王の願い ハングルの始まりのレビュー・感想・評価
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いつ誰が作ったのか
わかっている唯一の文字が、ハングルと聞いたことがあります。
いかに天才でも文字をゼロから作るのは大変。
日本は漢字を書きかえて表音文字にしましたし、ヨーロッパは誰が作ったのかわからないアルファベットをそれぞれの言語で共有しています。
言葉や文字が好きなのでとても興味深かった。
日本、中国との関係、仏教と儒教の関係なども勉強になった。
文明国の名折れですよ。
1400年代、李氏朝鮮第4代国王の世宗大王が訓民正音という名称で交付したとされる現在のハングルにあたる文字の誕生までの話。
「本作品は歴史の一節を基にしたフィクションです」だそうです。
八萬大蔵経に纏わる出来事から始まり、僧の力を借りて、簡易で民が学び使える独自の表音文字をつくっていくストーリー。
サンスクリットやパスパ等を参考にハングルを作っていく様は、閃きと発見と試行錯誤を繰り返しで面白いし、明からの圧力やヨダレダラダラ君の仄かな思い何かもあってなかなか良かった。
でも、やっぱりある程度まで話が進むと、変化が乏しくダレてくるし冗長に感じるところも多かったかな。
韓国映画の底力
ハングル文字を作り出し、普及させようとした名君世宗の物語。
「マルモイことば集め」もそうだったが、韓国映画はこうした文化的な事件をエンターテイメントに落とし込むのが本当に巧い。
王と僧の物語、王と王妃の関係性、仏教と儒教の対立、ちょっとした恋の予感…等々を絡めながら、文字を創り出すロジックはがっちりと描き出す。
まさに韓国映画の底力、って感じなのだが、まさかこの監督の初監督作とは…恐れ入りました…
しかしこれほど意識的に組み立てられた文字体系が、世の中に他にあるのだろうか…
仏教と儒教と、そして、夜の空を見上げて…(説明入れてます)
今年72本目(合計137本目)。
実はこの映画、韓国で公開されたとき(2019年)、相当な議論が巻き起こりました。韓国は儒教の国だからです。
李氏朝鮮では、仏教は徹底的に弾圧された立場だったのです。
そして、ハングル(便宜上、現在の名称。以下同じ)は世宗大王が作ったものとされますが、彼1人だけの功績か、誰か協力者がいるのか、また、参考にした文字は何か(主に契丹文字説、サンスクリット説、完全オリジナル説などがある)が不明で、その点で最初に「史実をテーマにしたフィクションものです」と流れます。
この映画は、その中でも「李氏朝鮮が弾圧した仏教側の立場(仏教徒は、サンスクリット語を読み書きできた)でハングルができていたら?」という立場で作られています。実際、この考え方は少ないようですが、かといって、契丹文字説も矛盾なく完全に受け入れられているわけでもなく、現在でもまだ学術上の争いがあるようです。
どちらの立場に立って考えたとしても、文字を新しく作るのなら、それは、既存の文字を参考にすることが多いでしょう。そのとき、やはり、私たちが今そう思うように(日本では、日常会話で使う常用漢字は、2000字ほどありますね)、多くの文字ではなく、できるだけシンプルな組み合わせでできる文字の作り方はないか?という点が論点になってきます。「文字の作り方」といっても、漢字のような部首を取る形式や、母音+子音の組み合わせ形式、アルファベット…など、いろいろあります。ハングルはこの中では「母音と子音の組み合わせ」でできています。
そしてこの映画は「仏教徒がかかわった+サンスクリット参照説」の立場です。
(なお、儒教+契丹文字説でも、この「母音+子音文字」の考え方は変わらない)
「作っても、国民が容易に理解できる言語でなければならない」という考え方、かつ、将来まで使われることを想定してある程度の「余裕」を持たせて作られたのが、今のハングルです(この当時できたハングルは本当に黎明期で、母音子音とも、なくなったり、表記の変わったり、読みが変わったなどの字がいくつかあります)。
そして、何の言語を参照して新しい言語を作るとしても、基本となる母音・子音字は少なければ少ないほど良いのです。しかし、一方で少なすぎるとその組み合わせでも表せる組み合わせには限界が来ます(母音・子音形式をとる場合、この点が必ず待っています)。さらにそれをどこまで許容するか、もっと削れるか、容易に習得できるか…という点、それらのお話も登場します(あくまで、仏教+サンスクリット説に取った場合だが、契丹文字説にとっても、この点において、本質的な筋は変わらない)。
特に減点対象とする点はないので、フルスコアにしました。
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(※補足) 「夜空には多くの星があるが、星座は28個しかない(のだから、28個くらいに基本字をまとめられないのか)」について
