茜色に焼かれるのレビュー・感想・評価
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尾野真千子の人生に混乱しながら信念を持っている強さの美を魅せられた
冒頭にあった例の池袋の事故を彷彿させるシーンから、最後の茜色の夕焼けのシーンまで一気に吸い込まれるように魅入ってしまった。
尾野真千子演じる田中良子がずっと抱える外に吐き出せない闇を徐々にいろいろな人間関係の模様から、ようやく怒りや苦しみ喜びを吐き出していく。ある意味、最初の方は死にながらゾンビのように生きているような尾野真千子が徐々に感情を外に表現していくことによって『生きている』という形が見えてくる
なぜこんなにつらいの生きているのかという永瀬正敏の問いに尾野真千子は笑うしかなかったけど、苦しくて不幸ばかり訪れるような状況だからこそ生きるという意味を考えさせられ深く味わえてくる。
茜色の夕日が美しく息子と心を通わせた瞬間、見ている側もようやく心を震わせられて、感動してしまう。束の間の美しさかもしれないが、それはとても感動的だった。
内容は不幸と屈辱の連続で辛くなってくるけど、所々クスっと笑えるところもありつつ、また同級生を尾野真千子が包丁で刺そうとして、同級生、大塚ヒロタさんが必死に転がり逃げまどうシーンは唯一、非現実的でコントのような場面でもあり、痛快さもあって救われるシーンでもあった。
最後の雌豹も笑
苦しみの中に笑いというのはやっぱりすごく重要だと思わされる
出てくる男たちはみんなズルい奴らがとても多かったが、みんな大人だけど小学3年生くらいの男の子と思えばなんとなく納得できる。男性が本当の意味で大人になるというのは、すごくハードルが高いことなのかもしれないと思わざるおえなかった。
息子くん、和田庵くんも今後ちゃんとした大人として成長してくれることを願う。信念をしっかりと持ったお母さんの背中を見ているから大丈夫と思うけど。
それにしても嶋田久作さんの話聞いています?あなたの7年前の事故に興味はないという会話をしているシーンの圧倒的な存在感と嫌なやつっぷり感は飛び抜けてた。
みんなそれぞれとても不幸な状況に陥れてくれる男たちの分かりやすい振る舞いが苦しさを生み出していたけどクズっぷり満載を凝縮してみれてよかった。そして尾野真千子の女優っぷりがなんといっても素晴らしかった作品です。
理不尽な世の中をどう生きるか
冒頭のブレーキ踏み間違え事故は、高級官僚ってことで、例の事件が想像できる。なぜ逮捕されないのかという、遺族の思いや、加害者側は既に済んだ話とされ、守られる弱者が守られない
シングルマザーとして働くものの、昼のパートでは、新人の学生が来るということで首になり、風俗嬢の仕事では、そもそも男に見下される
お金の為に働くとはいえ、出費は、義父の入院費と旦那の愛人の子供の養育費
ようやく久しぶりの恋が出来たか思えば、遊びだとふられる
ここまで重なるのかと思うなかで、
職場の子には、もっと怒った方がいいと言われ、息子には何を考えているかわからないと言われる
確かに、そこまでして、生きる意味は何だろうなと考えさせられる
弱い人が守られるべき規則とか決まりが、悪い方に付け替えられてしまう。
首にする口実に、廃棄品を持っていっていた規則違反を言われ、
家に火をつけられたのに、周りに迷惑をかけたら退去の規則により退去させられる
出てくる男もみんな屑だけど、
同じ風俗嬢の女の子と、その店長だけは味方でいてくれたのが救いかなぁ
風俗嬢の若い同僚に恋した息子、お姉さんに憧れる気持ちわかるなぁって、何でもしてあげれるって若いときは思っちゃうよなぁと。
でも、彼女自信も悩み、生きる事をやめたことを誰も攻めれない
マスク姿やコロナが普通に出てくるのが、今の時代ならではだな
前半30分を撮り直したら大好きになると思う。
オープニング画面に某新聞社のロゴが大々的に映し出された瞬間、思いましたがな。「ヤベ」。まった、あれか?社会性匂わせてミョウチクリンな政治ネタに強引に結び付けて「胸かきむしる」って言っちゃうんか?
この時点で、途中退席が脳裏によぎります。予定より早くYシネマさんに移動して、一本余計に観よう。冒頭の交通事故エピソードで、途中退席決定。だって、見るに耐えねー!
それがですよ。ケイちゃん登場で、良子と絡むあたりからギヤチェンジ。そっからは石井裕也節炸裂。最後は、「ハチャメチャだけど、やっぱりかーちゃんが大好き」で締め。
鑑賞後、フライヤーの裏書きを見ると、もうね。あれです。全開です。配給会社の恣意性が。ゼネラル・プロデューサーは川村光庸さんだしね。これを知ってたら、絶対見てないw
一方、製作に竹内力さんの名前を見つけて納得。竹内さん、「私をくいとめて」「名もなき世界のエンドロール」に続いての製作参加。外れが無い、と言うより、商業映画としては当たりばっかしですやん!
