劇場公開日 2022年1月14日

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「字幕が極端にマニアック過ぎる…(補足入れてます)。」アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5字幕が極端にマニアック過ぎる…(補足入れてます)。

2022年1月15日
PCから投稿

今年12本目(合計286本目/今月12本目)。

このタイトルだけではわかりづらいのですが、原作は Ich bin dein Mensch であることからもわかるとおりドイツ映画で、話されているのもドイツ語です。

趣旨としては他の方も書かれているように、アンドロイドとの恋愛は成立するか、といった哲学的な内容で(ドイツ映画っぽい…)、このタイトルだけで恋愛ものかな?と思っていくと肩透かしを食らいます。
こうした内容は他の方も書かれているとおり、リアル現在(2021~2022)でも急速に開発が進んでいるところであり、近い未来にできるとも、できないともいえない(実際、プロ棋士に勝てる将棋ソフトは100年はできないだろうと言われていたのがひっくり返されたのが最たる例)ところで、内容も哲学的な「AIとの恋愛は成立するのか」「AIはどのような自己学習プログラムが最適なのか」といったところに入ってしまっているので、ここの解釈は個々人、見られた方でかなり変わってくるのではないか…と思えます(その点では、かなり理系チックなストーリー)。

このような事情なので、主人公(主人公をどちらに取るかは考え方は分かれそう)の発言はきわめてAI的で、かつ「理論的には正しいがそういうようには言わない」というような発言が結構多いです。この映画はその度合いが「一般的に理解できうる度合い」を超えているのではないか…(英語かドイツ語か、あるいは他の言語からでないと推測が付かない)部分があり、もはや「文法理解大会」な状況になっている部分があります(後述)。この点では文系(特に、英語かドイツ語)の知識が要求されるという状況で、両方の知識がないとおいていかれるという特異な字幕です。

一方で、明治維新の後、日本が熱心に学んだ言語はドイツ語とフランス語などであり(これらは日本の民法の参考になった。日本の「今の」民法も、元はといえば、ドイツ民法とフランス民法を足して2で割ったような内容)、このため、明治時代から「慣用的に使われている表現」(例えば、ドイツ語学習で特有な「1格」「2格」といった表現)は、現在の平成~令和の時代でもそのままで、その理解があって、さらに英文法等の知識を要求してくるという鬼難易度で、「字幕のマニアックさに押される」「第二外国語がドイツ語というレベルでは逆に混乱する」という特異な内容を含んでいます。

ということで採点です。

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(減点0.3)「仮定法のような難しい表現はしないことにするよ」という字幕(序盤5分ごろ)の部分にほぼほぼ全部が尽きてしまうように思います。

 この「仮定法」が何を指すのかが非常にわかりづらく、英語とドイツ語の両方の知識をフル動員して、さらに学校英文法で習う範囲を超えた理解を要求するので、鬼難易度の字幕になってしまっており、ここはもう何らかの配慮は欲しかったです。

 (詳細は下記にて)
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 ▼ 「仮定法のような難しい表現」の「仮定法」が意味する内容

 ・ まず、一般的な学校英文法では、英語の「法」としては「直説法」(「せつ」は「ごんべん」の「説」なので注意。直"接"ではない)、「仮定法」という大きく分けて2つの法があります(詳細を書き始めると5000文字に収まらないので適宜省略)。

 ところがドイツ語を一般的に把握しているレベル、つまり、第二外国語でドイツ語を取ったよという方(換言すれば、外国語学科等でドイツ語専攻でない、ということ)だと、「あれ?ドイツ語に仮定法ってあったっけ??」という疑問が生じます。ドイツ語にあるのは「接続法」だからです。
しかし、接続法にも「接続法1式」「接続法2式」と呼ばれるものがあり、ここでいう「仮定法」というのは、結局のところ「接続法第2式」にあたるのです。

 一方で、英語で「仮定法」というと、「もし~~なら」という、Ifを用いた表現が考えられますが、これらがすべて仮定法になるとは限りません。

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 ・ もし明日雨が降ったら、試合は中止だ。 ← 雨が降るか降らないかは五分五分。このような条件(雨が降る)を「開放条件」といい、このときの英文法は一般的な理解では「直説法」です。 ※ ドイツ語でも直説法

 ・ もし私が大金持ちだったら、あなたを助けてあげられるのに。 ←「お金持ちではない」ということを示唆(発生確率が0%であることを意味する)。このような条件(お金持ちなら)を「却下条件」といい、このときに使われるのが「仮定法」です。 ※ ドイツ語では接続法

 ※ なお、明示的に「条件法」という法を設定する言語(フランス語等)もあります。
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 さらに、これらは「法」の概念であるところ、英語(他の言語も同じ)はさらに「時制」という概念があるため「仮定法過去」や「仮定法過去完了」といった「法と時制の組み合わせ」があり混乱度合いが高い上に、さらに「仮定法現在」という「意味内容的に仮定的内容が存在しないが、分類的に仮定法に入る」というものすらあります。

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 ※ これらのことが英語では意識されないのは、英語では「法や時制、人称による動詞の活用が大半失われている」(事実上、三単現の-sと、過去形の-edルールしか存在しない)という実際上の問題もあります。
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 つまり、この字幕でいう「仮定法」というのは、「(英語でいう)Ifの中でも、およそ起きえない条件(却下条件)を想定した場合を想定した表現」を指すところ、「普通の条件」(「雨が降ったら」など)を「含まない」という点を理解していないとハマリ現象が発生します(←開放条件で用いられるのは直説法であるため)。

 正直、字幕の裏事情が極端にマニアックな上に、さらに裏では文法の非常に細かい内容を問うてくるという極端な難易度になってしまっており、一般的な理解で「仮定法という表現は使わないようにするよ」という字幕は「英語と、英語以外の他の言語の文法を概ね把握している」レベルでないとハマリ現象が発生します。ドイツ語では仮定法という教え方をしないからです。

 ここまでくると、そもそも「仮定法って何?」というレベルでも結構理解が難しいのに(関係詞と並んで、英文法で理解が難しい内容の代表例)、さらに「ちゃんとした理解がないとハマリ現象が発生する」という「裏ではマニアック過ぎる」内容が入っており、「なんでそこまで配慮の足りない字幕にするかなぁ」というところにしかならないと思います。

yukispica
talismanさんのコメント
2022年1月15日

「仮定」でなく、接続法Ⅱの外交的用法(使い方と言い方では慇懃無礼にもなりうる)のことを指していると私は理解しました。字幕には限界があるのは確かですが、この場合の「仮定法」は映画全体を楽しむことを阻害するまでにはならないのでは、と思いました。例えばミリタリー系の知識がない私にとっては、拳銃を冷蔵庫に入れる意味(別の映画の話でごめんなさい)は全く理解できませんでした。でもそれは大した拳銃でないこと、主人公が拳銃のプロ(遣い手としても知識としても)であることを示唆してたらしいです。でも映画はとても楽しめました。長々と失礼しました。

talisman