「転換からエンディングへ向けてが圧巻」Ribbon Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
転換からエンディングへ向けてが圧巻
オープニングで、自分の作品を壊す芸大生を観て泣ける。そんな悲しい瞬間があるだろうか。
そこからは、だらけるよね。新型コロナ下の日常描写に近い。出てくる役者さんがみんな芸達者で、小ネタも効いてるから面白いけど、このまま続くのはしんどいなと思って観てたの。
小野花梨はすごいね。のん とやって引けを取らない。のん はこの主人公みたいな少しぶっ飛んだ役がメチャクチャうまいけど、それとやって大丈夫なのはすごい。
平井ちゃんが再び出てきて一気に話が進むね。
あの喧嘩のシーンは唐突感あるんだよね。なんでいきなり いつか はそんなに怒ってるんだっていう。でも のん の演技で持っていってしまう。
だらけたと思った前半でのネタフリも効いてるね。平井ちゃんは才能が認められていて、大学院に進むことになっていて、いつか はそんなでもなくて就職するんだね。
そして、自宅に作品を持って帰ったのに製作に手が付かない いつか と、大学に残した作品に規則を破ってまで手を入れに行く平井ちゃん。これが才能の違いなんだね。どんな障壁があったって、平井ちゃんは創らずにはいられない。
翌日 いつか の家に押し掛けた平井ちゃんが「作品持って帰りたい。いちか、なんとかして」と丸投げするところも天才っぽい。自分の欲求だけをストレートに出してくる。
そして忍び込んだ大学で目にする平井ちゃんの作品は確かにいい。取材協力が多摩美になってたけど、この作品は実際の学生さんの結構良い作品なのかな。いつか の作品は「小道具さんが描きました」っていう感じで、そこまで良くないんだよね。
そして、いつか の作品を認める田中。「卒業式の日に渡した作品はまだ持ってる?」と聞く いつか に「あの作品の飾り方がいまだに分からない」と返すのも良い。自分の創ったもので心を動かす人が一人でもいるなら、それで十分だよね。
そして、その一人は、作者自身でも良いんじゃないのか。最後の二人卒展を観て思ったよ。