幸せから見放された女であるケイ。純粋さゆえ「こうすべきだ」と思う通りに、頑張って生きる道しか知らない良子。その狭間で思春期の階段を上り始めた純平。
空を染める茜色に色に焼かれる二人。茜色の空のもと、焼かれたケイ。と言う、生と死の対比の中で「かーちゃんが大好き」なんて、あれですよね。1970年代の手法だなぁ。なんて思いながら。
胸はかきむしられなかったけど、不思議な郷愁を覚える映画でした。
ただ。
長いってw
漁港の肉子ちゃんのほうが好き。10倍くらいw
息子のすっとぼけた感じに救われた
金曜日のスタンプ会員デー昼過ぎの回にいつもの映画館
客は10人くらいかな
本日は休暇だったので鑑賞前に公園のベンチでビール
家からこっそり持ち出したおつまみとともに
保冷剤も持ってきたので缶ビールの冷たさを保持
マスクを外しラジオを聴きながら たまらなく幸福なひととき
で 映画の話 期待通り 素晴らしかった
コロナの話も織り込まれていて
監督の社会の理不尽さへの怒りが投影されている
監督自身が編集も行っていて
エピソード毎のバランスがとれていない印象があったが
そういうところがむしろ好ましく感じられた
きっと膨大な映像量をどうにか2時間半に収めたのでは
老人の暴走事故とか子宮頚ガン 肉親からのレイプとか
シリアスなエピソードも多いが作品全体にはユーモアがにじむ
息子のすっとぼけた感じに救われた
息子が床に股間を擦り付けているところを
淡々と見る母の画はなかなかだ
旦那の昔のスケベなバンド仲間 教師 尾野真千子の初恋相手
花屋の店長 風俗の客 死んだダンナの元愛人
息子をいじめる連中…
どいつもイヤな奴らだが記号的な役割でなく丁寧に描かれている
それぞれの理屈で生きていることがうかがえる
そして酷い目に遭うこともない(あ 初恋相手は遭ったか)
息子の成績が良すぎるエピソードの意味合いは
よく分からなかったが その後の尾野真千子の表情が幸せそうで
そういうところを描きたかったのかと
風俗嬢を演じた女優よかった 居酒屋のシーンがいい
ろくでもないオヤジとかヒモを結局かばっているところは
映画ながらつらいものがあった
映画の中だからこそ救ってほしかった
永瀬正敏はカッコよすぎ さすがに最後はありえないかと…
でもまぁ全てを許せるいい映画だった
出演者のプロフィールとかレビューを見るのが楽しみだ
プロデューサーに竹内力 リキプロダクションの名
ここでもニヤリ 出てもよかったのに
メラメラと青い炎のように燃える尾野さんが「今」を描きます。
大好きな女優さん尾野さん主演作。観ないわけがない、、、、ってことで鑑賞です。
本作は楽しい作品じゃありません。爽快感も溜飲が下がこともなし。もちろん、全米も泣きません。「負の現実」が怒涛のロイヤルストレートフラッシュで迫ってくる作品です。今の日本の中における不条理を、社会的弱者の現実をこれでもかと見せつけてくれます。
同じ法、ルールの中で生きてるのに、強者はより強く、力なき者たちは集団となりマイノリティを挫く。弱者はただただ耐え忍ぶ。さらにこの時期だからこそ描けるコロナ禍が引き起こす負。女性という立場がもたらしてしまう負。食べきれないほどにテーブルに「今の日本」が並びます。本当にこれでもかと。さらに、その弱者が選ぶ未来まで提示します。
こんな社会でいいんですか?あなたたちが生きてる世界ってこれですよ?と監督が問いかけてきているようです。ただ、どんなに不条理でもどんなに打ちのめされても生きるしかないのが我々なんだと思いますが、なんとも悲しい話です。不条理に叩きのめされ、自分を押し殺し、感情を鎮め、ただただ辛い社会の中生きる意味を見出し生きて行くなんて・・・辛いですよね。
そんな辛い社会に生きていく者は、暗黒の夜と昼間の狭間を漂っているのかもしれません。綱渡りのようにふらふらと落ちそうになりながら、なんとか夕焼けの中バランスをとって生きているようです。そこに留まるか、暗い世界を選択するのか?。バランスと取り落ちずに食い止まっているのは「生き甲斐」あってこそなのでしょうね。生き甲斐が有りさえすれば、夕焼けの茜色の空の色に染まりながらもなんとか生きていける、人生の暗い夜に落ちていくことないはずだと・・・。そんな応援歌の作品であってほしいと思いたいです。
と、思う反面。本作は監督からの痛烈な「皮肉」も込められている気がするんです。ずっと引っかかってるのは、冒頭画面右隅に出る文章です。
「田中涼子は演技が上手かった」
この演技とはなんぞや?と。この不条理が立ち込め、弱者を痛ぶる世界で生きていくには、自分の本心を演技で欺きながら、心配する周りの人達に演技で安心させながら、このくだらない社会を生きているために「あなたは演技して生きているんですよ!」と。そう田中良子は僕たち自身の姿なのではないでしょうか?「まぁ、頑張りましょう」はおまじない。ホントの気持ちは抑え込み、生きていくために大丈夫な自分を演じ切るための。良子に対して持つイライラ、違和感は実は自分たちに対してのものだったのではないだろうか?と。「変える努力せずに乗り切る演技をしてるよね?それでいいの?」って監督がシニカルに言ってきている気もするのです。
こんな2つのメッセージが込められているんじゃないかな〜?って勝手に思ってますけどね。
本作は強い描写と強いメッセージがふんだんに盛り込まれ、それを尾野さんはじめ、演者さん達のの魂が込められた演技で、説得力200%で届けられる作品です。観たら何かが解る、何かが変わるというものでは有りませんが、日々の生活の中で、人生で大きなアクセントをつけてくれる一本ではないでしょうか?
