「庵野秀明は仮面ライダーを撮りたい。 特撮のクセがすごいっ!!」シン・仮面ライダー たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
庵野秀明は仮面ライダーを撮りたい。 特撮のクセがすごいっ!!
1971年に誕生したスーパーヒーロー特撮『仮面ライダー』のリブート作品。
庵野秀明の手によって制作されている一連のアニメ/特撮シリーズ「シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース」の第4作でもある。
悪の組織「SHOCKER」の手によって改造人間にされてしまった青年・本郷猛が、仮面ライダーへと変身してSHOCKERに戦いを挑む…。
監督/脚本/コンセプトデザインは庵野秀明。
主人公・本郷猛/仮面ライダーを演じるのは、『セトウツミ』『万引き家族』の池松壮亮。
SHOCKERを裏切り仮面ライダーと共に戦う女性、緑川ルリ子を演じるのは『エイプリルフールズ』『君の膵臓をたべたい』の浜辺美波。
SHOCKERに改造されてしまったジャーナリスト、一文字隼人/仮面ライダー2号を演じるのは『横道世之介』『ピースオブケイク』の柄本佑。
ルリ子の父親で本郷猛を改造した張本人、緑川弘を演じるのは『シン・ゴジラ』『SCOOP!』の塚本晋也。
SHOCKERの創始者を演じるのは『カイジ』シリーズや『シン・ゴジラ』の松尾スズキ。
ルリ子の兄、緑川イチローを演じるのは『20世紀少年』シリーズや『怒り』の森山未來。
改造人間ハチオーグを演じるのは『あなたの番です』シリーズや『狐狼の血 LEVEL2』の西野七瀬。
改造人間カマキリ・カメレオンオーグを演じるのは『GANTZ』シリーズや『キングダム』の本郷奏多。
改造人間サソリオーグを演じるのは『君の名は。』『コンフィデンスマンJP』シリーズの長澤まさみ。
本郷の父親を殺した犯人を演じるのは『猫の恩返し』『ザ・ファブル』シリーズの安田顕。
緑川イチローの母親を演じるのは『シン・ゴジラ』『ミュージアム』の市川実日子。
SHOCKERに所属する機械人間ケイの声を演じるのは『湯を沸かすほどの熱い愛』『狐狼の血』シリーズの松坂桃李。
改造人間クモオーグの声を演じるのは『コクリコ坂から』『ヘルタースケルター』の大森南朋。
本郷たちに接近する政府の男を演じるのは『シン・ゴジラ』『狐狼の血』の竹野内豊。
政府の男と行動を共にする情報機関の男を演じるのは『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』の斎藤工。
まず述べておきたいのは、私『仮面ライダー』シリーズを観たことが、ございません!
というのも、自分の少年時代はちょうど『仮面ライダーBLACK RX』と『仮面ライダークウガ』の間、空白の10年と重なってしまっているのです。
『クウガ』が始まったのがちょうど10歳くらい。平成ライダーど真ん中世代といえばそうなんだけど、ちょっと背伸びしたい年頃だった為か『クウガ』は観なかったのです。
そんなこんなで、結局『仮面ライダー』に触れることなく今まで生きてきました。
唯一触れている『仮面ライダー』コンテンツは、現在連載中の柴田ヨクサル著、『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』。
この漫画がまぁ無茶苦茶。
仮面ライダーに憧れて体を鍛えまくったオッさんが、縁日で売っている仮面ライダーのお面を被ってショッカーと戦う、というもの。
『仮面ライダー』というよりは柴田ヨクサル純度100%の漫画なんだけど、これが面白い!!めちゃくちゃ熱いしめちゃくちゃ笑えるしめちゃくちゃ泣ける✨
『シン・仮面ライダー』に欠けているものが全て詰まっています。
という訳で、『シン・仮面ライダー』よりも『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』がお薦めです!以上!
…というわけにもいかないだろうから、本作のこともちょっとだけ書かせていただきます。
率直に言って、映画としてはかなりイビツな出来だと思う。
人物の心理描写は浅いし、アニメ調の台詞回しはダサい。怪人を次々と倒していくだけのストーリー展開はまるでドラマの総集編のようだし、『エヴァンゲリオン』の焼き直しのような悪役の行動にはそれでいいのか?と疑問を呈したくなる。
言葉を選ばずに言えば、かなりのダメ映画。
かなりダメだとは思うんだけど、じゃあこの映画が嫌いかというとぜんぜんそんな事はなくって、むしろもう一回劇場に駆け付けたいくらいにはハマっていたりする😆
自身の結婚式にライダースーツを着て出席したと言うエピソードを持つほど、仮面ライダー愛の強い庵野秀明監督。
オリジナルへのリスペクトが強すぎるが故、なんか訳の分からない珍品が出来上がってしまった。特撮のクセがすごい!
