「この薄っぺらさ!あえての演出? だとしたら、すごい!!!」レンタル×ファミリー とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
この薄っぺらさ!あえての演出? だとしたら、すごい!!!
家族はレンタルできるのか?という話。
”人材レンタル”は『リップヴァンウィンクルの花嫁』で知った。
エキストラみたいで、やってみたいなんて思っていたけれど…。
レンタルって、必要な時だけ借りて、いらなくなったら返却。気に入らなかったら返却。
しがらみが無い分、楽だけれど、家族って、そんなものなのだろうか?
物でさえ、長年使っていれば愛着がわく。
人は?
家族…。
「僕は、血の繋がった本当のお父さんじゃない」
この映画の中で何度も繰り返される言葉。
本当のお父さんて、なんだろう。
ステップファミリーは血がつながっていない。
養子縁組家族だって血は繋がっていない。
他にも、他にも。
でも、しっかりと”家族”になっている家族はたくさんいらっしゃる。
疑似家族だって、もっと心の繋がりはあるだろうに。
三上は、クライアントが望む”理想の父”を演じると言っていたけれど…。
”理想”って、何?
特に、エピソード3では、福祉の職員の方が、もっと親身に、菜々子の身の振り方を手配するぞ!
(映画では、一人になった菜々子に対して、学校側も、福祉も、親戚も出てこない。私の周りでこんなことがあったら、菜々子の母の店の社員が学校か子ども家庭支援センター/児相に連絡、児相が動いて親戚に連絡とってとなると思うけれどな。で、引き取り手がいなければ、保護となる。三上が菜々子の福祉に関わる機関に連絡するわけでもなく、ただ、自分の立場を釈明するだけで放置。レンタル業を際立たせるために、あえて、そういう部分は削ったのだろう)
短時間の付き合いならば、化けの皮は被り続けられ、”理想”を演じられる。結婚詐欺師等の常とう手段。ホストと変わりないと思うのは私だけ?
でも、日常を共に過ごせば、期待に反する部分も出てくる。反対に期待される部分も。そのすれ違いから、喧嘩とか、諦めとか、”理想”だけではなくなるのだと思うのだけれど。
三上だって、菜々子がオフィスを訪ねた時の対応…。アポなしの時にはあるあるだけれど、一言「後で時間作るから待ってて」が欲しかったのに。
結局、三上にとって、クライエントの要望を完璧に演じられるかが大切なのであって、クライエントそのものを大切にしているわけではないんだよな。
その後の、菜々子の表情が痛々しい。
それでも、帰る場所が見つかったから、あれで済んだのだろうと思いたい。
父を求める子。それに応えたい母。
『Dearフランキー』でも、偽父を探した。
そのために婚活する方も実際にいらっしゃる。良いご縁に巡り合える時と、悪いご縁に捕まってしまう時と…。
子の願いを叶えたい気持ちは、母ならではのことなのだろう。
でも。
何回にもわたって利用するのなら、せめて、子にインフォームドコンセントするべきなのではないだろうか。
ドラマはあえて深堀しない。
エピソード2は、三上に密着したドキュメンタリー風になっている。
それなりに、自分の仕事に悩むシーンも出てくるのだが、ほとんど、自己啓発セミナーか、新興宗教がらみのスタッフのように見えてくる。
受験のための代理父って。入学してから、詐称がばれて、退学にならないのか?
結婚するということは、親族の冠婚葬祭だってあるだろうに。
それでも、了解してレンタルするのなら。大人なら自己責任。
孫レンタル。ふうふうされた食べ物を子どもに食べさせるって、ぞわぞわした。コロナ等の感染や、虫歯菌だって感染するのに。子役なら、じじ役と食事共にするから、了承済のことなのか。子役が大成しづらいというのが納得。
エピソード1では、ツッコミどころだらけ(さくらと朋子が似ていないのは、予算不足だったのだろうと目を瞑るとして)。チェーン掛けずに、子どもに玄関を開けさせる?スマホのパスワードは?秘密を扱っている仕事なのに、安易な受け答え。
すごく薄っぺらな、表面だけを扱ったものに見える。
元々、監督の作風がこんな感じなのか。
あえて、狙っての演出なのか。
ポスターのビジュアルを見ると、一見きれいにまとまって見えるけれど、その裏読みをさせるべく、作ったようにも見える。
胡散臭さが際立つ。
だとしたら、ものすごい問題提起。
へたにドラマ仕立てにするよりも、心に楔が打たれたような気持になる。
原作未読。
原作者のオフィスを三上のオフィスにしたり、舞台挨拶にもいらっしゃるほどの協力。
となると、私の裏読みは深読みか?
気になる。
★ ★ ★
役者では、菜々子を演じられた白石さんがすごい。
菜々子の戸惑い、絶望、諦め、それでも状況を(無理くり)飲み込んで前を向いて生きていく、その静かな芝居が秀逸。
ペンションの先輩従業員を演じられた方は、劇団の役者さんだろうか。
でんでんさん演じるペンションオーナーとの掛け合いが、この映画の中で唯一自然。
他はエピソード1と2の出演者にしろ、菜々子の母にしろ、お芝居のためのお芝居をしている演技ばっかり。だから胡散臭くもあり、演出?
三上を演じられた塩谷さんはホストそのまま。この映画の胡散臭さを振りまく。
でんでんさん。好々爺なんだけれど、ひょっとして、裏があるのかと一瞬構えてしまった(笑)。