本作ではそんな不条理社会をクローズアップしていますが、ちょっとだけプラスも描かれます。それは人間関係の中で生まれるものです。ほんのちょっとですが。それもまた今の世界ですよね。
ただ一点、良子がなぜに自ら不幸を選んでいくようなストーリーになってしまったんだろうか?という点だけが、納得行かなかったんですよね。これほど生きることに、息子と生きることに全身全霊をかける人物が、経済的な部分で自我を通すかなぁ?ってのが僕にとっては疑問で、それがずっと鑑賞終了まで腑に落ちなかったんです。この不幸って、良子さんが選んだ不幸ですよ?もっと考えて、他力を頼って行動した方が良かったんじゃない?って。ストーリー作るための不幸の連鎖感が、僕としてはフィットしなかったんですよね。その点加味の評点です。
誰の視点の映画だったか
茜色に焼かれる
をレイトショーで見ました。
正直、感情が追いついていくのが大変だった。
自分では、しないだろうと思う事がたくさんあった。
同級生に風俗で働いていた事を話すこと。
旦那の浮気相手の子供の養育費を払い続けていること。
賠償金をもらわなかったこと。
念書まで弁護士に渡していること。
などなど
プライドや生き方なのだろうけれど、普段は『まぁ頑張りましょう』と流してしまうが、それを風俗同僚のケイちゃんに酒を飲んで、泣きながら吐き出してしまう。
とても辛く、憤りを感じ納得できず我慢して、生活の中で演技をし続けていたのだろうと思いました。
冒頭のシーンの字幕で
『田中良子は演技がうまい』
だったかなぁ。書いてあったので映画を見ている間、頭を離れなかった。
男だからわからないのか。
自分がまだ彼女達に比べれば幸せだからわからないのか。
心が不純だからわからないのか。
息子以外の男は
皆んなひどかった。でも多かれ少なかれ皆んなそうだ。リアルに描かれていた。オダギリジョーや永瀬正敏もカッコいいけど、どうしようもない。
尾野真千子さんはもちろんだが
ケイちゃんもよかった。
尾野真千子さんを演技で食ってしまいそうなシーンも多々あった。
片山友希さんよかったです。
ケイちゃんの自死も気持ちではわからなかった。
生きる事に意味がなくなって自死したのか。
息子とデートの約束や
尾野真千子さんとカフェを一緒にやろうとと話されたこと。
それではダメだったのか。
または
自分が醜く死んでいくのを純平に見せたくなかったのか。
それともヤクザな彼氏とどうしようもない父親に頼る事も出来ず、増してや田中良子などには、彼女達の人生に負担をかけるような迷惑をかけられないし。
これからの闘病生活を考えればお金もかかるし世話をしてくれる人もいない。なけなしのお金を全部渡して死んだのか。
悲しすぎる。
最後に息子のナレーションで
これが私の母親です
とんでもないけど大好きだ。
みたいなことが、確かセリフであったが、
この映画は息子の未来からの俯瞰した視点から、
訳の分からない個性的な難しい母親と父親に対しての愛情溢れる思い出の物語でもあったのか
とも思いました。
微妙
泣ける映画と期待してハンカチ持ってったけど
微妙だった…
尾野真知子は大好き。永瀬さんも和田庵もすごく良かった!尾野真千子、オダギリジョー、その他主要キャストの演技は最高だった。
しかし冒頭の池袋暴走事故を彷彿とさせる所が長すぎる。この時点でへこむ。
ピンサロシーンがあまりにも多過ぎる。
女性ドン引き。
熊木くんはそこまで悪くないし彼と付き合えると思った良子がおかしい。
なので熊木くんに犯罪をやらせるのはやりすぎ。最初の弁護士とからめて上手い事やったと監督が思ってるとしたらひとりよがりです。
そもそも良子のバックボーンが回想シーン一つないのは変。良子のアングラ女優姿が写真でもいいから欲しい。オダギリジョーのライブシーンくらい入れてよ。この夫婦に感情移入出来ず。
ケイの人生はきちっと説明できててケイが一番辻褄合って感情移入出来た。
片山友希の演技力に感激!
