「たった一回しかできない荒業のみごとな成功例。」スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
たった一回しかできない荒業のみごとな成功例。
いまは再定義の時代だと思っていて、本作も、過去のスパイダーマン映画を再検証し、現代の視点から落とし前をつける試みに挑んでいる。しかも、「MCUのスパイダーマン」であるがゆえの関連作との整合性問題も解決した上でなのだから、大変な離れ業だと思う。
一方で、シリーズ/コンテンツとして犠牲にしたものもあるだう。「スパイダーマン」には、交流を持った善人が何らかの形でヴィランとなり、大切な人を失ったり傷つけたりしながら、とびきりの善良さで戦い抜くというお決まりのパターンがあった。しかし今回の再定義によって、「善良だったヴィランがスパイダーマンと戦い、不可抗力で結果的に死ぬ」という定番はもはや否定された。
本作ラストでピーターは本来のスパイダーマンの設定に近い環境に戻ったように見えるが、過去のパターンをなぞっても、それはもはや後退にしか見えないだろう。いや、ほんとに、なんと果敢なことをやってのけものかと驚嘆する。
さすがに詰め込み過ぎなきらいはあるが、ファンサービスとしてもすごかった。とりわけサム・ライミ三部作を観ていた世代には不評だったアメイジング期を、こういう形で肯定してみせたことに感動したし、アメイジング期を侮っていた自分を反省もした。それどころか、20年の「スパイダーマン」映画の歴史をすべて肯定してみせていて、もうこれ以上の「まとめ」編は今後もありえないのではないか。
ただ、過去のレガシーもすべて統合したことで、これからは更地にあらたな道を築かないといけない。すべてのピーターに幸せになって欲しいけど、これからが想像もつかないくらい大変なんじゃないかという気がしている。
ピーターパーカーの物語はここで終わり、
更地の新たな道は、ピーターじゃないスパイダーマンが築いて行くと思います。
あるキャラが「おまえはクイーンズ出身で貧困層の味方。俺と同じ○○だと思っていた」と言っていましたが、
リブート後はその○○である○○○○が引っ張ってくれると思います。