「二題噺の出来は?」鳩の撃退法 ぽったさんの映画レビュー(感想・評価)
二題噺の出来は?
小説が出たとき随分評判になったので読んでみたが1/4ほど読んだところで挫折。
実際のところどういう話なのか気になっていたので、今回の映画版は楽しみにしていた。
主演は藤原竜也なのでクセのある話になりそうだと期待。
しかし肝心の藤原はぽっちゃりしていたし、何より小説家らしくない。
映画の惹句である「天才作家が仕掛ける謎」というのも物語的に無理がある。天才でもないし、謎を仕掛けたのではなく逆に巻き込まれている。
事実をそのまま書いて出版するというのも意味がわからない。そのことを知った編集者の態度もよくわからない。
帯封してある3千万の方を調べもしないで偽札と思い込んでしまうのもありえない。古本屋の親父がたいして親しくもない元作家に大金を渡すというのも理解できない。工藤という男の組織がヤクザっぽいがそうでもなく、どういうものかよくわからない。床屋のオヤジはキーパーソンの一人だが何やら裏がありそうなのもご都合主義だ。
一番は、夜中のコーヒー店で本を読んでいる男に声をかけるという出だしがつまらない。(しみったれている)
原作小説は全体の構想もなく書き始めたのだろう。まずは『ジャンプ』以来お得意の失踪事件を仕立て上げ、次に偽札を思いつき、この二つをどうつなげるか、話を転がしていったのだろう。これは作中に作者が顔を出して明らかにしている。
こういうオートマチズムは話の作り方としては常套的だ。小説を最後まで読み通した人には、この辻褄合わせは手品みたいで面白かったかもしれない。
アメリカの人気ドラマ『24』も作りながら話を考えている。複数の人がアイデアを出し合ったから面白くなった。
今作は作者一人が考えたものだろう。そのため辻褄はつけられたが、それほど意想外でないこじんまりしたものになった。小説ならずっと我慢して読んできて最後に辻褄があってカタルシスが得られるだろうが、映画でそれをやられても退屈。途中の絵が中途半端なのだ。ヤクザがらみの話を見るなら『狐狼の血』を見た方がいい。
タイトルの『鳩の撃退法』は何の意味もなく面白そうな感じがするのでつけたのだろうが、偽札だから鳳凰ではなく鳩ということなのか。こじつけに無理がある。で、その撃退法はどの部分がそうなのか。タイトルを内容につなげるのはうまくいかなかったようだ。