劇場公開日 2022年6月17日

  • 予告編を見る

「人間ドラマとして楽しめました」バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5人間ドラマとして楽しめました

2022年6月20日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

難しい

原作は有名なコナン・ドイルの「バスカヴィル家の犬」ですが、そもそも読んだことがないので、本作がどのくらいそれを下敷としてなぞっているかはわかりません。それでも、ミステリーとしても、人間ドラマとしても、なかなかおもしろかったです。

ストーリーは、資産家・蓮壁千鶴男から娘の誘拐事件の捜査依頼を受けた、犯罪捜査コンサルタント・誉獅子雄と精神科医・若宮潤一が、誘拐事件とその捜査依頼中に変死した蓮壁の死の真相を解明していくというもの。瀬戸内海の離島を舞台に、資産家の財産をめぐるというミステリーの鉄板設定に、島に伝わる「魔犬の呪い」の謎を加えて、あやしい雰囲気を盛り立てます。

とはいうものの、正直言って前半はなかなか作品世界に浸れず、少々退屈でした。テンポは悪くないと思うのですが、テレビドラマとは異なる獅子雄と若宮の雰囲気に違和感を覚えたり、いま何が起きているのかがよくわからなかったり、劇場スピーカーの音量バランスが悪かったりで、細かな要因が重なって今ひとつ集中できなかったせいかもしれません。

しかし、後半、誘拐された娘の秘密が明らかになってからは、がぜんおもしろくなります。前半から周到に用意した伏線が、次々と回収される心地よさを感じました。特に、獅子雄が単独で進めていた捜査が一つの真実に収束していく展開は、とてもおもしろかったです。ただ、あまりに高速推理すぎて、獅子雄が何に気づいて何を調べているのかがよくわからなかったので、できれば、その伏線をもう少しわかりやすく描いて、私のように鈍感な観客にも推理を楽しませてほしかったところです。それと、ラストはもう少し別の形で締めてほしかったです。

主演は、ディーン・フジオカさんと岩田剛典くんで、テレビシリーズからの続投です。脇を固めるのは、新木優子さん、西村まさ彦さん、稲森いずみさん、広末涼子さん、小泉孝太郎さんらで、なかなかの顔ぶれが並びます。中でも、椎名桔平さんが、序盤からいい芝居をしていました。おかげで本作は、脚本によるミステリーのおもしろさよりも、役者陣の奮闘による人間ドラマとしての味わいを感じました。

本作レビューとは関係ないですが、前述のように上映スクリーンの音響が悪すぎて、台詞がかなりチープな音で聞き取りにくく、前後の音量バランスも逆転していて、気になって全く集中できませんでした。上映後に劇場スタッフに声をかけてみたのですが、異常なしとのことだったので、自分の耳がおかしかったのかもしれません。とくに音響にこだわりがあるわけではないのですが、音だけでこんなに鑑賞気分が左右されるとは…。音も作品の重要な要素だと改めて気づかされました。

おじゃる