ラストシーンは唐突。ほんと監督これで気持ちよくなってるとしたらやばい。
夕焼けも画が全然印象に残らない。
箇条書きみたいな映画だとしても、メインのシーンはどこなの?って思いました。
あとドラマーがルックスが必要以上に顔にクセあってすごい余計だった。幸子可哀想。
ヒゲいらない。
荒川の土手
尾野真千子目当て80%。石井監督目当て、20%。
和田庵君の鼻と尾野真千子の鼻がよくにていて、ほんとの親子みたいだったよ。
途中(最後10分から15分ぐらい)までは凄く良かったです(☆4.5)。ただ、あの人(キョンキョンの旦那)が出過ぎ。
エンディング、ぶれぶれでした。
まだ若い石井監督だから、自分で脚本書く監督だから、敢えて苦言を言いたくなります。期待しているから。
コロナ禍での撮影。それはわかりますが、コロナ禍と関連付けなくても良い内容だったので、じっくりエンディングをやって欲しかった。
片山友希のケイがとても良かった。生い立ちが複雑で、生まれつきの糖尿病で、男運の悪い彼女を子宮頸がんにして自殺させた。
自分のことでは怒れないけど、ケイのことなら怒れたんじゃない?火葬場で問題の父親を出してきたのなら、良子が喧嘩腰で父親に突っ掛かる場面が欲しかった。
アルツハイマーの老人に引き殺された旦那オダギリジョーのバンド仲間のコロナ禍の飲み会(7回忌)の場面で、飲ませたら手がつけられない怪演をする劇団女優のエピソードがちょっとだけ語られるが、尾野真千子の俳優魂の発露が弱め。途中、これは女優田中良子の芝居だなと思う場面(少しクサめ)はあったけど。
バンドのドラムのただやりたいだけのお茶屋のバカ親父は必要?官僚の家族の顧問弁護士役の嶋田久作が最後にはオレオレ詐欺の受け子を守る弁護士?
熊木君とのラブホシーンは片乳見せるだけ?
田中良子(尾野真千子)が示談金を拒否して、許すまじと懸命に生きてきたのだから、老人の葬式に乗り込んで、見ているこっちが怖くなるような大立回りの大芝居を見せて欲しかった。
そして息子役の和田庵君が、お母さんもういいよって大泣きするエンディングからの荒川の土手の夕陽が見たかった。
茜色に焼かれるという題は凄く良い。だから、さいたまの荒川の土手の夕陽の場面で終わらせて欲しかったよ~ん
怒りの指す方へ なんのために生きるのか
「もっと怒っていいんだよ」
主人公の良子は度重なる理不尽に合いながら、社会のルールとの狭間でなんとか理性的に生きてきた。怒りを出さないことは、彼女の理性ゆえかとも思う部分も多く見えていて、彼女の賢さゆえの立ち振る舞いにも思えた。
それでも息子のいじめに憤る姿に、「誰かのためなら怒れる」姿も見えてくる。
同級生に詰め寄るシーン
彼女のこれまでの人生を考えたら、本当に包丁を突きくけるべきは、事故の加害者であり、謝罪をしない遺族に対してじゃないか。あるいは、息子の存在を馬鹿にして命の危険まで晒してきたガキどもに対してじゃないのか、とても疑問だった。
だけど、誰かのためじゃなくて、自分自身の身に直接降りかかった理不尽に直接対峙する重要な意味があるのかと思えてくる。
夫は社会に対して怒り、その社会に死んだ後でさえ虫けらの様に潰された。
子供はそんな境遇のせいもあり、変わり者を排除する暴力にさらされた。
はるかに大きな理不尽だし、客観的に見ているこちらとしては、怒りの矛先が不自然にも思えた。
一方で彼女自身は、大きすぎる理不尽に対して「神様」を想定してどこか諦観のような態度でもあったのかもしれない。
しかし、自分自身の問題に対して怒ること、それを彼女が見せること、それこそが彼女が自分の意思で生きる上で重要だったのだろうと思う。
彼女の脅迫行為は、結果として相手を破滅に追いやっている。今まで自分がされてきた、社会のルールから外れた理不尽を他者に与える行為でもあったと思う。穏やかなBGMが流れていたが、決して穏やかなシーンではないと思う。
しかし、それでも彼女は自分の意思で怒り、その結果生きていく道標としての息子の存在を改めて認識するための行為だったのかもしれない。
余談ですが
学校のシーンの後にお店のシーンが流れたり
教師に対して怒っているときに「大事な話が」と言われたり
「学校」という場面で「売春」という言葉が使われたりして、仕事がバレるんじゃないかとハラハラさせたり
事故のイメージ図を冒頭で最初に見せてから始めたり
ポールで視界を隠したり
そのポールが真っ赤だったり
細かな伏線というか、匂わせというか
うわーずるいなー うまいなー
と思いながらも、上手いこと手のひらに乗せられてた感じで面白かったです
あとラストの「茜色に焼かれる」1番大事なシーン
おそらくコンプラ上、2人乗りを漕いでいるところを直接撮ることはできないと思うから、背景ははめ込みだとは思う。
そこはいいんだけど、草花が風で揺れているのに、2人の服や髪が微動だにしていなかったのが気になってしまった。
細かいとこ気になってごめんなさい。
現状のていねいな描写
切ない話が続くよね。
観てて「経済的困窮はしんどいけど耐えられる。屈辱を与えられるのが耐えられない」と思ったな。
あとは、弁護士さんで顕著だけど「話を聞いてますか?」と言う人がこちらの話を全く聞かない。それから、「上に言われて」「上に言われて」が出てきて、弱い者がさらに弱い者を叩く構図。
熊木くんに対する仕打ちは「ひでえなあ」と思った。これも出てくる中で一番弱いところにいったと言えなくもない。
話をまとめずに終わっていて、淡々と事象を描写した作品になっていたけど、観てて考えさせられたな。
なぜだろう。役者さんは皆良い。尾野真知子の強さも片山友希も。永瀬正...
