劇場公開日 2021年10月29日

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「事前情報なしで鑑賞したい」そして、バトンは渡された おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0事前情報なしで鑑賞したい

2021年11月1日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

予告から感動の物語が描かれるのだろうと予想して鑑賞してきました。そして、きれいなストーリーに、期待どおり気持ちよく泣かせてもらいました。

物語の前半は、二人の少女の家庭がかわるがわる描かれます。一人は、物心つく前に実母を亡くし、父の再婚で新たな母を迎えたのも束の間、父が夢を求めてブラジルへ旅立ったため、血のつながりのない母と貧しい生活を送ることになった、小学生のみぃたん。もう一人は、母の再婚により新たな父との生活を送っていたものの、母が突然姿を消したため、義父との二人暮らしをしている、高校生の優子。そんな、みぃたんと優子にどんな関係があるのかが気になります。まあ、観客もうすうす気づくわけですが、中盤でその秘密が明らかになります。

そして終盤、みぃたんの母・梨花がひた隠しにしていた秘密が明らかになります。事前情報ほぼなし、原作未読の状態で鑑賞したので、驚きで思わず声が出そうになりました。ここで、前半で描かれていた、みぃたんへ注ぐ愛情、ずっと一緒にいる約束、笑顔のわけ、ピアノへの思い、卒業合唱を聴く後ろ姿、自由奔放に見えた行動等、周到に用意された伏線が回収されていきます。と同時に涙があふれてきました。

ストーリーもさることながら、本作は俳優陣の熱演が光っていたと思います。主演の永野芽郁さんは、彼女のイメージどおり笑顔の素敵な優子を自然体で演じています。石原さとみさんも、男を手玉に取り自由奔放に生きているような表の顔に隠された、深い愛情をもつ母親を好演。そして、田中圭さん、大森南朋さん、市村正親さんも、三者三様の父親を熱演しています。中でも、市村正隆さんは、懐の深い大人の優しさがあふれていて、すばらしかったです。終盤で三人がそろう場面でのやりとりも、涙なしでは見られませんでした。そして忘れてはならないのが、子役の稲垣来泉ちゃん。大人の都合で振り回されながらも、新しい親との絆を紡いでいこうとする、みぃたんを見事に演じていました。

物語のラスト、タイトルが回収され、その意味がわかります。そして、身の回りにあるすべてのバトンが愛おしく感じられます。人に関わる仕事をしている自分にとってはなおさら意味が重く、さらに身が引き締まる思いがしました。自分に託されたバトンをしっかり引き継いでいきたいと思います。

おじゃる