「原作未読でも十分楽しめる一作。」劇場版 呪術廻戦 0 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
原作未読でも十分楽しめる一作。
人気の原作など全く未見のまま映画を鑑賞した観客による感想です。
京都アニメーションの『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のような超美麗の映像と較べると、ちょっと線の太い印象のある、いわゆる「ジャンプ漫画」といって連想するような絵柄、呪術を使った闘い、そして呪術高専という学園を舞台にしている、といった点から、よくあるジャンプ漫画の派生アニメなのかな、と思い込んでいましたが、その予想はおおむね良い意味で裏切られました。
ちょっと力強い画調は戦闘の雰囲気と良く合っていて、その迫力を十二分に味わうことができます。もちろん激しいアクションでも画面が破綻しない作画技術の裏付けが基底にあるのでしょうが。
物語全体が、本編の「前日譚」という位置づけだということで、主人公の乙骨君自身、何も分からないまま呪術高専に入学してきた、いう立場にあり、その視点が初めて本作に触れる観客と一致しています。これによって、物語の基本的な情報を過不足なく吸収できたと同時に、序盤からすんなり世界観に溶け込むことができました。劇場公開第一作を、前日譚(というよりスピンオフ)とした選定は、既存ファンを喜ばせるだけでなく、新規の観客にも訴求力が高い効果があったのでは、と思いました。
もちろん本作では、登場人物同士の友情、信頼、勝利が前面に打ち出されていますが、例えば五条と夏油との関係を追っていくと、作中五条が非情とも言える決断をした後、その背後にどのような意図があったのかが明らかになると、単純に友情は素晴らしい、と謳った作品ではないことが分かりました。
もちろん本作以降も続々と劇場作品が制作されるのでしょうが、初発としてかなりの完成度と成功を収めているようで、続きがとても楽しみです。次回作の前に原作ちゃんと読まないと…。