「今は黙って、若者の迷走を眺めていたい。」そして僕は途方に暮れる Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
今は黙って、若者の迷走を眺めていたい。
最初に舞台があったとは知らなかったです。
正直、自分の中での落とし所がやや分からなくなった作品です。
若者よ、それじゃ何のための人生なんだ! 悲し過ぎるだろうと言う嘆きの物語、あるいはだから目を覚ましてやり直せ、まだ間に合うと言う励ましの物語かと言えば、それは全く違う。
全部なし崩しにして、若者は逃げる、逃げる。良い悪いを越えた、自分の生き方をどう納得するかの物語だった気がしました。
◉全ての旅はいつか終わるのか?
旅はいつかは終わるのでしょうが、これほど続いた裕一君の旅はもう少し深みに嵌るまで、間違いなく続く。「こいつは面白くなってきたぜ」などと、うそぶいている場合ではない。意地でカッコつけている訳でしょうが。
本当にずる賢くいくならば、沈黙や寡黙にだけ頼って、俺のことはそのうちに分かってくれると甘い期待を寄せていては駄目だろう。嘘でもいいから、言葉と振る舞いを重ねる。そうしないから、彼女が親友に乗り換えてしまう。
彼女も親友も良い奴でありつつ、残酷な決断もする。前田敦子も中尾名慶も演技がなかなか良かった。
ところが、図々しさと弱腰と怠惰を同居させているクズ男は、彼女、親友、先輩、後輩と渡り歩くも居場所は出来ず、風を喰らっては姿をくらます。そして姉や母のもとにも、長くは落ち着くことが出来ない。
◉青春はまだ長いから
しかしクズ男を眺めているうちに、私は何故か、苛立ちよりも「諦めに似た安堵」を覚え出した。
一つは、人生はほぼ全てがひとごとで出来ていると言う納得。自分が、今の自分を認めていたらあとは気にしない。大騒ぎになる前に、その場を離れてしまえばいい。そんな理解もなくはない。
もう一つは、藤ヶ谷大輔君が妙に素直で、これから失敗をバネに伸びていきそうに見えたから。売るほど時間はあるんだから、大丈夫のはず。信頼度は激低だとは思いますが。
取り戻せない、若しくは思い出したくない青春へ向けたノスタルジーに、単に私が浸っていただけかも知れないです。
◉ダメな父親でも役に立つ
逃げる若者の取りあえずの終着点は、自分より凄腕の逃げ屋である父だった。息子に輪をかけたクズ男の父は、逃げ隠れこそがベストの身すぎ世すぎであると熱弁! 力まずに何となくやり過ごしていればいいんだ。息子もオヤジの生き方に、スッと取り込まれた。
私も洗脳されかかっていました。しかし母の救急車騒ぎに接した父の姿を見て、クズ男は少しだけ人間らしさを取り戻した。やはり父親は、息子が立ち直るキッカケを作ってくれたではないか!
父母と姉弟の北の家族の団欒で、それなりのめでたしと思ったらば、それは長い道程の「続きの始まり」に過ぎなかった。あの日常もこの人々も捨てて、忘れて、若者は再び逃げまくる。
ところで、緑色の液体を飲み干す原田美枝子さんが、やはり切なかった。クズ父やクズ息子なんかに煩わされないで、気楽になって自分の人生を生きて欲しいと心から願ってしまいます。
コメントそして共感ありがとうございます。
なんか激昂してしまい恥ずかしいです。
Uさんの裕一への視線は優しいですね。
原田美枝子さんが、振り掛けを食器棚の上段から取り損ねて、
転んで、息子が助け起こしましたね。
そしたら、「申し訳ございません」って正座して一礼したので、
本当に驚きました。
今はちょっと怒鳴っただけでも、パワハラさんだとか、
イジメだとか、下手したら、大事になったりしますものね。
今にクズも差別語になりますね。きっと!
Uさん さん、
コメントありがとうございました。
若いウチは過ちを繰り返して成長すればいいんです。
でも、この主人公と親父は“性質”だから簡単には変われないし、きっとなんとかなっていくんだろうな…と、思いました。
イイねコメントありがとうございました😊。まあヒーローとか悪辣とか正義感とか暴力とか一切ないこういう軟弱な作風も良いと思いました。豊悦は完全に 怠惰のみの魅力 輝いていて洗脳されそうでした。私もまだまだ未熟ですが「人生はほぼ全てが人ごと」は痛感しています。本当に当事者にならないと心の痛みは共有できないなぁと思います。ありがとうございました😊。