「ありがとう庵野秀明!」シン・仮面ライダー 休憩王さんの映画レビュー(感想・評価)
ありがとう庵野秀明!
庵野秀明監督のシンシリーズで、我が幼少期の昭和のヒーローが令和の世にどう復活するのか、興味津々で観に行きました。
本郷猛と一文字隼人の人物設定、緑川父娘との関係性、ショッカーという組織の目的など、オリジナルの設定に敬意を払いつつ、新しいものを作ろうとする気持ちが嬉しい。
旧1号ライダーの全身ダークグリーンのラインなしコスチューム。マスクからはみ出す後ろ毛。変身ポーズなしの風圧だけの物理的変身。変身ポーズが導入されてどこか幼稚さを感じて反発していた私は、そこをだいじにしてくれたことに大感謝です。
加えてサイクロン号の変形や、マスクの取り扱いへの矛盾や疑問を解決してくれた設定、なぜ2号ライダーが変身ポーズを取り入れたのかについて納得できるシーン。それならオリジナルで新1号が変身ポーズを取り入れたのかの説明もつくと感心しました。
庵野監督自身も自分の中で不可解に感じていた部分に整合性を持たせたいと思っていたのだなと共感。あー、なるほどねえ、うんうんとうなずく場面が多数ありました。
アクションシーンは血しぶき飛びまくりでしたが、まあそりゃそうなるわなと。殴って倒れて終わりなんてあり得ませんね。そこらが年齢制限がついている理由かな。ということは小さな子供むけじゃなく、大人向けの作品なのねと今更ながら納得。
CGはかなり荒っぽい作りだが、これはワザとでしょう。オリジナルやあのころの特撮にありがちな、糸がみえるとか、模型や合成丸出しの雰囲気をCGの中にも取り入れて、郷愁を誘ってくれているんだと思います。棒読み的な台詞回しも同様の演出だと楽しんでました。
ストーリーは、仮面ライダーだけでなく、石ノ森作品に貫かれる人の哀しみ、辛さ、そして幸せとは何かを主人公が苦しみながら探していくというコンセプトに沿ったものでした。それでいてヒーローもののレベルを超えない程度に深くなりすぎないように、抑制が効いている。 立花のおやっさんやFBIの兄ちゃんは出ないのかな?なるほど、そういうことか、というシーンもありました。
続編がないことを前提に、これだけたくさんの楽しめる要素をぶち込んでミキサーにかけて、ミックスジュースを作ってくれた庵野監督とスタッフに感謝です。美味しかった。ロボット刑事のトッピング付きが嬉しかったです。