「懐古特撮?」シン・仮面ライダー かんじがらめさんの映画レビュー(感想・評価)
懐古特撮?
脚本の内容やバトルシーンの頻度、人物同士の掛け合いは楽しめました。
途中から合流する仮面ライダー2号の精神的なタフさは見ていて非常に心強く、また仮面ライダーが複数いることで良いバランスで「仮面ライダー」とは、「ヒーロー」とはというものの多面的な掘り下げが出来たのではないかと思います。
一方で主人公は暗く、引っ込み思案で一見ヒーローらしくはありません。
しかし劇中の過激な暴力、流血描写によって主人公が戦闘で感じた恐ろしさをしっかり伝えてくれたため、ただの甘えた男には成り下がるわけでもなく、いい塩梅に収まっていると思います。
しかし、演出面はひたすらチープでした。
良く言えば原点回帰、悪く言えば「特撮ってこの程度」です。
古典的な特撮的な演出といえば聞こえはいいですが、昔の特撮をなぞらえた古い演出や撮影技法を使ったからって、それがなんだと言うのでしょうか。
たしかに特撮というのはCGなどろくにない時代からあるものです。だから過去の名作も今見ればチープに映ってしまうことでしょう。
それは仕方のないことですし、ファンはそれすらも含めて愛しているとは思います。例え今見たらチープなものでも、その歴史に敬意を持っているからです。
長い歴史のその時々で、制作陣がその時に出来る「最高」を尽くしてきたことを知っているからです。
そもそも「特撮」という概念、ジャンル自体が、「作品をより良く見せる」為の情熱と努力の末に生まれたものだと思っています。
その上で問います。
これは今出来る「最高」を目指した特撮でしょうか?
歴史に残るべき作品でしょうか?
今の時代に相応しい作品でしょうか?
今更質の悪いセルフ(と見られかねない立場で)パロディをすることが愛でしょうか?
今の時代に出来る最高の技術でもう一度作品を輝かせることこそが愛でありリスペクトなのではないでしょうか。
正直酷評されるほどつまらないわけではありませんでした。
見どころももちろんあります。シナリオも今の時勢から来るリアリティを一定盛り込んであり、アクションをメインにした残りの少ない時間で一定の補完はされているように思います。
ただやはり全体的に「シン」ではなく「懐古」の名が相応しい。
そういう作品だと思いました。