「特撮女優浜辺美波」シン・仮面ライダー 大阪マフさんの映画レビュー(感想・評価)
特撮女優浜辺美波
この映画は昭和40年代後半の石ノ森章太郎原作の特撮や萬画を知らないと分かりにくいだろう。ハチオーグの台詞が「人造人間キカイダー」のプロフェッサー・ギルのそれを下敷きにしているのに気がつかなかったのを除くと、このネタはここで使っていると観ていて楽しかった。
この映画の最大の見ものは「用意周到」な緑川ルリ子役の浜辺美波の仏頂面のようでいて豊かな表情と演技。浜辺美波は表情が豊かなのは分かっていたが死ぬシーン以外では感情の起伏を感じさせないのに。こんな演技を見るのは初めてだ。後で観た映画で1時間ほど嫌になるほど仏頂面で演技をしている朝ドラヒロインの先輩清原果耶を観ると余計にそう思う。
緑川ルリ子は藤岡弘の自動車事故による一時的な降板で一文字隼人に切り替わる時に役どころが煮詰まっていないまま終わりなので「仮面ライダーSPIRITS」でも色々と盛り込めるのだろう。まるで無から生まれた新キャラだ。もし藤岡弘の事故がなかったら継続して登場しただろうから無理だろう。
浜辺美波もチョイ役で出ていたNHKのドラマの主人公が池松壮亮なので蓄膿症の犬役のオダギリジョーも仮面ライダーとして出て来るのでは?と思ってしまったが「原作版」の本郷猛と一文字隼人の交代劇までを扱っていると気がつくとないな、と。
次に魅力的なのは西野七瀬が演じるハチオーグ。元々蜂女自体がショッカーお初の女性怪人であり低予算を逆手に取ったかのような着ぐるみで十分に蠱惑的なキャラだがハチオーグはその進化形だ。「仮面ライダー」では魅力的でも一話限りの「切られ役」なので、それほど深く人物像は設定されていないようだが、ここでは裏切り者のルリルリを「SHOCKERに生まれし者はSHOCKERに帰れ」と執拗に誘惑するシーンがすごい。
「原作版」では仲間の流れ弾で偶然、洗脳から解放される一文字隼人は緑川ルリ子のプログラムによって解放されるとは設定を時代の流れに合わせる意味を感じさせる。
緑川ルリ子が本郷猛と一文字隼人に赤いマフラーを巻くシーンが「らんまん」でバッタの顔のどアップに続いて槙野綾が幸吉に赤い襟巻きを巻くシーンの元ネタ?
浜辺美波がヒロインという点は共通している「ゴジラ-1.0」と「シン・仮面ライダー」は逆の順序で公開した方がよかっただろう。山田裕貴と西野七瀬の件は「シン・仮面ライダー」公開の時点では明るみにはなっていなかった。「ゴジラ-1.0」を観ながら本来は敵であるはずの一文字隼人とハチオーグが「用意周到」に大石典子の為に一時的に共闘したのか、と思ってしまったぐらいだ。
多分「原作版」の本郷猛が脳以外は機械化して「復活」するまでに当たる続編は制作されるだろうが「らんまん」は終わっても今度は「光る君へ」での出番の収録が終わるまで柄本佑のスケジュールに余裕がないだろう。それにしても「シン・仮面ライダー」では柄本佑、「らんまん」では奥田瑛二、「ゴジラ-1.0」では安藤サクラという具合に特定の家族と浜辺美波が1年を通して共演するものだ。