「目が離せなかった」モーリタニアン 黒塗りの記録 foolさんの映画レビュー(感想・評価)
目が離せなかった
こういう映画を見る度に、目の前の情報や人の口にする言葉だけに惑わせれてはいけないと痛感する。
衝撃的な事件が起き、報道がなされ、容疑者が映る
報道は、少しでも興味を引く映像や言動にスポットを当て
そこを浮き彫りにして、さらに群衆を煽る
現在では、それがネットで拡散され、誹謗中傷や
炎上という現象が起きる
本当の真実はどこにあるのか、疑問も持たない者が
弱きを追い込む事もある
9.11では、中東系の人種差別が起き、映画の中にもあったが
何百人が拘束された
拷問し、精神的に追い込み、自白させ、死刑にさえ
しようとする
心情はわかる、理解出来ないが、実際に9,11の被害に遭った
方々やその家族、同僚にとっては同じ肌の色をした人は
同じように見えるのだろう
昔の日本にも、冤罪は多く存在した
追い詰め、暴力をふるい、自白を引き出す
生活環境や出自が、犯罪の根拠とされる事もあった
「その時間と労力を、真犯人探しに使えよ」と
腹立たしさすら覚える程だ
不都合な真実は闇に葬り、掘り出されない奥底に
埋没させようとする
それを掘り起こしたのが、今作である
スラヒ氏の忍耐と、臭いものに蓋をしてはいけないと
立ち上がった弁護士ホランダーの執念が見えた
現実には、そうやって有罪の者を無罪にしてしまう
事もあるのだろうと理解しつつ
エンドロール後に見せたスラヒ氏の笑顔が
この映画の根本的な意味なのだと納得した
ジョディ・フォスター、ベネディクト・カンバーバッチ
両俳優の演技は素晴らしいながらも、薄い印象を
受けるのは、浮き彫りにしたい事実を浮き上がらせる
為なのではないかと考えた
世の中から、不条理が減り、司法制度に本当の正義が
取り戻され、世の中から冤罪や誹謗中傷で苦しむ人が
少しでも居なくなる世の中を願いつつ
スラヒ氏と同じような境遇の人が、少しでも早く
苦しみから解放される事を心から祈る
この世の中には、苦しみを与えられて然るべき輩が
大手を降って、のうのうと生きているのだから