・ この内容は2回出てきます。日本ではおやっと思うかもしれません。
この映画はもっぱらハングルの歴史に焦点を当てた映画ですが、中国の影響を受けた朝鮮、日本では、「二十八宿」という、中国式の星座(星官という)が使われていました(日本では、江戸時代の終わりまで使われていました)。
一方、西洋ではトレミーの時代に、トレミーの48星座というのが(今の88星座のうち、48個という考え方では、ほぼそのまま)すでに作られていたので「なんで28個なの?」という疑問が出てきます。これは、中国の影響を受けた朝鮮・日本ではこの「二十八宿」という星官のシステムが主流で、それが当たり前に使われていたのです。
※ おとめ座のスピカ(現在の名前)から始まって、今の88星座で言えば比較的よく見える星を結んで作られていました(結び方(星座線)はまるで違う。スピカは「角」とだけ呼ばれ、スピカを含む(独自の)結び方(範囲)は「角宿」と呼ばれていた)。また、南半球への航海が可能になった時代以降では、南半球の星官(「十字架」→「みなみじゅうじ座」 など)も作られるようになりました(また、このころには中国も、西洋文化に接したため、自然と西洋式が少しずつ主流になっていきました)。
※ インドでは、1つ削られて「二十七宿」にもなりました。日本や朝鮮では「二十八」(28)であり、季節や方角(4つ)や曜日(7つ)の「4」や「7」を約数に持つため、こちらはこちらで、こうしたことと結びつき、それはそれでまた独自の文化(占いなど、隣接する分野)に影響を与えました。
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仏教と儒教の確執
ハングルが創られるまでの物語、新しい文字を創ろうとした王と、
日頃は王族から虐げられている仏教の僧が「王に協力する。。?だと。。?!!」と思いつつ、
普段は政治の中枢にいる儒学者達が「王と仏教徒が創った新しい言葉を民に広めろだと。。?!!」
という、シンプルに文字を創った以上の、それぞれの立場でのそれぞれの苦悩、確執も描かれていて、真実に近い描写のように感じました。
念仏を唱えるのが供養ではなく、民に広めることを願っていた王妃への供養は、女官達から民へ広めることを止めないこと、それこそが供養なのでは?という和尚の言葉がとても胸に響きました。
知的好奇心をくすぐるおもしろさ
ハングルの成り立ち、言われれば母音も子音も学術的に確立してるわけでなくそんなカオスの中から、音の共通点を探したり整理したり記号化したり、決めること多過ぎだ!外国語の素養のある弾圧されてる仏教の僧侶たちが王命でプロジェクトを進めるという、ストーリー自体のおもしろさ。
その面白さに乗っかりすぎかな。淡々とプロジェクトの進行が語られるわけだが、人間ドラマは、王妃の葛藤が際だつくらいで、各人の思いは割とあっさり。
「舟を編む」や、「マルモイことばあつめ」より遙かに難易度の高いプロジェクトだということは分かるんで、ドラマの弱さは仕方ないかなあ。
ソン・ガンホが映画の中で老けていくのは見事。
ハングル文字の誕生ヒストリー
楽しみにしてた映画の一つ。
期待を下回ったがまずまず楽しめた。
ハングル語が出来るまでの話しは良かったが、歴史の話しもあって、字幕から解読していくのが若干難しかった。
後半ちょっと飽きが出たので、トータル時間はちょうど良かったが、ラストは呆気なかったのが残念。
新しい文字を生み出す過程の困難と情熱
反対勢力に苦しめられながらもあきらめず、それまでにない新しい文字、ハングルを完成させた世宗大王。その王をソンガンホが演じるとあって、これは観ねばと思ったのがきっかけだったが、それ以上に見ごたえがあり素晴らしかった。
身を削りながらも、民にも分かりやすい文字を創りたい、もっと誰もが知識を得られる世の中にしたい、という王の熱い想いが、この新しい文字ハングルを生み出せたのだということを、この映画の王と僧侶たち、家臣や儒学者との関係性を通じて知ることができ、とても感慨深かった。
特に王と共に力を尽くした海印寺(ヘインサ)の僧侶たちや、王の意思を汲みとって陰ながら文字創造を支える王妃が心に残る。
本編とは違うところでも、お付きの女官と若い僧侶とのやり取りも微笑ましく楽しめた。
映像も美しく落ち着いた色調で、壮大な歴史を感じさせてくれる。撮影の舞台となった浮石寺(フソクサ)は映画のことを知らなかった2年前に一度訪れているが、この映画を観てまた新たな気持ちで行ってみたいと思った。
ハングルを理解していれば…
もっと面白かったかも。それはさておき、この王様の生き様に感動し、あと、ふと思うと確かに文字の起源は興味深いしこれだけ言語がたくさんあるといろいろ成り立ちがあるんだろーな、と。話が淡々と進む分、衣装や景色も楽しめた。
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