「【愛する妻を亡くした男が、深い喪失感を抱えつつ妻の最後の願いを叶えるため、息子家族と美しいイギリス湖水地方を旅する中で関係性を含め再生していく姿を描いた作品。鑑賞後、余韻が残る作品でもある。】」コットンテール NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【愛する妻を亡くした男が、深い喪失感を抱えつつ妻の最後の願いを叶えるため、息子家族と美しいイギリス湖水地方を旅する中で関係性を含め再生していく姿を描いた作品。鑑賞後、余韻が残る作品でもある。】
■兼三郎(リリー・フランキー)は、虚ろな目で市場を歩いている。魚を扱っている店から蛸を盗み、行きつけの寿司屋に行って蛸の握りを作って貰う。
男は、自分の脇にも箸を置き、コップも2つ貰って冷たいビールを注ぐ。
そして、シーンは過去に戻り若き兼三郎(工藤孝生)と若き妻明子(恒松祐里)とがその寿司屋での初デートであろうか、蛸の握りを食べ、ビールを飲む姿が描かれる。
◆感想
・ファーストシーンから、引き込まれる。
男の愛する妻を亡くした深い哀しみ、喪失感を、見事に表現しているからである。
・息子トシ(錦戸亮)から何度も着信履歴があるのを見、兼三郎は家に戻りトシから急かされつつ、明子の葬儀に出る。
その後、住職から渡された明子からの手紙。
そこには、明子が幼き頃、家族で行ったイギリスのウィンダミア湖に、遺灰を撒いて欲しいという文章が認められていた。
明子はそこで、ピーターラビットの妹の兎、コットンテールを探していたという話を兼三郎は思い出すのである。
・トシと妻のさつき(高梨臨)と孫のエミとイギリスに渡った兼三郎。だが、彼はトシと疎遠だったせいか、トシの言う事を聞かず、エミと三時間も外で過ごしたり、予定よりも早く一人でウィンダミア湖へ向かってしまう。
だが、列車を間違え駅で盗んだ自転車で進む中、道に迷いジョンとメアリーが住む家を訪れ、助けを請うのである。
ー トシが、明子の願いを早く叶えたいという想いや、ジョンとメアリーが兼三郎を温かく受け入れる姿が印象的てある。
そしてジョンが”昨年妻を亡くした時に、助けとなったのがメアリーだ。”と話すシーンから、兼三郎がトシとの関係性を見直す気持ちになったのだろう、と推測する。-
■トシの記憶の中にある生前の明子(木村多江)が、旅の途中フラッシュバックの様に映される。最初は認知症ではないかと心配する明子を”大丈夫だ”と励ます姿や、認知症になり粗相をしてしまう姿。
そして、妻の最後の姿・・。
・兼三郎はジョンとメアリーに車でウィンダミア湖まで送って貰うが、そこは彼女が遺した家族写真に写っている湖ではなかった。
兼三郎は、トシに公衆電話から連絡し、トシ家族と再会し再び湖を探し始める。
■そして、念願の湖に着いた時、兼三郎は妻の遺灰を湖に撒く。そして、トシの家族も車から降りて来る。
兼三郎はトシに”明子から酷い状態になったら、助けて欲しいと言われていた。明子は全身の痛みで苦しんでいたが、自分は助けられなかった。そして病気が明子を連れ去った。”と話す。”それを聞いたトシは”今は皆が居る。”と優し気に兼三郎へ話しかける。
すると、兼三郎は、明子のネックレスをトシに渡し、”さつきさんに貰って貰えないか。”と言って渡す。トシは笑ってネックレスを受け取る。
さつきと孫のエミは”眺めが良いわよ。”と二人を湖に誘い、兼三郎とトシは吹っ切れたかのように湖への斜面を”兎がいるぞ!”と言いながら、笑顔で降りて行くのである。
<今作は、愛する妻を亡くした男が、深い喪失感を抱えつつ妻の最後の願いを叶えるため、息子家族と美しいイギリス湖水地方を旅する中で関係性を含め再生していく姿を描いた作品である。妻の願いが兼三郎とトシの絆を再び結びつけたかの様な作品であり、鑑賞後、余韻が残る作品でもある。>
共感&コメントありがとうございます。
本当に沁みる作品でした。続けて「52ヘルツのクジラたち」を観たのですが、自分には本作のほうが深く刺さりました。
NOBUさんとは今年もニアミスしまくりでしょうね。ちなみにホームグランドはユナイテッドシネマ豊橋で、シアター内の中央で、何も飲み食いせずにぼっち鑑賞している人がいたら、それが私です。😌