「父親を想う気持ちはおなじ!」天才ヴァイオリニストと消えた旋律 Socialjusticeさんの映画レビュー(感想・評価)
父親を想う気持ちはおなじ!
過去と現在と設定がうつりすぎるので、集中できないところがある。1951/52そして、80年代の現在。場所はニューキャッスルとワルシャワ、ロンドン、そして、ニューヨークなどと。マーティンもデビッドもそれぞれ3人の俳優が演じている。このところはわかりやすかったが。
幸運にも字幕が出たり、ワルシャワの空港でのタクシーの中で英語を話そうとしても、通じないというように、字幕だけでなく場面がどこに動いているか、示すものがあるので、内容
は追えるのでいい。ありがたい。
50年代マーチンの父親がダビド(デビット)を家族の一員として迎えて育てる。その中で、マーチンとデビットが競争心を剥き出しにしながらも、フレンドシップを築いていくところがいい。それに、喧嘩の真似事も好きだし、デビッドの自信満々な態度もかっこいい。でも、陰で、家族の写真をみながら、涙するところが、強気であっても、家族を思う気持ちがよく現れていると思った。はっきり言って自分だけ助かっていると思っているから、罪の意識もあるわけだし。
そういうシーンにもっと焦点を当ててもいいが、結局はクラシック音楽、迫害されたユダヤ人の天才バイオリニストの行方が重視されていて、その兄弟と言ってもいいデビットの消息を探すマーチンの葛藤と悩みが主に中心になっている。ユダヤ人の差別、迫害だけに重きを置いていないところがいいと思ってみたが??ユダヤ教として育てられた、ユダヤ人の真髄をみた気がした。
デビッドがロンドンの正統派ユダヤのコミュニティーに紛れ込んでからラビのティーブリムカ弔いのチャンティングを聞いて、一度捨てたはずのユダヤ教が再び心に戻ってきた。その後、ワルシャワのティーブリムカ絶滅収容所 (Tieblinka Extermination Camp) で殺されたユダヤ人のために自分で作曲しThe song of namesを 演奏する。マーチンはバイオリンを作ったAntonio StradivariのA Gagliano 1735が手掛かりでニューヨークのブルックリンのユダヤ地域に引っ越していたデビットを見つけ出す。
ここからが、最高にいい。
マーチンはデビットを殴り、父親の無念をぶつけた。子供の頃の殴りの真似事でなく、鼻血が出た。父親は里子のデビットを十二年間面倒を見て全てを捧げだ。亡くなる時、デビットの名前を(your name on his lips) だって!!泣けた!デビットは家族の行方が見つけられると思って、里親を省みる余裕なんかなかった。
マーチンが父親の無念を果たそうと思って、何年もかかって、デビットを探したしたことと、デビットが何年かかって、ユダヤ家族の安否を探し出したことは同じことだという。でも、デビットは(超?)正統派として、これからユダヤのコミュニティーだけで生きていく。これって、呵責の念?弔い?
最後、夜中起き出して、マーティンがカディシュKaddishを唱えるところがいい。この意味は、もう探すなというデビットの言葉に踏ん切りがつかなかったマーティンだが、Kaddishを唱えることはもう探さない、デビットは死んだと思うことだから。
この小説は読んでいないが、映画は探偵映画のようだが少し飽きちゃって、映画の途中でトロントフィルムフェスティバルTIFF 2019のこの映画の俳優のインタビューを見た。その後、一晩明けて、見出したが、デビッドがロンドンの正統派ユダヤのコミュニティーに紛れ込んでから自分が真剣になってみているのがわかった。
この監督は舞台の音楽監督でもあり、レッドバイオリンのような音楽の映画の監督をしている人なんだなあ。子供の頃のデビッド役をした少年はバイオリニストで、コンサートをしていると。なるほどと納得がいくねえ。それに、この題の意味は重要だ。