「考えさせられるサービス」レンタル×ファミリー R41さんの映画レビュー(感想・評価)
考えさせられるサービス
実在するサービス その経営者が書いたドキュメンタリー小説を映画化した作品
なるほど~ と唸ってしまう。
小説に書かれた言葉のニュアンスとの違いがどこにあるのか知りたいと思った。
ひとまず映画に主軸を置き、この作品を考えてみた。
107分の中に3つのエピソードが描かれている。
ネット社会になった昨今、アプリによって様々なサービスが登場した。
そして発展したのがネットの中ですべてが完結できる世界 メタバース
逆に、リア充を求める人々も多く存在する。
実際に、ソープランドがあり、パチンコがあり、ホストクラブがある。
この延長線上にあるのが、この「家族レンタル」というサービス。
率直な感想は、
「人を喜ばせておいて、後でがっかりさせるもの」だと思った。
ただし、それがいいか悪いかはサービスを受ける側が決める。
ここが盲点だろうか。
ナナコ
彼女は母が死んだことでこのサービスを知り、パパだと思っていた人が赤の他人だったことを知る。
生きるためにペンションで働き、やがてオーナーから大学受験とサービスのパパに会うべきだと助言される。
オーナーの言葉の真意がどこにあったのかは不明だが、その事で悶々となってしまうのは良くないと思ったのだろうか?
ナナコはサービスのパパに会いに行く。
頭ではわかっていることなのだが、心は納得できないというのが正直なところだろう。
そして、この会社は妙に善意的だ。
だからドキュメンタリー小説が書けるのだろう。
仕事に対し完全に割り切っている三上
同時に顧客への配慮は欠かさない。
個人的には、ここが非常に小悪魔的に感じてしまう。
ナナコは三上と話し、母と三上との依頼内容を知り、母に「ありがとう」を呟いた。
翌日ナナコは、別の家族の父親役をしている三上を目撃する。
この現実
ナナコは母の死に乗せて、いろんな想い出をあの瞬間に捨てたように感じた。
想い出が想い出ではなかったこと。
この空虚感は「切なさ」という言葉では表現しきれないほどの虚構だろう。
ナナコにとっては、逆に踏ん切りがつけられたのかもしれない。
確かにソープもホストも「いまだけ」楽しいものだ。
あのマナミという客のように、ホストクラブに通うためにキャッシングするようになってしまえば、サービスの根源を忘れ、お金で幸せが買えると錯覚してしまうのだろう。
このサービス、顧客に善悪の判断を委ねてしまう是非
エピソード1の母子はサービスを止めた。
その母子とすれ違うナナコ
彼らは本当に虚構とさようならができたのだろうか?
人の心 寂しさはお金で埋められるのだろうか?
あの誕生日は、あの孫とのひと時は、本当に「想い出」となるのだろうか?
そしてこの作品はあくまで「ドキュメンタリー小説」が基本だ。
リア充と言いながらも、嘘と本当が入り混じる世界(サービス)
お金で買えないものを、あたかも買えるように見せかける世界(サービス)
買えたような気になるサービス
そこに残った割り切れない人の想いがあるはずだ。
バーチャルティアリティならぬルタナティブリアリティ(代替現実)
現実世界にフィクションを重ねて体験させる。
なかなか恐ろしいサービス
そして現実にあるサービス
満たされない現代人の心が求めたもの。
なかなかシリアスに考えさせてくれる映画だった。