従来の庵野秀明作品同様、今作もとにかく衒学的。
冒頭からよくわからん説明台詞と専門用語のオンパレード。
なんだよオーグメントって。怪人って言え怪人って。
なんだよプラーナって。エネルギーって言えエネルギーって。
ショッカーはサステナブルナンチャラカンチャラの略でどっかの金持ちがアイとかいうAIを作ってそれがジェイとかいうAIを作ってそれが進化してケイになってサイダイコウフクはモットモフカイゼツボウヲキュウサイスルコトデナンチャラカンチャラ…💤
もう冒頭から全く話についていけなかった訳だが、そこは庵野秀明作品を何作も観てきた自分のような観客にとっては想定の範囲内。
こんなもんは小難しいこと言ってるだけで中身なんてない。要は「SHOCKERという悪の組織と戦うのだ仮面ライダー!」ということ。ならストレートにそう言えよ、と言いたくなるのだが、そこが庵野秀明の庵野秀明たる所以ですから。我々は文句を言わずにただ付き合うしかないのです。
『シン・ウルトラマン』同様、今作もカメラワークとかカット割りがとにかく変。何その角度!?とか、何その接写!?とか、そんなんの嵐。
多分これは原作の味をそのまま再現してるんだろうな、という想像はつくのだが、原作未見の人間からするとなんのこっちゃ?となる。
とはいえ、こんなわけわからんアングルの映像を撮る監督なんて世界広しと言えども庵野秀明だけな訳で。これはもうこういうもんなんだと納得して、それを楽しむべし、ということなんだろう。
いやしかし、ドアップになっても浜辺美波は可愛い…💕
なんのかんの言っても、今回良かったところはどこかというと、やはりライダーの造詣のカッコ良さ!そして浜辺美波の可愛いさ!というこの2点に尽きると思う。
近年の仮面ライダーのデザインは、なんかゴテゴテしすぎているし色もカラフルすぎてカッコよくない…🌀
『仮面ライダージオウ』なんて、顔面にライダーって書いてありますからね。マジかよこのデザイン💦
そういったライダーと比べると、今作のデザインは初代ライダーにとっても寄せられており、めちゃシンプルなんだけどもそこがめちゃカッコいい。特に口のところがパカっと開くのが良い✨
コンバースのオールスターと一緒で、完成されたデザインは決して古くならない。そういう事を教えてくれる良デザインです。
ライダーのカッコ良さもさる事ながら、凄まじかったのは浜辺美波のかわゆさ💖
最初は別になんとも思わなかったけど、物語が進むにつれてどんどん可愛くなっていく。これはもう庵野秀明がどれだけ浜辺美波を可愛く撮れるか実験しているとしか思えない。
庵野秀明の浜辺美波への愛が、スクリーンを通り越して観客に伝わってくる。もうこの可愛さを味わえただけでも元が取れましたわ。
…にしても、『シン・ウルトラマン』といい今回といい、長澤まさみに対する扱いが酷い💦浜辺美波に対する愛の10分の1でも長澤まさみに分けてあげてください。これ、長澤まさみは怒っていいよ😅
とまぁ、今回はビジュアルの映画って感じ。
ストーリーに関しては特筆すべきことのない、面白みのない脚本だと思った。
ただ、それを補うだけの画の面白さがあったと思う。
音楽やSEの使い方も面白く、「テケテケテーンテケテケテーンテケテケテーン♪」というテーマ曲が流れるところは、全て爆笑してしまいました🤣
画的な面白さを堪能出来たし、個人的には満足✨
満足はしたしなんだかんだで楽しかった。…が、ここから先はちょっと苦言。いくらなんでも酷いと思ったところを挙げていきたいと思います。
まず第一に、マスクを被った時の本郷猛のセリフが聞き取りづらい。居酒屋とかでも、マスクをつけながらだと店員さんに注文が通りづらかったりするじゃないですか。あれが映画内で起きている。
マスクのせいでセリフがくぐもって聞こえるため、「え?今なんて言ったの?」となるところが多々あった。
ただでさえ池松壮亮ってセリフが棒読みで頭に入ってきにくいのに、マスクのせいで余計に頭に入ってこない。
そこはリアルさを追求しなくても、もっとクリアな音で良かったのでは?