なぜだろう。役者さんは皆良い。尾野真知子の強さも片山友希も。永瀬正敏もさすが、出てくると画がしまる。
息子役が、すごくよかった。卑屈にならず、母を信じて、母子家庭の息子ってこうだろうなぁと頼もしくも感じた。
ただ、何度も発せられるいセリフややりとり、理不尽さを主人公に与える役割が、極端すぎるのか、意図が
わかりやすすぎるからか
計算を感じてしまい今ひとつ前半入り込めなかった。
でもこのコロナ禍で
弱い立場の者たち、理不尽な世の中、
に明るさを与えてくれる主人公であり
ラストのシュールなシーンがオチのようにもなっている遊びゴコロは石井監督ならではだと感じました。
脚本は頂けない。
尾野真知子がこれまでの取り組み方では演技できなかった、というようなことを言っていたので興味を持ちました。
お話は一言でいえば、シングルマザー応援歌みたいな感じの話です。しかし同時に、こんなひどい社会の中で、生きる意味を真面目に問いかけていたんですね。
シングルマザーの反逆っていうか、それによって生きるための推進力を得るということなんですが、理不尽な目にあいまくるシングルマザー役として尾野真知子では重すぎると感じました。
俳優陣は彼女も含めて、熱演で、それは見ていて気持ちのいいものではあるんです。しかし、シングルマザーに焦点を当てるのであれば、尾野真知子では強すぎるんですよね。シングルマザーとして差別されながら、肩身を狭くして生きてる役なんだけど、どうしてもそう見えない…
しかも反抗の中身も、おい、今の社会で怒りの向く先がそこなのか⁉︎ 脚本が本当に表層的で幼稚だなあとしか感じられなかった。石井裕也監督のオリジナル脚本ということなんですけどね。また、あーあな日本映画が追加された、正直そう思ったのです。
ところが驚いたことに、1100円もするパンフレットを読んでみると、ストーリーもさることながら、コロナ禍で映画を作るということにとても重点が置かれていたことが判明。パンフは主な出演者だけでなく、コロナ禍なので極限的に人数が減らされたスタッフの声も載っていて、制作現場の様子がわかり、中身はあるものでした。
それをみると主演の尾野真知子からして、最初はコロナ禍なので仕事はしないことにしていたのに、脚本を読んで出演を決めるなど、コロナによって出演者スタッフ全員大きな影響を受けつつある中で制作されていたのです。そしてそのことこそ、映画が作られた大きな動機なので、話もコロナ時代の中で展開しているんですね。マスクつけてたりして、筋とは関わらないですが。撮影は昨年の8月末から9月いっぱいに行われたものなので、本当に手探りでコロナ対策をしながらの大変な現場だったようです。
とにかく理不尽な社会に負けない!っていうことへ向かって、突発的に、しかし作らなきゃ!と作った映画らしいのです。
この製作陣の熱とは裏腹に、私はますますドン引きしてしまった。希望なしには生きていけないけれど、これで生きていけるのか…なんだか、ラストにほのかに提示される希望にまるでピンとこないというか。
しかも希望がなくなったら死ぬしかないじゃん、みたいなことも併せて言われてたりして…
社会への問題意識はわかったけれど、その先がとても線が細くて、現実社会で闘われている生きるための闘いの重さと比べて軽いんですよね。最後の自転車のシーンは、美しいけれど、なんかやはり頭の中で捻り出されたものでしかない。
最後に付けた劇中劇は賛否両論あるかもしれない。石井監督からしたら絶対に必要な部分でしょう。それは、彼の話を読むと理解はできる。しかし読まないとそこにこそ主眼があったとは、私は理解はできなかった。ええ、そこなの… みんな仮面をかぶって人生演技してるって?あるいは、芝居でしか本音言えないって?なんだかなあ…映画の熱量の中に入れず、さらに脱力。
最初に映画の隅に主人公のことを記載した一文が出てくるんです。そこに確かに監督の大事な思いが書かれていたんだと、パンフ読んでわかったものの、映画の前の宣伝があって、その後に朝日新聞ってのがバーンと大きくそれだけで出てくるから、まだ宣伝なのか?と思ってると、田中良子は…という一文が出てくる。そもそも田中良子が誰なのかもわからない訳ですからね、こちらは。主人公の名前ですけどね。そして何?と思ってるうちに映画が始まるので、その一文は忘れていき、そこに主題があったとはパンフ読むまでわからなかった。
現実のシングルマザーはこれで元気になるんだろうか?
シングルマザーの現実をなんとなく利用して別のことを表現しただけなのか?
