劇場公開日 2021年5月21日

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「フィクションの芝居(映画含む)こそがリアリティ・・・という自分のルール」茜色に焼かれる kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0フィクションの芝居(映画含む)こそがリアリティ・・・という自分のルール

2021年5月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 コロナ禍の真っ只中で着想を得たという監督・脚本の石井裕也。社会的弱者と言われるシングルマザーを中心に、理不尽な社会や自己中心的な人間たちと向かい合って「生きること」の意味を考えさせられる作品だ。

 コロナ蔓延という非常事態だからこそ浮き彫りになった醜い人間の姿、社会不適合なら死んでしまえという発想、上級国民を自覚してる者たちのいやらしさ、?性奴隷としか見てないかのような女性蔑視男たち。特に実際の事件である元官僚による自動車事故なんてのは痛烈だった。

 そうした世の中の歪みから湧いて出てきたような悪意たち。風俗店“カリペロ”での同僚であるケイ(片山友希)の悲惨な経歴や病気にも涙してしまった。実父による性暴力、インシュリンを打たねばならない糖尿病、そしてDVを感じさせる現恋人など・・・。生きる意味を店長(永瀬正敏)から問われても健気に生きようとしているのです。虫嫌いの彼女がゴキブリを異常に怖がるというのもストーリーの逆メタファーになってる気がする。

 社会問題はそれにとどまらず、バイトがないほどの不景気や良子の一人息子純平のいじめ問題、介護や離婚の問題にまで及んでいた。企業内の自己保身・・・確かに会社で生き残るのは難しい。そして人としての優しさが失われようとしてる現状を訴えてくる。

 なぜ賠償金を受け取らなかったのか、なぜ義父の介護費用まで、なぜ養育費を払い続けるのか。良子の行動に対してはもどかしささえ覚えてしまうが、彼女の信念が邪魔をする。死んだ夫(オダギリジョー)がプロテストソング(?)を歌っていたことから、そこに惚れた彼女にも尊厳、矜持、もしくは生きる意味があったのだと思う。社会のルール、自らが作ったルールを破らない限りは・・・そう考えると、権力者、上級国民たちの悪事がますます許せなくなってくる。

 交通事故のCG映像、支払った金額のテロップなど珍しい描写もあったり、良子の勝負服(一部、パンツもか?)は赤といった描写!それが夕暮れ時の茜色に染まる終盤の自転車の二人乗り。等々印象に残るシーンが多い。あかねさす日は照らせれど・・・と関係あるかは知りません。とにかく人間の暗黒面がクローズアップされてますが、それが顕著になっただけで、誰にでも悪い面はあるのでしょう。良子だって自転車盗んでますし。

 舞台挨拶映像にあった尾野真千子の涙を見たおかげで、今週一発目の作品に決めてしまいました。観たおかげで、生きる意味をしっかり考え、このコロナ禍に立ち向かっていく勇気を得られたかもしれません。

kossy
talismanさんのコメント
2021年7月9日

芝居こそリアルと思いました。

talisman
kossyさんのコメント
2021年5月27日

美玖さん、コメントありがとうございます。
このコロナ禍だからこそ価値のある映画なのかもしれません。
風俗というお店の内情もわかるけど、彼ら彼女らの想いも重く伝わってきます。
軽い気持ちじゃ見れない作品かもしれませんが、ずっと記憶に残りそうな感じです。

kossy
2021年5月27日

こんばんは😃🌃
まだ未見ですが、観たいと思っています。
kossyさんのレビューを読んで、尾野真千子さんの演技も 見応えありそうかなと思いました。レビューは、書けるか分かりませんが
どうぞよろしくお願いします✨

美紅
光陽さんのコメント
2021年5月26日

kossyさん、いつも僕の拙いレビューを読んでいただき誠にありがとうございます!
この映画、良作でしたね。
Kossyさんが僕のレビューを観ていただいた時には☆4.5だったと思うのですが、なんか時間がたっても余韻がすごく残っているので☆5に変更させていただきました。一応、ご報告まで。

光陽
NOBUさんのコメント
2021年5月25日

今晩は
 今作は、石井裕也監督の作品が好きな事もあり、先週末一番に観る予定でした。
 ですが、私がこの映画サイトにレビューを投稿している事を知らせている唯一の女性が先週木曜日に”週末は、TOHO系列とイオン系列が休館になります!”と教えてくれて、急遽イオン系列でかかっていた作品を鑑賞し、(で、その分日曜出勤)今作は私の居住区の大都会にあるミニシアターの殿堂でも上映していたのですが断念し、本日漸く鑑賞しました・・。ヤレヤレ。
 序盤は、少し苛苛しながら見ていたのですが、(愚かしき男多数登場のため)、序盤後半以降は一気にのめり込みました。
 社会派的要素を絡めながら、現況の厳しい時代を揺るぎなき愛を基に生きる女性の姿を通じて、石井監督の”未来は、必ず拓ける!”と言うメッセージとともに、尾野真千子さんって、改めて凄い女優さんだったのだ!と気付かせてくれた作品でしたね。

NOBU