「インドネシア映画からの影響が色濃い鮮烈なバイオレンスが眩しい本格B級アクション」ウィズアウト・リモース よねさんの映画レビュー(感想・評価)
インドネシア映画からの影響が色濃い鮮烈なバイオレンスが眩しい本格B級アクション
ネイビー・シールズのジョン・ケリーはシリアのアレッポでシリア軍に拉致されたCIA工作員の人質救出作戦でアジトに突入し何とか人質を奪還するが、そこにいたのはシリア軍ではなくロシア軍であることを知り驚愕する。帰国後その作戦に従事した隊員が次々と殺害される事件が発生、4名の武装した男達に自宅を襲撃されたケリーはうち3名を射殺するが1名を取り逃してしまう。重傷を負い意識が混沌とする中でジョンは妊娠中の妻を殺害されたことを知り復讐を胸に誓うが、その背後には巨大な陰謀が渦巻いていた。
監督はステファノ・ソッリマ。ローマを舞台にした裏社会の群像劇を冷たい質感で活写した『暗黒街』で注目を集め、ドゥニ・ヴィルヌーブの後任に抜擢された『ボーダーライン ソルジャーズ・デイ』でソリッドなバイオレンスに奇妙な友情を滲ませる奥行きのある作風を披露したベテランなので、本作でもその個性は物語の冒頭からしっかり発揮されています。至近距離かつノーガードでの銃撃戦、追い詰めた車にガソリンをぶっかけて火をつけてから後部座席に乗り込んでのロシア要人尋問、狭い独房での警官隊との殴り合いといった描写に見られる血の気の多さが尋常でないバイオレンスにインドネシア映画からの影響がむせ返るほどに匂い立っています。激しい戦闘の合間にしっかりと友情を滲ませることも忘れていないので、まさしくトム・クランシー作品の映像化に適任だったと思います。卓越した演技力を持ちながらもシルベスター・スタローンやチャドウィック・ボーズマンといった共演陣の醸すカリスマにあてられて今ひとつ印象が薄かった感のあるマイケル・B・ジョーダンの魅力がここで一気に炸裂した感あり、今後の同ジャンルでの活躍が大いに期待されます。本来であればスクリーンで観たかった本格B級アクションでした。