「【”「Strange Fruit」は人権の歌なの!”とビリーは言った。生まれ、ヘロインの誘惑、男運の悪さ、執拗な麻薬捜査局や米国政府に悩まされながらも歌い続けた不世出の歌姫の生き様を描いた作品。】」ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”「Strange Fruit」は人権の歌なの!”とビリーは言った。生まれ、ヘロインの誘惑、男運の悪さ、執拗な麻薬捜査局や米国政府に悩まされながらも歌い続けた不世出の歌姫の生き様を描いた作品。】
ー 「Strange Fruit」(奇妙な果実)は、陰鬱な歌詞とメロディで構成された歌である。
だが、この歌は長年白人から、謂れなき差別、時にはリンチ殺人まで行われている現代アメリカ人の黒人にとっては、哀しみと怒りの歌であり、白人にとっては忌むべき歌である。
本作では、1940年代後半から「Strange Fruit」(奇妙な果実)を米国政府の様々な妨害(勿論、彼女にも、重い責任はある。)を受けながらも歌い続けたビリー・ホリデイの、様々な苦しみ、悩みに苛まれつつも、歌い続ける姿を描き出している。-
◆感想
・ビリー・ホリデイの愛称だった、”レディ・デイ”から芸名を付けたアンドラ・デイの渾身の演技が見所である。
少し前にビリー・ホリデイのドキュメンタリー映画「BILLIE ビリー」を鑑賞していたので、アンドラ・デイと、ビリー・ホリデイの容姿は全く似ていないな、と思ったがそんなことはどうでも良く、劇中で披露されるアンドラ・デイの歌に、引き込まれる。
・今作は、脚本がやや粗い為、ビリー・ホリデイの哀しくも、短すぎる生涯が多少、記憶にないと理解しずらい部分が有るかもしれないが、アンドラ・デイの渾身の演技と歌が全て吹き飛ばしてくれる作品である。
・ビリー・ホリデイが「Strange Fruit」(奇妙な果実)をフルで歌うシーンは、フラッシュバックの様に黒人差別とリンチのシーンが錯綜し、彼女が背負った重さが漂って来る。
<僅か、44歳で早逝したビリー・ホリデイ。
あのラストのシーンは、彼女も又、「Strange Fruit」(奇妙な果実)になってしまったのか・・、と思ってしまった鑑賞後の味わいが苦き作品。
現代アメリカでも横行する、有色人種への謂れなき差別が消えない限り、何時までも「Strange Fruit」(奇妙な果実)は、どこかで、誰かが歌い、聴くのであろうなあと思った作品でもある。>