』があったから余計そう思う。
さらに、血の繋がらない家族という現代的なテーマを扱ってるように見えて、案外伝統的な価値観の映画かなって思って。最後、優子の結婚式で旦那さんが「バトンを渡された」という心情のモノローグで終わるのだが、もう家を出て1人で生計を立てて生活してる女性がまだ「バトン」なのですか?まだ優子は誰かに守られるべき存在ですか?
私的にはみんなが繋いでくれた「バトン」を今度は優子自身が繋ぐという風にして欲しかったな。でも梨花が何度も苗字を変えなきゃいけなかったように、日本で女性が1人で生活をしていくのは本当に難しいもんね。