とってつけたような希望なんかいらない。
コロナ禍で、このテーマでよく撮ったとか、俳優陣への賛辞だけで、批判がでてこないのなら、日本の映画界には私はやっぱりついていけない。
尾野真知子の力演はもちろん、息子役の和田庵、主人公の同僚役の片山祐希よかった。さらにたった2分ぐらいふら〜っと自転車に乗ってただけで、あとは写真のみの出演のオダギリジョーの存在感は特筆ものかも。俳優陣の良さが救いの映画ということになるのかもしれません。尾野真知子ファンにはお勧めでしょう。
いま苦悩する女性の物語
コロナ禍である現在を描いた作品です。
夫を交通事故で死亡した7年後の物語で、ルールや価値観に縛られた人生を歩む女性の先の見通せない苦悩を描いてるんだけど、私的には共感を感じることが少なかったです。
耐え忍んで生きてるんだけど、戦わないことがルールになってる様でどうしてもスッキリした感じにはならなかったです。またお金についても、金額が映像で流れるんだけど楽観的なのかどの様に稼ぐのかに言及しなく流されるままに進む感じが。
最後にルールを逸脱し始めることで、少しずつ社会で生きることが苦だけではなく笑顔が見えることが救いなのかも。
これが、オレの自慢のかあちゃんだ!
昨今の邦画上映本数の乏しさは悲しいですが、こちらは鑑賞後の感覚がとても良かったです。
きっとあなたの身近にも居る親子の話。
新型ウィルスのおかげで貧しさに拍車がかかり、荒んだ世間に冷たくあしらわれ、負のスパイラルと言うしかない状況に追い込まれる。
良子、純平、ケイ、涙を流しながらも不器用に真っ直ぐに、まっとうに生きている。
すごい人たちです。
わたしには純平くんに似た年頃の息子がいて、ひどいイジメの場面には身体が震えました。このご時世、子供たちの心は傷ついています。
わたしたち大人にできることは、困っている人には手を貸し、真面目に生活する姿をみせることかなあと思いました。
その点良子は立派な良い母親です。
ラストシーン、純平の声で「これが、オレの自慢のかあちゃんだ!」
あの親子は固い絆で結ばれ、この先幸せを掴むと暗示させる場面でした。
素晴らしい映画でした。
悪い冗談みたいなことばかり起きる世界で
尾野真千子さんの活躍を目の当たりにする昨今…単独主演映画ということで楽しみにしていた。
若い頃から才能を発揮してオリジナルの良作を創り上げてきた石井裕也監督の作品は必ずみるようにしている。
スターサンズ制作、河村Pということもあって社会の矛盾や歪みに斬り込んでくるのだろうな…と。
コロナ禍の今、水面下に潜んでいる悲痛な叫びが予想以上に詰め込まれいて刺される映画だった。
元高級官僚が起こした交通事故で夫を亡くした尾野さん演じる妻と中学生の息子を軸に描き出される世の中の歪み。
夫への賠償金は受け取らず息子・純平を1人で育て、施設に入院している義父の費用、夫の愛人の娘の養育費も払っている良子のプライド。ニコニコ笑う顔の下に苦しむ姿が見え隠れしていた。
カフェの破綻。バイト切り。夜の仕事とのダブルワーク。息子のいじめ。同級生の嘘。
これでもか〜これでもか〜と迫ってくる苦しみに押し潰されそう。
同じ店に勤めるケイちゃんもとにかく苦しい。
尾野真千子さんの熱演と引けを取らない片山友希さんの存在感が心に残って泣けた。
世の中の歪みに振り回されながらも信念をもって逞しく生きる良子と息子の姿にパワーをもらえた映画。
悪い冗談みたいなことばかり起きるこの世界…必死に生きて生きる人びとの生き様。
石井裕也監督の本気を見た!
