劇場公開日 2021年10月29日

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「よく耐え抜きました! 再送信」モーリタニアン 黒塗りの記録 コショワイさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0よく耐え抜きました! 再送信

2022年1月17日
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鑑賞方法:映画館

怖い

知的

前のアカウントが不明となったので、履歴管理のため、再レビューしました。

1 9.11同時多発テロが生み出した狂った正義感。それに巻き込まれた若者の姿と彼を巡る人々の動きを通して、アメリカの消えざる汚点を描いた社会派サスペンス。

2 テロがあった直後、ブッシュ大統領は、この責任は必ず取らせると国民に誓いを立て、テロの首謀者や大量破壊兵器を巡り、狂ったようにアフガンやイラクを攻撃。同時に、テロの関係者とされた多くの人々を拘束し裁きを受けさせようとした。主人公もその中の一人。

3 映画は若者、弁護士、起訴チ−ム責任者の 動きを散りばめながら展開していくが、次第にアメリカが彼に何をしてきたかが明るみとなる。真実が全て暴き出されたと思った瞬間、さらなる恐怖と狂気の事実が告げられる。

4 この映画には国の犯罪を暴く生真面目さがある。そして、主人公を巡る弁護士と起訴チ−ムと機密の壁がせめぎ合う知的面白さもある。何より、国家権力に対する主人公の揺れる心の動きやへこたれない姿を真芯にした構成。そこらへんのバランスが良かった。

5 ジョディ・フォスターとカンバ-バッチは脇に回ったが、狂気の時代の中で、流れに棹さす良心を体現し、好演。主人公は強靭で折れない心と寛容な精神を持った本人を再現して魅力的であった。

6 最後、主人公が自由となった後の映像が紹介されたが、笑顔と伸びやかな姿に安堵を覚えた。

コショワイ