「ジュリエット・ビノシュの魅力をもってしても」5月の花嫁学校 ターコイズさんの映画レビュー(感想・評価)
ジュリエット・ビノシュの魅力をもってしても
染み付いた社会や自分の価値観に対して、たまには懐疑的な視線を投げかけてみないと、少し時代が移り変わっただけでこんなに醜悪にみえるんだってことに気付かされた作品。
1967年のアルザス地方の花嫁学校。田舎とはいえ少し舞台が古いと随分価値観が違うことに改めて驚かされる。家政学校で生徒の女子に教えることはいかに夫を喜ばせるかという内容ばかり。いかに自分の人生を充実させるかではなく、夫を喜ばせることが自分の歓びなのだと教え続けている。
ジュリエット・ビノシュの最初の衣装はもっさりさえないマダム風。何が似合うかでも何を着たいかでもなく、何を着ていれば良妻賢母風なのかと言わんばかり。あのジュリエット・ビノシュがとにかく野暮ったい。ところが、ポーレットは生まれ変わっていく中で、パンツスタイルを選ぶ。トップスにもはっきりした鮮やかなカーマインを。それで明らかに彼女は前の彼女と違ってみえる。何を選びどう着るかは生き方を示しているのだなと痛感する。
ジュリエット・ビノシュはかなり好きな女優だけどそれでも展開が物足りない。当時のアルザスの価値観や家政学校で教える内容など新鮮な部分はあるが、映画として魅力的に仕上がっているかと言われれば、ちょっと惜しいかな。ジュリエット・ビノシュの魅力をもってしても、クリアにならない問題はあるらしい。
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