コロナ禍の今だからこそ
観るべきなのに映画館が閉まっていて心から残念で口惜しいと思う。
一日も早くコロナが収束してこの親子の未来が輝きますように。
息子以外の男&通路挟んだ隣の客(男)
今をその場で切り取って映画にするって、すごく勇気あると思う。
園子温の「希望の国」とかもそうだけれども、まだ答え出てない事を映画にするって大変だと思うのよね。
だから、この時期に大きなお葬式?とか自転車による移動距離?とかステレオタイプな不良中学生とか、まあいろいろ違和感あってもそれを上回るエネルギーを感じた訳です。
息子以外の男の登場人物がみんなどうしようもなくて、でもほんとにあれくらいどうしようもない男ってふつうにゴロゴロいて、そこはすごいリアリティーだなと思いました。
「風俗とかシングルマザーならすぐやらせると思ってる!」ってセリフに笑ってた男とかいて、作品内の登場人物かと思ったよ。
様々な事に振り回されて、もがいて、あがいて、戦って、開き直る事を示してくれる作品です。
以前から気になっていた作品で、鑑賞した方の評判の良いのですが、都内では渋谷の「ユーロスペース」のみの上映となかなか厳しいですが、なんとか機会を作って観に行きました。
で、感想はと言うと、良いね。
なかなかずっしりどっしりな感じで、引っ掛かる部分での「フック」も十分で見応えがあります。
何よりも尾野真千子さんがやっぱり良い♪
アルツハイマーを患った高齢の元官僚の老人が運転する車に交通事故で夫を亡くした良子。
理不尽な事故と加害者側からの謝罪が一切無い事から賠償金を受け取る事を拒否し、また加害者の葬式に訪れるが「嫌がらせ」とされ、一切の焼香にも拒否される。
中学生の息子の純平をひとりで育て、施設に入院している義父の面倒もみているが、経営していたカフェはコロナ禍で破綻。花屋のバイトと夜の風俗の仕事の掛け持ちでも家計は苦しく、息子は言われなき差別と風評被害に苛めにあっている。
だが、どんな時でも「…まあ、頑張りましょう」と前向きな良子。
だがそんな良子と純平、そして風俗店で同じ様に働くケイにも様々な事情があり、皆様々な悩みやトラブルを抱えていた。
世間的に社会的弱者とされるも、前向きに生き、様々な困難を立ち向かっていく。
だが、様々なトラブルが良子たちにのしかかる…
冒頭からいきなりの展開にビックリと言うかショック。
あのオダギリ・ジョーさんをいきなり退場させる荒技はインパクトは抜群であるが、普通に考えると勿体無いw
この事件だけで、あの2019年に池袋で起こった自動車の暴走事故をモチーフにしていると言うのが分かる。
元ネタ(であろう)の事故と映画の内容をリンクさせるのは些か強引であるが、それでも未だに「アクセルとブレーキの踏み間違い」を認めずに裁判で争うと言う姿勢は正直腹立たしいのを通り越して、吐きそうな嫌悪感を覚える。
なので「あの事件」を深く知ろうとするのはあまりにも精神的にもよろしくない。
でも、映画の作品を世の中に問いかける「フック」と言うのには、良い悪いは置いといてかなり効果的。
劇中で加害者の家族は「事故は仕方なし」「国民の為に尽くしてきた親父に対して、あの仕打ちは非常識だ」と言うのは「事故なんて親父の今までの功績を考えれば大した事はない」と言う事なんだろうけど、身勝手な「上流国民」の劇中のセリフとは言え、ムカムカします。
そんなイライラとムカムカで始まったと思えば、尾野真千子さん演じる良子の逞しさと飄々とした態度と行動に呆気に取られる。
もちろん、いろんな事を考えた上での行動かと思うが、貧乏に瀕しても賠償金を受け取らないのは謝罪をしなかった加害者へのせめてもの抵抗と言うのはある程度理解しようとしても、やっぱり全部を理解は出来ない。
生活費を稼ぐ為に風俗店で働くのも賠償金があればそうはならなかったのではと思うだけに、どうしても良子のエゴに感じてしまうんですよね。
でも、この辺りの良子の「正義」に呆気に取られるが多分、これも作戦の内で「観る側を手玉に取ってる」んでしょうね。
それぐらいに良子のしたたかさと純情、バイタリティが画面を通してグイグイきます。
あと、尾野真千子さんのベテラン(に見える)風俗嬢っぷりにはドキドキしますw
キャストは尾野真千子さんを筆頭になかなかな布陣で力強さを感じます。
個人的にはケイ役の片山友希さんが良い感じ♪
純平役の和田庵さんは絶妙なチョイスかと思います。
良い部分が多くて、観ていてもグイグイ引き込まれる部分があるんですが、ただそれでもツッコミどころはあるw
そんなツッコミどころを書いておくと…
・純平のいじめっ子が放火未遂で純平達が団地を追い出されるのに、いじめっ子達には何もないのか?
う~ん…いろんな物が消化不良であってもここは台詞だけでも良いのでキチッと決着をつけて欲しかったなと。
弱みに付け込んだり、自己満足の為に弱者をいたぶるのは描写であっても大嫌い!
他の部分は割りとオチがついてるのに、これだけほったらかしになってるのは納得いかんです!
・良子が勤めている風俗店「カリペロ」w、他の女の子が居る描写がない(殆ど)!
控え室は結構広いのに2人では結構もて余している感じ。
交流は無いにしても、他の女の子達の描写があるともっと良かったかなと。
・良子の同級生の熊木との出会いは出来すぎじゃあないすか?
かなり唐突過ぎw
ちょっとドラマを作り過ぎてしまっていて、分かるんだけどなんかこのエピソードだけ浮いてる感じがするんですよね。
放火の後に団地を追い出されるのが決定して、良子が包丁をカバンに入れて、向かうのはいじめっ子達か?はたまたここまで無関心を装った学校の担任か?と思いきや…自分を軽く遊びのつもりでもてあそんだ熊木だった!