第二に、CGのクオリティが低すぎる。
ハチオーグとのバトルやチョウオーグとのバトルなど、今作ではとにかくCGバトルが多用される。
それ自体は良いのだが、問題はそのCGの出来の悪さ。
テレビシリーズか、と言いたくなるほど微妙な出来で、しかもそのバトル演出に全くと言って良いほど面白みがない。
比較的CG感の薄かったのは冒頭のクモオーグとのバトル。このバトルは面白かったのだが、ここが本作のピークでそこからは正直右肩下がりだった。
この程度のクオリティでしか作れないんだったら、CGなんか使わずにもっと生身のアクションを重視してくれれば良かったのに。それこそ初代へのリスペクトに繋がるんじゃないの?
第三に、見せ場のシーンが暗い。
クモオーグとの戦いとバッタオーグ(2号)との戦い以外は、全て夜だったりトンネルだったり暗室だったりで戦っていたような気がする。
ただでさえヘンテコなカット割りのせいで見にくいのに、背景の暗さによって余計に見にくい。
特に思ったのはトンネル内での量産型仮面ライダーとの戦いの場面。
ここ、共闘する1号と2号が揃ってポーズを決めるという作中で最高にアガる激アツな場面なのに、何故か暗い!これは抜けの良い青空の下でやってくれよっ!!
せっかく最高にカッコいい「キュイイイーン」な場面だったのに、なんでこんなに見づらくするんだよっ💢
この暗すぎる画面って多分第二の問題と繋がっているんだと思う。
CGを合成するときに、夜とかトンネルとか暗いところの方が誤魔化しが効くんだろうね。
つまり結局は、CGの出来の悪さが本作の足を引っ張っているということじゃん!
そもそも、この映画ってかなり低予算っぽいけどその辺のことはどうなっているんだろう?もっと沢山お金をかければ、CGのクオリティ上がるんじゃない?
ライダーシリーズって、年間200億円以上売り上げるらしい。その1割でもこの映画の制作費に回してくれたら、物凄いものが出来たかも知れないのに…。
とにかく邦画は現場に予算が無さすぎる!!
これらの点は、いくら贔屓目にみても擁護しきれない。
庵野秀明の個性はビンビンに出ていたし、特撮のクセがすごいとてもユニークな作品だと思うのだが、もう少し予算と、映画を客観的に判断することが出来るプロデューサー的な人間がいたら、もっと面白い映画になったんじゃないだろうか?
なんにせよ、庵野秀明の次回作はとても気になる。
また実写でいくのか?それともアニメか?まさかの『シン・V3』とか?うーん、気になる。
実写で『シン・セーラームーン』とか作ってくれたら爆笑するんだけどなー…🤣
庵野秀明の次回作、首を長くして待ちましょう!
たなかなかなかさんの苦言、本っ当にその通りだと思います。
そして、レビューの中で1点だけ異を唱えるなら
〉オリジナルへのリスペクトが強すぎるが故
の部分。
シン・ウルトラマンはまさにその通りで「リスペクトが強すぎる」点がコアなファンには良かったけれど、本作はそういうリスペクトが感じられなかったんです。
小ネタは山ほど仕込んであるけど、リスペクトやオマージュというよりは「遊び」や「知識マウンティング」かなぁ。
あとは「やって当然。やらなきゃお話にならない」っていう箇所ですね。敬意ではなく傲慢や驕りがチラ見えしてる気がしてやみません。
リスペクトがあったら、ここまで自分勝手で独善的な仮面ライダーを50周年記念作品になんか出来ないと思うなぁ。
本作は「仮面ライダーキャラを好き放題に使ったエヴァンゲリオン」だと感じました。
1号からBLACK RXまで昭和ライダーをすべてリアルタイムで観てきた自分としては、ちょっと悲しくなってしまった本作でありました。
(大学生になってまで見てたのがバレる〜wまぁ、今の時代だとおかしくはないのかな?当時は大学生が子供番組見てるのは恥ずかしい事でしたw)