「テレビドラマシリーズとは別物?」バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版 しぃなさんの映画レビュー(感想・評価)
テレビドラマシリーズとは別物?
テレビドラマシリーズから大好きで、待ちに待った映画だった。
けれど、テレビドラマシリーズを特に踏襲することはなく、江藤はいつの間にかまた出世しているし、獅子雄と若宮は若宮がずっと獅子雄を待っていた筈の部屋ではなくもっと汚い狭い部屋に引っ越している。江藤の出世には二人の協力は欠かせない筈なのに、二人は貯金残高も蓮壁氏に100万振り込まれるまでたったの60,012円の貧乏暮らし。獅子雄のいない間には降格してしまった江藤刑事がまた出世していたのに?と、疑問がわく。
獅子雄が若宮に残した筈のバイオリンも出て来ず、ドラマとは全く別の話なのか?と思った。
事件の話。
個人的に、もうすぐ1歳になる女児がいる身としては、あおみちゃんが攫われるシーンも冨楽夫妻があおみちゃんを探し回るシーンも、大きくなったあおみちゃんが自分の本当の部屋に赤ちゃんの時からの全ての行事のための物を買い揃えてもらってあるのを見たシーンも、もう嗚咽を漏らすのを堪えるのが必死なくらい涙と鼻水でボロボロになってしまった。
全く落ち度がなかったのに赤ちゃんを攫われ、最終的には諸共死んでしまう冨楽朗子さんが可哀想で仕方なかったけれど、映画で若宮が「これからの人生で親らしいことをすべきだ」「たくさん名前を呼んであげて」と言っていたその表情や声音にはとても説得力があった。
たった一言、「お金なんかいらないから、3人で一緒に暮らそう」って娘を説得できなかったことが、冨楽夫妻の過ちなのだろう、と思った。
蓮壁家の人間に関しては、はっきり言って死んで当然!と思っていたけれど、やっぱりあの本物のベニちゃんが浴槽に沈んでいるのを見つけたシーンは何度見ても胸がギュっとする。
蓮壁夫人は夫に心身を支配された憐れな女性、という目になった。
馬場が死んでいるのを見つけた獅子雄の慟哭は、それだけ見たら感動的なのかもしれないが、テレビドラマシリーズから観ている身としては、そこまで馬場との関わりも無いのに、単に自分の推理ミスでみすみす死なせてしまったことを悔やむにしては、馬場の亡骸に触れるシーンが馬場自身への思いに見えてしまい、「えっ、何で?」と思ってしまった。
ずっと付きまとっていて、あまつさえその恋心を応援していた捨井相手だったらまだ分かったのだが。
心にずっしり来る、誰も幸せじゃない、皆がそれぞれに不幸を抱えていて、観終わった後沈んでしまう。
唯一、獅子雄と若宮の家のベッドにヴィルのようなぬいぐるみがいるのと、ペットのウェブサイトが開かれたPCに、ヴィルを忍ぶ若宮のために獅子雄が色々見ているのかな、と思いめぐらせてほっこりした。
テレビドラマシリーズ第2弾で、もう少しバディ感を見たい。