思わず“そっちか~い!”とツッコミましたw
自分の大切な息子を苛めて、挙げ句の果てに放火未遂とは「お天道様が許しても私が許さん!」と来るのかと思いきや、自身の「女」の部分のプライドが最優先w
いや~ツッコんでしまいましたw
他にも幸子と滝のシーンは思わず「えっ?」となって「あのシーンているのか…」となったりしますが、永瀬正敏さん演じる風俗店「カリペロ」の店長の唐突な登場であってもスカッとする仕事人っぷりに思わず「カッケー!」となって、その後の仕事きっちり!っぷりにカタルシスが下がっても、出来ればいじめっ子達にも成敗して欲しかったし、ケイを幼少期からレイプした父親が火葬場にしれっと来ているのにも良子もしくはカリペロ店長の正義の鉄槌が降るかと思いきや…降りなかった。
また、13歳でスポーツとかやっているそぶりがないのにやたらと純平がムキムキっとした細マッチョだったりw、あと、純平のIQの異様な高さが光明であるにも関わらず、そんな天才としての事実も後々にはスルー気味だしw
年上の女性のケイに憧れて、自転車をかっ飛ばす純平の真っ直ぐな純情は思わずうなずいてしまいますが、純平の思春期の恥ずかしい妄想行為にはあんまり触らないでおくれw
そんな何かと観る側の「ひだ」をくすぐる「何か」尾野真千子さん含めて、色々と用意しているんですよね。
石井裕也監督の作品って、今までも「舟を編む」や「夜空はいつでも最高密度の青色だ」「町田くんの世界」といった個人的には良作があるんですが、前作の「生きちゃった」は個人的にはちょっと「やらかした」感があって、少しランクダウンw
でも、人物のひだを大いに触って、刺激して、優しくなぞる様な描写が気になるし、割と好きなんですよねw
でもなんと言ってもやっぱり尾野真千子さんに尽きるかなと。
茜色に焼かれると言う、何処かノスタルジックで優しい感じに聞こえても、ファンタジーにもミステリアスにも感じるタイトルも秀逸。
ラストの自転車の二人乗りもとても良いし、何処か突発的に決めた介護ホームでのリモート芝居も呆気に取られながらの純平のツッコミ的セリフがナイス。
「そこに愛はあるんか?」と言われたら、間違いなく愛はありますね♪
怒りや苦しみ、他人の無関心や無自覚で理不尽な悪意。様々な事に振り回されて、もがいて、あがいて、戦って、開き直る。
「明けない夜はない」なんて言いますが、夜になろうとする夕暮れの茜色に焼かれる様に染められるのは、他人がどう言おうが精一杯生きている証。
都内での上映館が少なくて、物凄く割を食った感じが勿体無い。
でも、とても見応えのあって、刺激もある「良い」作品かと思います。
興味があって、まだ未鑑賞の方は是非是非な作品。
お勧めです♪
尾野真千子が全て
コロナ禍べースでのリアリティ感ある話に、国民の殆どが腹に入らなかった例の上流階級高齢者の暴走事故要素を入れ、様々な屈辱に耐えた上で決して解消されない結末を迎える、実にアウトローな映画だった。
コロナにより社会的弱者に陥った主人公家族と、元々が弱者だった者達の絡み合い、さらに社会モラル的にアウツな面々も交じり合い、そこには希望の光は無く、現コロナ禍での我々の感情面も入り込み、実にリアルな感覚で観られた。風俗店の客層の実に腐り切ったとこ。コネ被害でのパート切りと嫌がらせ。誤魔化し笑いする軟弱な担任。金で体を要求する性欲にまみれた知り合い。最低最悪なヒモ男。近親レイプの父親。遊び感覚浮気希望で気持ち悪く笑う元同級生.......数えきれない程の屈辱と嫌悪に、主要人物達は苛立つ程までに我慢する。殆どの事が淡々と流れ解消されない。本当、アウトロー、アンダーグラウンドなストーリー。
唯一の救いは、息子が天才である事。ただそれだけ。この約束の無い未来感は、今のコロナ禍故の気持ちと同じ。主人公のがんばろうねの言葉が虚しい。これも今の我々の気持ちと同じ。監督は、ただ皆こうだよね、俺もそうなんだよの気持ちを映画にしただけにも感じる。そう捉えると、この落とし所の無い本作を良い映画だと言い放つのはどうかと感じるが。
私が高得点に上げたのは、尾野真千子の凄まじい程の体当たり演技。これが全て。なかなかの汚れシーンも、少しイッチャッテる感あるセリフと表情も、ちょっと程度の低い考え方も、貧乏揺すり連発も、彼女の今までの女優人生をぶっ壊す程。彼女は試写会の挨拶?で泣いたらしいが、そりゃそうだろ、と。
この映画、尾野真千子が全てだ。
同じような境遇の女として。
“ もっと怒っていい” 。良子に何度となく伝えるケイと、自らの過去の体験が重なり涙がこぼれ落ちた。性虐待。家出。病気。貧困。中絶。ピンサロ(性風俗業)。薬。
真面目に生きていても堕ちていく社会と自分に絶望する。
なぜ、こんなにも不幸の連続は止まらないのか。
コロナの前からずっと苦しかった。
コロナになっても、なお苦しい。
良子の狂気と純平のみずみずしさが、ずっと抱いてきた自らの毒をこれでもかと蘇らせた。
やるせない怒りも、この国の不条理な悲しみも、静かに「演じ」、激しく「演じ」た良子の姿が、終始とどまることなくスクリーンを乱してゆく。
作品、命懸けだったと思う。
この映画を生んでくださった全ての方々、そして尾野真千子さんに心より感謝します。
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