劇場公開日 2023年11月17日

「取って付けた感」鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5取って付けた感

2023年11月19日
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ミステリーとして話を進めるなら、また子供向けの作品でないなら尚更、もう少しお話の展開も構成も人物描写も丁寧に積み上げて欲しかったというのが率直な印象。

あの家族や村長(?)も、みんないろいろワケありで様子がおかしい割にちゃんと説明されなくて、欲しがってる「M」とやらも、(雑に説明されるけど)その製法も効能も、もう一つピンと来ない。あの島の意味や大穴、お屋敷と地下で繋がってるって話も。

最初、時貞翁が死んで、血液銀行に電話が入った場面。「血液銀行ってどんな銀行なのか・主人公はどんな仕事をしているのか」冒頭としては状況説明という意味でちゃんと描くべきシーンのはず。しかしデスクに大勢の社員が着いているものの、机上には作業中らしき書類も筆記用具も見られない。
「ははぁん。ちゃんとディテールを描く気がない系ね。」
序盤でそう思ってしまうと、全てを目を細めながら見る感じになっちゃう。

で、全体がボヤっとして掴みかねているおかげで、観客としては分かりやすくて善良そうな登場人物(沙代と時哉)に感情移入。作り手はその二人に「可哀想な役回り」を押し付けて、最後に主人公たちが「救い」を与える。主人公の手柄の為に登場人物が奉仕するという、すごく「雑」な話に見えてしまった。

基本的に主人公たちが直接戦う敵妖怪は「狂骨」になるんだけど、この妖怪って有名なの?ただただ相手に危害を加えるだけのモンスターってこと?妖怪ってそういうものじゃないって思ってたんだけど。
登場シーンから何の説明もなく、その上「これは只の狂骨ではないぞ」って。「只の狂骨」を知らんのよ。

「ゲゲゲの鬼太郎」は、第二期の再放送を見ていた世代の私。
まだまだ当時子供の私には怖いシーンばかりが印象に残る「苦手なアニメ」の部類だった。
その後、第三期以降の放送はかなりカジュアルでポップになったとは聞いていたけど、(年齢的にも)食指が動かなかった。結局私にとっての「ゲゲゲの鬼太郎」は、物語ではなくキャラクターの集合体として認識されている。

そういうこともあって、ラストに出てくるスタイリッシュでヒロイックな鬼太郎にも私は馴染みがなく、どうにも最後まで私は「外様」な感じでエンディングを迎えることになった。

最後に男の子を成仏させる的な、あの「感動風」やり取りは、個人的にすごく取って付けた感があって、悪い意味でこの映画全体を象徴するシーンに見えた。

高く評価されている方も多い様なので、私が乗り切れなかったんだと思うけどね。

キレンジャー