劇場公開日 2021年5月21日

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「尾野真千子のド迫力の声に背筋がピーン」茜色に焼かれる bionさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0尾野真千子のド迫力の声に背筋がピーン

2021年5月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 尾野 真千子の啖呵にしびれる。社会的弱者だからっていって舐めてかかるやつは、男だろうが女だろうが、強烈な一発をお見舞いしてやれ。あまりのド迫力の声に見てる自分も背筋がピーンとなっちゃった。

 池袋の元高級官僚が起こした事故を思い起こさせる冒頭のシーンでは、社会的に優位に立つ人間の傲慢さに腹が立つ。弁護士を演じている嶋田久作が、憎々しさを掻き立てる演技で、強者は用心棒も雇うことができて、圧倒的に有利なことを知らしめてくれる。

 シングルマザーとなった田中良子を苦しめるのは、社会的強者だけではない。自分より下と見るや、軽くあしらったり、威張ったり、下僕扱いしたり、体を求めてくるようなクズ人間は、場所、階層を問わず現れる。夫のバンド仲間の男みたいな奴が、現実社会でもシングルマザーを苦しめているのかなって想像してしまう。

 上映時間の144分の長さを感じないくらい、引き込まれてしまったが、肝心の夕焼けが、明らかにCGとわかってしまったのが残念。その点以外は、すごく見ごたえがあった。尾野真千子は、文字通り「力の限り戦ってみました」の演技を見せてくれたし、永瀬正敏演じる風俗店の店長もハードボイルドな感じでいいところをかっさらった感じ。和田庵くんの芋虫のような自慰シーンには、笑ってしまった。その後の親子の会話がめちゃくちゃ面白かった。

bion